去年の7月のこと。
朝起きて小屋を覗いたら、くりがいなくなっていた。
鎖が劣化していたことに気が付かなかったのだ。
くりは、動物愛護センターから引き取り、16年間一緒に暮らした家族だった。
少しおっちょこちょいだけれど、忍耐強く、気持ちの優しい犬だった。
くりがいなくなった翌日から熊本は大雨が続いた。
あちこちにポスターを貼らせてもらったり、警察や動物愛護センター、清掃センターにも問い合わせをして、考えつくかぎりのことをしたけれど、結局見つからなかった。
高齢で、目も鼻も足腰も弱っていたから、増水した川に落ちてしまったのではないか、おそらくもう死んでしまっているはずと諦めながらも、もしかしたら、明日はひょっこり帰ってくるかもしれないという考えを捨てきれない。
今日、届いたはがきで、少し和らいでいた心の穴が、またぽっかり開いてしまった。
悲しい。