『 庭の千両 』
先日、インコのみーちゃんの篭のトレーを掃除してやろうと、手にもって外に出ようとしていたら、
絨毯の縁にスリッパが引っ掛かってかなりの勢いで転倒した。手は空いてないし、とっさに手をつく
ことが出来ずに左の尻から落ちて、次には左肩をしたたかに打った。目から火花だった。
その瞬間、ああこれかよく聞く年寄りが家の中で転んで骨折してもう歩けなくなったというのはと
言うことが頭をかすめた。とうとうやってしまったかと目がくらんだ。
しばらく起き上がれなかったが、幸い頭は打たなかった様だと確認した。家人に手を引っ張って貰って
やっと起き上がった。どこかの骨にヒビ位は入ったなと覚悟した。
俺もとうとうやってしまったか、寝た切りになってしまうのかと恐れながら痛みをこらえていた。
そのうち医者に行かなくては思いながらも、その日は日曜日、その翌日は祭日で行けなかった。
いつもあんなに医者とは親しんでいるのに、実は病院嫌いで物ぐさでそして検査診察の結果を聞くのが
怖かったのだ。
こうして数日様子を見ていたのだが、歩いたり体を動かすと左の尻が痛いし、左肩から胸にかけてに
痛みが走り思わず声が出てしまう程だった。
肩か腰の骨にひびがはいったか、あるいは打ち身だけで済んだのか、心配しながら痛みに耐えているうちに、
4日5日と経つと痛みが薄らいで来たのを感じてこれは骨折ではないと確信した。
寝た切りや大ごとにならなくて良かったと心からホッとした。
しかし「我は老いたり」とつくづく思い知らされたものだ。