マスクを転売しているひとが、テレビに覆面で出ていた。
「罪悪感はないのですか?」という記者の質問に、「全くないですね。」と、あっさり答えていた。
不快に思ったものの、よく考えてみれば、あながち間違ってもいないのかも、と、思う。
人間が最初に行った物々交換。
お互いに相手が持っている物を欲しいと思うから交換するわけで、必要のないものなら交換はしない。
例えば、空腹で死にそうな人の目の前に、高価な宝石とパンを一つ差し出したら、どちらを取るだろう?有り金はたいてもパン一つを選ぶのではないだろうか?
もはや死に直面しているひとには宝石はただの石ころに過ぎないはずだ。
切実に欲しいと思っている人にとっては、マスクが一万円であっても惜しくないわけで、相手の足もとを見ながら価格を再設定して売る行為は、ある意味究極の経済活動なのかもしれないなー、などとぼんやりと考える。
とにかく、こうして生きるか死ぬかというほどの状況に陥ると、何が一番大切かが見えてくる。
今起きていることは、それをわからせてくれただけでも、意味があるのかもしれない。