『 今朝は富士山が雪化粧 』
河津 米子さん 撮影
先日、250年続いた葛飾の「川甚」が店を閉じたと報道された。
TVはその最後の客を見送り店主が暖簾を取り込むシーンを写していた。
何とも淋しく、ジーンと来るシーンだった。
私も会社でまだ数年目の頃、業界の寄り合いで初めて行ったのだが、
その後も何度かその機会があった。美味しい川魚、特に鯉こくとかあらいが
絶品だったのを覚えている。これで一杯やっている時には何やら一人前に
なったような気がしたものだ。
時代小説の世界でも、池波正太郎や藤沢周平などに愛され、よくその作品の中に
登場しておりよく知っていたので、その江戸時代の舞台にいるようで楽しかった
のを覚えている。
池波正太郎がよく通ったという、鬼平犯科帳の鬼平がよくこの店で隅田川の船の
上り下りを名物のウナギを楽しみながらみていた店(名前が出てこない)にも行った
ことがあるが、今では護岸のコンクリートがせり上がっていて川面は見えなかった
なんて事もあった。
駒形の「どぜう」や上野の豆腐料理の『笹の雪』等はどうなっているだろうか。
こうした数々の名店が消えつつあるという。
時代の変遷によって町の風景、風土までもが変わって行くが、このコロナはそれに
かなりの加速度を加えているようだ。
昔の郷愁も風情も情緒も、そして思い出までも消えてしまうのだろう。
会社の帰りによく行った、あの小さなバーやスナックそして小料理屋などは
どうしただろうと思う。あの素敵だったママさん、人の良い親切なマスターや
親父さんなどはどうしているだろうと案ずる。
しかしよく考えてみると、あの時代の人々がまだやっている筈は無いわけだ。
引継いだ若いオーナーや或いは夢を抱いて起業した人々を何人もドン底に陥れて
居るという。国の手厚い補償を願わずには居られない。
飲み屋のない駅の傍の路地裏通りなんて想像も付かない。