★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ピエール・モントゥー死の年の記念碑的録音 ベルリオーズ:幻想交響曲

2022-01-17 09:54:27 | 交響曲


ベルリオーズ:幻想交響曲

指揮:ピエール・モントゥー

管弦楽:ハンブルク北ドイツ放送交響楽団

録音:1964年2月6日~14日、ハンブルク

LP:日本コロムビア OC‐7258‐PK

 これは「幻想交響曲を指揮させたら世界一」といわれたピエール・モントゥー(1875年―1964年)が死の年、つまり89歳の時に録音した記念碑的録音のLPレコードであり、1965年度の「ACCディスク大賞」を受賞した。今聴いてみると、やはり89歳という年齢に相応しい深みのある境地に達した、他の追従を許さない指揮ぶりであることが、この録音からはっきりと聴き取れる。甘くロマンチックな世界に浸ることなく、表面的な一切の虚飾を取り去り、その骨格だけをくっきりと浮かび上がらせた、独特な雰囲気を持つ「幻想交響曲」が生まれることになった。この意味でこのLPレコードは、ベルリオーズ:幻想交響曲の全容を知るという意味合いより、ピエール・モントゥーがベルリオーズ:幻想交響曲をどう解釈したかを知ることが出来る録音といえよう。この録音は、ピエール・モントゥーが「幻想交響曲」の演奏の最終到着地に辿りついた演奏であり、この意味から、現在に至るまで、この録音を上回る「幻想」の録音は、他に見当たらないと言ってもいいほどの演奏内容となっている。夢の中にいるかのような甘い気分は取り去り、「幻想」独特の不気味な世界に、リスナーは思う存分突き落とされる。この結果、聴いていても手に汗握るといった感覚が全体を覆い尽くしているのだ。一遍の小説か、あるいは演劇の舞台を見ているようなドラマチックな展開がそこにはある。他の指揮者の追随を到底許さない演奏内容ではある。モントゥーは、「幻想交響曲」を、1930年のパリ交響楽団SPレコードから、このLPレコードである1964年の北ドイツ放送交響楽団とのステレオ盤まで、生涯で6回録音している。その中で代表的録音とされるのが、モントゥー75歳の時、1950年のサンフランシスコ交響楽団との録音盤である。ピエール・モントゥーは、フランス・パリ生まれで、パリ音楽院を卒業している。1929年、創立時のパリ交響楽団(現パリ管弦楽団)の常任指揮者などを歴任。その後、モントゥーは渡米し、1917年からメトロポリタン歌劇場の指揮台に立つ。さらに、カール・ムックの後任としてボストン交響楽団の常任指揮者に就任。そして1935年にサンフランシスコ交響楽団の常任指揮者に就任し、同楽団を世界の一流オーケストラに育て上げた。つまり、モントゥーは、その半生をアメリカ音楽界のために尽くしたと言って過言でない。最後は1961年にロンドン交響楽団の首席指揮者となり、死去するまでその地位にあった。その優美で繊細な指揮ぶりは、多くの熱烈なファンの支持を得ていた。(LPC)

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