Bruichladdich, Isle of Islay, PA49 7UN
いよいよといいますか、ようやくといいますか、モルト・マニア垂
涎のアイラ島にやってきました。
アイラ島は「Islay」と書くので、日本ではよく「アイレイ島」と
呼ばれたりしていますが、「アイラ」と発音するのが正解。今回の
蒸溜所も「Bruichraddich」と書いて「ブルックラディ」と発音する
のが正解です。
さて、このブルックラディ。私の中では世界で2番目のウィスキー
で、以前にブログでも取り上げたことがあります。
10年ほど前から盛り上がっている現在のウィスキー・ブームの前
は、長らくスコッチウィスキーの冬の時代で、アイラ島の蒸溜所も
長期的に数が減少傾向にあったため、この蒸溜所も長らく閉鎖され
ていました。
良質のウィスキーを作れるのに、出口が冷えているので供給が成立
しない、というのは商業の世界にはままあることで、この蒸溜所も
そういった状態だったのでしょう。
そこに情熱と行動を注いだのがジム・マーキュワン氏。
氏は、かつてボウモア蒸溜所や日本の山崎蒸溜所で働いた経験を持
つ一級のスチルマンで、数年前に私財や賛同者の資本とともにこの
蒸溜所の買収に成功。
「Appaaloosa」という種類のオーガニック大麦をメインに、100%
のトレーサビリティを保障するウィスキー製造をされています。
こういったことが評価されてか、2001年、2003年、2006年、2007年
の蒸溜所・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。
ここの蒸溜所が評価されているのは、何も21世紀的なアプローチを
先んじて導入しているからという理由だけではありません。
6器あるウォッシュバックと呼ばれる発酵タンクは、一番古いもの
で1881年製のもの。閉鎖されていた間はカビだらけだったものを、
お湯とスチームの洗浄で蘇らせたそうです(ちなみに、ウォッシュ
バックは直径約5mで2階建ての建物くらいの高さがあります!)。
ツアーの最後はウェアハウス(貯蔵庫)。奥のほうで何人かのオジサ
ンが樽の入替作業をしていました。
ガイドのお嬢さんが一通りの説明を終えるころ、奥から人懐っこい
オジサンが我々に声を掛けてきて色々と説明を加えてくれます。
そのうちに「今回は特別ですよ」と言って、すぐ近くにある樽から
ウィスキーを取り出し、少しずつ皆に試飲させてくれました♪
ウィスキーの飲み方から味わい方、加水の仕方など、随分と細かく
「おいおい、そんなこと話してしまっていいのかい!」というよう
なことまで飛び出し、とても充実した蒸溜所訪問だなあと思ってい
たら、なんとこのオジサンがジム・マーキュワン氏その人だという
ことが判明!
つまり、筆頭株主兼代表取締役が自ら貯蔵庫の奥で樽の入替作業を
していたのです。
-キミは日本から来たのかい?
「はい。」
-キミはバーテンダーか?
「いいえ、違います。ただのウィスキーファンです。」
-なんてこった!遠いところを遥々ありがとう!
という具合でお話ができたので、よもや現代の蒸溜所でこんなことが
あるとは思ってもいなかったのと、この蒸溜所のファンの立場から
したら夢のような出来事のため、すっかり我を失って舞い上がって
しまいました。
別れ際にある秘密のお話をしたら、「キミはこの蒸溜所のスーパー
スターだ。サポートありがとう」とサインをして下さいました。
「また来ますよ。」
-また会おう!
と言ってくださって、穏やかなアイラ島の朝に虹がかかるような一
時を過ごしました。
ジム・マーキュワン氏の情熱に乾杯。
スコットランド・アイラ島にて。
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