モーツァルト:2台のピアノのためのソナタK.448(375a)
2台のピアノのためのフーガK.426
4手のためのソナタK.521
ピアノ:コンタルスキー兄弟(アロイス・コンタルスキー/アルフォンス・コンタルスキー)
日本コロムビア OW-7535-MC
録音:1963年4月、ハンブルグ市音楽堂小ホール
発売:1975年6月
第1曲目の「2台のピアノのためのソナタK.448 (375a) 」は、モーツァルトが25歳の時にウィーンで作曲し、1781年11月に完成した曲。この曲は、モーツァルトと女性の弟子であったヨーゼファ・バルバラ・アウエルンハンマーためにつくられた。初演は、1781年11月23日に彼女の家で開かれたコンサート。この曲の内容は、純粋な協奏曲様式を保っており、そしてその特徴は“ガラント”そのものである。フィナーレのロンド(モルト・アレグロ)は、K.331のトルコ行進曲にどこか似ている。また、中間楽章は、抒情的・歌謡的でもあり、ピアノ協奏曲のそれといささかも劣るところはない。。第2曲目の「2台のピアノのためのフーガK.426」は、作曲は1783年12月である。4声で書かれ、119小節の最初から最後まで厳格な様式を持ち、最後だけ緊張が解けるという、「2台のピアノのためのソナタK.448 (375a)」 とは正反対の性格を持つ。対照的な主題の応答はモーツァルトに固有のものであると同時に、モティーフはバッハを連想させ、モーツァルトの対位法的創作の頂点をなすものと言える。第3曲目の「4手のためのソナタK.521」は、モーツァルトが31歳の時にウィーンで作曲したもので、1787年5月29日に完成した。最初は2台のクラヴィーア(ピアノ)のために作曲したらしい。モーツァルトの親友ゴットフリートとピアノの弟子で当時美貌の才媛として知られたフランツィスカのジャカン兄妹に捧げられた。この曲は、有名な「小夜曲」や「ドン・ジョヴァンニ」とも近しい関係があり、 4手のための連弾ピアノ音楽の最高峰に位置づけられており、シューベルトやウェーバーにも影響を与えた。このLPレコードでピアノを弾いているコンタルスキー兄弟は、兄のアロイス(1931年―2017年)と弟のアルフォンス(1932年―2010年)による、ドイツ出身のピアノ・デュオ。古典から現代曲まで、幅広いレパートリーを持っていた。ケルンの国立音楽大学およびハンブルクで教育を受け、1955年9月には、ドイツ連邦共和国放送局連合主催の「第4回国際音楽コンクール」のピアノ二重奏部門で優勝を果たしている。また、1962年からは、ダルムシュタットの「現代音楽のための国際夏期講習」の講師を務めた。1961年には初来日も果たしている。このLPレコードでのコンタルスキー兄弟の演奏は、二人の息がぴたりと合い、技術的にみても完璧で、一部の隙もない。しかも、歌わせるところは存分に歌わせ、少しもぎすぎすしたところはない名演奏を聴かせる。モーツァルトの魅力を再発見できる演奏内容といえる。(LPC)