ヴェルディ:歌劇「椿姫」ハイライト
前奏曲
乾杯の歌
想い出の日から
ああ、そはかの人か~花から花へ
燃える心を
天使のように清らかな娘が
お命じのとおり~死ぬほかに
プロヴァンスの海と陸
闘牛士の合唱「マドリードから来た闘牛士」
過ぎし日よさらば
パリを離れて
もし、清らかな娘さんが
指揮:トゥリオ・セラフィン
管弦楽:ローマ国立歌劇場管弦楽団
独唱:ヴィオレッタ=ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス(ソプラノ)
アルフレード=カルロ・デル・モンテ(テノール)
ジェルモン=マリオ・セレーニ(バリトン)
ガストーネ子爵=セルジオ・テデスコ(テノール)
合唱:ローマ国立歌劇場合唱団
LP:東芝EMI EAC‐30069
ヴェルディの初期のオペラの傑作「椿姫」(オペラ本来の題名は「ラ・トラヴィアータ(道を踏みはずした女)」であるという)の物語の原作は、フランスの小説家のアレクサンドル・デュマ。アレクサンドル・デュマと言っても、「モンテ・クリスト伯」などの名作で知られる、あの文豪アレクサンドル・デュマのことではなく、同名の息子のことだそうだ。1848年に発表されたこの小説「椿の花をつけた女」を読んだヴェルディは、オペラ化することを思い立ち、3ヶ月という短時間で完成させ、1853年3月に初演された。初演当時の評判は芳しくなかったようであるが、その後、徐々に評価が高まり、現在では最も人気のあるオペラの一つとして世界中で愛好されている。このLPレコードのライナーノートに大木正純氏は「厳しい目で見れば、ドラマとしての迫力や構成の密度の点で、また音楽的充実度の点でも、このオペラがヴェルディの他の名作を凌駕しているとは言いがたい。にもかかわらず、こうした抜群の人気を保っているは、この感傷的なドラマと、それにふさわしい甘美な音楽、華やかな舞台のたまものと言っていいだろう」と書いている。正にこの文章に尽きている。一旦、「椿姫」のオペラの世界に入り込めば、多くのリスナーは「もう理屈などはどうでもいい」という思いに浸るほど魅力に富んだオペラなのだ。このLPレコードでヴィオレッタを歌っているヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス(1923年―2005年)は、スペイン出身の名ソプラノ歌手。1945年、リセオ歌劇場でオペラ歌手としてデビューし、1947年の「ジュネーヴ国際音楽コンクール」で優勝し、以後世界的な脚光を浴びる。指揮のトゥリオ・セラフィン(1878年―1968年)は、イタリア出身の指揮者。1909年、トスカニーニの後任として、スカラ座の音楽監督に就任。1924年~1934年、米国メトロポリタン歌劇場の指揮者を務めた。1934年に帰国し、ローマ歌劇場の音楽監督に就任、同歌劇場の黄金時代を築く。この経歴から分かる通り、セラフィンは当時、イタリア・オペラの最高の指揮者として高く評価されていた。LPこのレコードでのヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルスは、実に気品のある歌声を聴かせており、ヴィオレッタの一生をものの見事に表現し尽くしている。また、トゥリオ・セラフィンの指揮は、このオペラの物語を劇的に盛り上げており、その見事な棒捌きにリスナーは、ただただイタリア・オペラの魅力の虜になるばかりだ。(LPC)