★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ロベール・カザドシュのサン=サーンス:ピアノ協奏曲第4番/フォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラード、前奏曲より

2020-03-02 09:47:06 | 協奏曲(ピアノ)

サン=サーンス:ピアノ協奏曲第4番

フォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラード
     前奏曲より第1番/第3番/第5番

ピアノ:ロベール・カザドシュ

指揮:レナード・バーンスタイン

管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック

録音:1961年10月30日/12月14日、ニューヨーク

発売:1978年

LP:CBS/SONY 13AC 400

 このLPレコードは、フランスを代表する作曲家サン=サーンスとフォーレの曲を、フランスの名ピアニストであったロベール・カザドシュ(1899年―1972年)が演奏し、フランスの香りが馥郁とするところが魅力となっている。カサドシュは、パリ音楽院で学び、1913年に首席で卒業。以後、世界を舞台に演奏活動を行う。ギャビー夫人と息子ジャンとの共演により、モーツァルトの「2台ピアノのための協奏曲」や「3台ピアノのための協奏曲」のレコードも残されている。かつて、パリ音楽院やエコール・ノルマルからは、アルフレッド・コルトー、マルグリット・ロン、イブ・ナット、サンソン・フランソワ、ディヌ・リパッティそしてロベール・カザドシュと、“フランス・ピアノ楽派”とでも言える一連の優れたピアニストを輩出し続けた。ロベール・カザドシュは、この“フランス・ピアノ楽派”の最後を飾る大ピアニストであったのだ。その演奏は、フランス音楽の粋を徹底して極めたもので、デリケートであり、抒情味溢れたもので、しかも透明感が際立っていた。少しも無骨なところは無く、印象派の絵画を思わせるような、全体に光が散りばめられたような演奏内容は、一度聴くと忘れられない。ただ、演奏スタイルそのものは、古典的でオーソドックスなもので、この意味では、今聴くと一種の古さを感じるかもしれない。しかし、それを上回る優雅さや品のよさは、今聴いても万人を納得させる説得力を持っている。サン=サーンスは、全部で5曲のピアノ協奏曲を作曲したが、ピアノ協奏曲第4番は、サン=サーンスが作曲家として最も充実した時期に書かれた作品。2楽章構成で、さらに各楽章が2つの部分に分かれた構成を取っている。次のフォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラードは、オリジナルは1880年に出版されたピアノ曲で、翌年フォーレの手によって管弦楽を伴う形に編曲された。最後のフォーレ:前奏曲は、全部で9つある曲から第1番、第3番、第5番が録音されている。フォーレの前奏曲は、あまり知られた曲ではないが、コルトーは「苦も無く千変万化するピアノの多様性で人の心を奪う」と高く評価している。これら3曲を演奏するロベール・カザドシュは、その持ち味である正統的で端正な切り口を持った演奏を存分に聴かせる。あたかも抒情詩を朗読でもするかのように、一つ一つ味わうように演奏するすスタイルは、今ではほとんど聴くことができないものだけに、貴重な録音である。バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの伴奏も深みがあって聴き応え充分。(LPC)


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