『 ルピナスの花が咲いていた 』
森川 由美子さん 撮影
元々私は心配症というやつなのか、外出とか旅行などは好きではなかった。
好きでないというより苦手というのかも知れない。
非日常的な時間や空間を過ごし、美しい景色や珍しい物を見る、新しい発見や体験など
素晴らしいことだとは思う。だからTVの旅番組なども好きである。
未知の景色、人々そして裏路地とか小径とかは特に興味津々だし、ロマンチックな想像と
夢が広がるものだ。
旅行だけが生き甲斐だという友人がいたが、分かるような気がするが同調は出来ない。
いざ自分が出掛けるとなると腰が引けてしまう。
素敵だなぁとは思うけれど、しかし自分が出掛けるとなるといつも躊躇、逡巡してしまう
のである。昔から慢性的に腹具合が弱いのと、乗り物酔いしやすい等があって、外出、旅行
に対しては、特に何日もという長いものには腰が引けてしまうのである。
それでも海外出張もこなしたし、国内は北から南まで各地に行った。プライベートの旅行も
新婚旅行をはじめそこそこは行った。私的旅行でもヨーロッパ各国や中国まで行ったのだから、
完全に旅行は駄目というのではなさそうだ。
しかし最近ではもう億劫で、余程のことでもなければブレーキがかかってしまう。
もう何処にも出掛けなくて良いと、その方が気が楽だと思っていた。
そんなある日、娘夫婦の雅ちゃん由美ちゃんから、車が新車になったのを機に、会津への墓参りに
連れていってあげると誘われた。それから私の迷い逡巡が始まった。
老化の所為か、持病の所為か、多くの薬の副作用の所為か、このところ特に体調すぐれず、だるい、
体がふらつく、気分がよくない、無気力、眠気、のぼせ感に悩まされている状態なのだ。
しかしもう最後だろうと思う両親の墓参りはしたいものだ、小学5年まで過ごした会津若松をもう一度
見てその空気を吸ってみたいという気持ちとのせめぎ合いが続いていた。
そして今にして思えば70代という若くして亡くなった両親に、私はここまで生きましたよという報告を
したいという気持ちが勝って、とうとう行く決心をするに至った。
24日の朝出発して、郡山からお墓のある千手院伏龍寺へ行って墓参。そこから東山温泉まで走って宿泊、
翌日は若松市内の数少ない親戚に(と言っても、もはや従兄妹もおらず、その子の時代で馴染みがないが)
顔を出して、鶴ヶ城とか武家屋敷、子供の頃遊んだ殿様の御薬園、白虎隊の墓、野口英世館等を回って、
疎開して最初に住んだ家の辺り、次に長く住んでいた家の周りの散策。そしてそのすぐ傍のホテルに泊まる。
きっと夢であの頃に戻れるに違いない。
翌日はゆっくり市内を回ってから帰路につく。といった行程である。
小学時代の「よう!元気!」と言って訪ねられるような親しかった友人方も、もういなくなってしまった。
どうか何事もなく無事に帰って、又ピンポンが出来ます様にと祈るばかりである。