【はじめに】
今回と次回は、「製造業の中小企業で最も必要と思われる人材をドウ育てるか」と言う問題について書きます。
私は若い頃から、沢山の中小企業と付き合いました。 ちょうど50歳になった時から、製造業の小企業・数社に出向し→→60歳から小企業に再就職して働きました。
中小企業には種々の問題点が有りますが、共通しているのは、❶コスト計算が苦手、❷工学計算(強度計算やシミュレーション・プログラムの作成等々)が出来ない、❸人間関係が難しい等の問題を抱えている事でした。❸の問題はさておいて、❶と❷の問題は国が支援したら、改善出来ると私は考えています。
ニッチ市場(需要の少ない分野)では、大手企業は撤退しているので、中小企業が活躍する様になっています。 日本には大小の商社が有るので、海外からも中小企業に引き合い/注文が入る時代になっています。
【余談 :ビーター】
現在でもスピーカーの一部に『コーン紙』が使用されています。コーン紙は種々の紙の原料を混ぜ合わせて製造されます。 コーン紙の原料を混ぜ合わせる機械を『ビーター』と呼びます。
昔、コーン紙の多くは日本で製造されていました。そんな時代には、ビーターを製造する会社が日本にも何社か有った様ですが、コーン紙の製造拠点が日本→→台湾→→韓国に移ったので、日本のビーター製造会社は(全て?)撤退してしまいました。一社が会社を閉める時、(次回に紹介する)N社に図面を渡しました。
私はN社で、韓国の某社から依頼されてビーターを2台製作した事が有ります。ビーターは原始的な機械ですが、チョットしたノウハウが必要です。ビーターの需要は世界で数年に一台くらいしか無いと思われるので、商売としては成り立ちません。
【コスト計算の出来る人材育成】
私の経験では、何かを製造する(作る)中小企業では、作った物を『いくらで売ったら、いくら儲かるか?』が計算出来る社員が極めて少ないのが現状です。
「美味いと評判で、繁盛していた新規ラーメン・チェーン店が倒産するのは何故か?」と(京セラの創業者)稲盛和夫氏に問うたら、「コストを計算しないで売るから、売れば売るほど赤字が膨らむからだ!」と言う様な回答をされたそうです。
パソコン(PC)が安価になり、中小企業でもPCは必需品になっています。サーバーも安価になっていますので、社内ネットワークを構築した中小企業も増加しています。
購入金額、支払い金額などを中小企業の一部では、PCを活用してデジタル化しています。そんなデータを活用して、その会社の状況を踏まえた原価計算プログラムを作成したら、経理担当者が見積積算が出来る様になると、私は考えています。
然し、中小企業で原価計算プログラムを作成出来る社員を育てるのは、至難の業(ほぼ不可能)だと思います。
中小企業診断士の様な、『原価計算士』認定制度を国は設置すべきだと考えます。法律に、(弁護士と同様に)「原価計算士は守秘義務を負う」と明記しておく事がポイントです。 『原価計算士』だったら、ラーメン・チェーン店の製造原価を簡単に算出出来ると思います。
中小企業にも色々有り、それぞれ歴史と事情を抱えています。『原価計算士』は中小企業で実際に働きながら、その会社に最適な原価計算プログラムを作成すべきです。完成したら→→別の会社に移って→→その会社専用の原価計算プログラムを作る・・・
【製造業のコスト計算の難しさ】
小売業の場合は、「幾らで売れば儲かるか?」比較的簡単に計算出来ますが、人手と機械を掛けて物を作って売る商売では、製造原価を計算するのは難しいです。物作りには興味が有っても、製造原価計算を疎かにする社長が現在でも結構沢山いると思います。
1セットの販売価格が数千万円以上になる機械装置の製造原価(工場出荷コスト)を見積もるのは、パソコンを使用しても、手間が掛かり/難しいです。
社長の『勘』で見積金額を決めている会社へのアドバイスです! 先ず、1セットの販売価格が数百万円以下の案件で、ザックっとした(見積精度10%を目標に)積算で見積金額を求めてみて下さい。受注後に、「見積に『抜け』が無かったか?」と言う問題意識を持って、進捗状況をチェックして下さい。
先ずは、購入品の型番と金額を集計する『エクセル・ブック』を作りましょう! 加工外注品の支払い金額もエクセルでデータ化しましょう! 『原価計算士』が誕生したら、自社用の原価計算プログラムを作って貰いましょう!
【私のコスト計算の経験】
私は1971年に大企業(K社)に入社後、10年間ほど顧客の要求仕様で一々設計する機械装置(非汎用機械装置)の設計を担当しました。1セットの価格が数千万円~3億円ほどしました。
K社では、既にIBM社製の大型コンピューターを導入し、電話回線を利用して本社/各営業所/各工場を結んだ社内ネットワーク・システムを構築していました。
見積/予算管理/工程管理などに使用する『生産管理プログラム』が有り、大型コンピューターに入っていました。 このプログラムへのアクセス権が設定されていました。 設計部の主担当者と見積部署の担当者は、このプログラムのほぼ全てのデータを見る事が出来ましたが、その他の社員は限定された範囲のデータしか見れなくなっていました。何年も前に終了した工事(ジョブ)のデータも取り出す事が出来ました。 (製造原価は極秘情報ですから、『生産管理プログラム』へのアクセス権設定は不可欠です!)
数千万円以上になる装置でも、10日以内に見積金額を出す必要が有りました。『生産管理プログラム』が無かったら、そんな短時間には出来ません。
設計が作成する図面は、①現地据付け図、②組立図、③部分組立図、④部品図で、それぞれの図番で(人件費を除いた)製作原価が把握出来る様になっていました。 他社から購入する部品/機器を全て図面化したので、その図番を『生産管理プログラム』にインプットすると購入価格が分かりました。
新規の見積を始める時→→よく似た過去の案件を探して→→『生産管理プログラム』で実績原価を調べ→→今回の相違点を加味して→→予想工場出荷価格を計算していたのです。
・・・ 生産管理プログラムの概要 ・・・
ステップ❶ :顧客から営業部に見積依頼が入る→→営業部から設計部に見積依頼依頼書を発行する。
この時、営業部は見積番号(Eナンバー)を大型コンピューターにインプットし→→予想工場出荷価格が欲しい日時、積算の精度(3%~10%)もインプットしました。
ステップ❷ :設計部で見積が出来る資料を作成し→→見積課で『予想工場出荷価格リスト』を算出し→→コンピューターにインプットし→→営業部で営業経費、利益などを加味して見積書を作成し→→顧客に提出しました。
見積課が作成する資料には、設計と現場に許される作業時間(人件費)、購入品毎の注文金額、加工外注費などが細かく記載されていました。
見積書提出時に、技術説明が要求されるケースが多々有り、設計担当者が同席しました。
ステップ❸ :顧客から営業部に注文が入る→→営業部で工事番号(Oナンバー)をインプットすると→→前述の見積課がインプットしていた『予想工場出荷価格リスト』が→→ジョブの『予算リスト』になりました。
ステップ❹ :設計部が図面や購入機器の仕様書を作成する→→資材課が仕入先や外注先を検討し→→金額が決定すると→→金額/発注先/納入予定日をインプットしました。
資材課は、一品毎に予算内だったか?をチェックし→→オーバーした場合は『異常』とインプットしました。
ステップ❺ :購入した機器や部品が入荷すると→→受け入れ検査をして、『入荷済み』とインプットし→→自動倉庫などに保管し、保管場所をインプットし→→資材課が金を支払い/日にちをインプットしました。
ステップ❻ :組立作業が開始されると、機器や部品を取りに行って→→倉庫の担当者が、受け取った社員の氏名と日時をインプットしました。
ステップ❼ :設計部の主担当者が、『生産管理プログラム』にインプットされた情報をチェックして→→毎月一度、進捗報告書を作成しました。
主担当者は、「①予算内に収める、②顧客が要求する納期を守る」責任を負わされていました。
(注記 :作業日報) 『作業日報』と言う用紙が有って、設計と現場社員が毎日、どの『Oナンバー』で何時間働いたか記入し、『生産管理プログラム』に担当の女性社員がインプットしていました。 然し、『Oナンバー』に各部署のトータル作業時間が決められていたので、超過した分はインプットしませんでした。 換言すると、『生産管理プログラム』のデータから必要な作業時間は把握出来なかったのです。
今回と次回は、「製造業の中小企業で最も必要と思われる人材をドウ育てるか」と言う問題について書きます。
私は若い頃から、沢山の中小企業と付き合いました。 ちょうど50歳になった時から、製造業の小企業・数社に出向し→→60歳から小企業に再就職して働きました。
中小企業には種々の問題点が有りますが、共通しているのは、❶コスト計算が苦手、❷工学計算(強度計算やシミュレーション・プログラムの作成等々)が出来ない、❸人間関係が難しい等の問題を抱えている事でした。❸の問題はさておいて、❶と❷の問題は国が支援したら、改善出来ると私は考えています。
ニッチ市場(需要の少ない分野)では、大手企業は撤退しているので、中小企業が活躍する様になっています。 日本には大小の商社が有るので、海外からも中小企業に引き合い/注文が入る時代になっています。
【余談 :ビーター】
現在でもスピーカーの一部に『コーン紙』が使用されています。コーン紙は種々の紙の原料を混ぜ合わせて製造されます。 コーン紙の原料を混ぜ合わせる機械を『ビーター』と呼びます。
昔、コーン紙の多くは日本で製造されていました。そんな時代には、ビーターを製造する会社が日本にも何社か有った様ですが、コーン紙の製造拠点が日本→→台湾→→韓国に移ったので、日本のビーター製造会社は(全て?)撤退してしまいました。一社が会社を閉める時、(次回に紹介する)N社に図面を渡しました。
私はN社で、韓国の某社から依頼されてビーターを2台製作した事が有ります。ビーターは原始的な機械ですが、チョットしたノウハウが必要です。ビーターの需要は世界で数年に一台くらいしか無いと思われるので、商売としては成り立ちません。
【コスト計算の出来る人材育成】
私の経験では、何かを製造する(作る)中小企業では、作った物を『いくらで売ったら、いくら儲かるか?』が計算出来る社員が極めて少ないのが現状です。
「美味いと評判で、繁盛していた新規ラーメン・チェーン店が倒産するのは何故か?」と(京セラの創業者)稲盛和夫氏に問うたら、「コストを計算しないで売るから、売れば売るほど赤字が膨らむからだ!」と言う様な回答をされたそうです。
パソコン(PC)が安価になり、中小企業でもPCは必需品になっています。サーバーも安価になっていますので、社内ネットワークを構築した中小企業も増加しています。
購入金額、支払い金額などを中小企業の一部では、PCを活用してデジタル化しています。そんなデータを活用して、その会社の状況を踏まえた原価計算プログラムを作成したら、経理担当者が見積積算が出来る様になると、私は考えています。
然し、中小企業で原価計算プログラムを作成出来る社員を育てるのは、至難の業(ほぼ不可能)だと思います。
中小企業診断士の様な、『原価計算士』認定制度を国は設置すべきだと考えます。法律に、(弁護士と同様に)「原価計算士は守秘義務を負う」と明記しておく事がポイントです。 『原価計算士』だったら、ラーメン・チェーン店の製造原価を簡単に算出出来ると思います。
中小企業にも色々有り、それぞれ歴史と事情を抱えています。『原価計算士』は中小企業で実際に働きながら、その会社に最適な原価計算プログラムを作成すべきです。完成したら→→別の会社に移って→→その会社専用の原価計算プログラムを作る・・・
【製造業のコスト計算の難しさ】
小売業の場合は、「幾らで売れば儲かるか?」比較的簡単に計算出来ますが、人手と機械を掛けて物を作って売る商売では、製造原価を計算するのは難しいです。物作りには興味が有っても、製造原価計算を疎かにする社長が現在でも結構沢山いると思います。
1セットの販売価格が数千万円以上になる機械装置の製造原価(工場出荷コスト)を見積もるのは、パソコンを使用しても、手間が掛かり/難しいです。
社長の『勘』で見積金額を決めている会社へのアドバイスです! 先ず、1セットの販売価格が数百万円以下の案件で、ザックっとした(見積精度10%を目標に)積算で見積金額を求めてみて下さい。受注後に、「見積に『抜け』が無かったか?」と言う問題意識を持って、進捗状況をチェックして下さい。
先ずは、購入品の型番と金額を集計する『エクセル・ブック』を作りましょう! 加工外注品の支払い金額もエクセルでデータ化しましょう! 『原価計算士』が誕生したら、自社用の原価計算プログラムを作って貰いましょう!
【私のコスト計算の経験】
私は1971年に大企業(K社)に入社後、10年間ほど顧客の要求仕様で一々設計する機械装置(非汎用機械装置)の設計を担当しました。1セットの価格が数千万円~3億円ほどしました。
K社では、既にIBM社製の大型コンピューターを導入し、電話回線を利用して本社/各営業所/各工場を結んだ社内ネットワーク・システムを構築していました。
見積/予算管理/工程管理などに使用する『生産管理プログラム』が有り、大型コンピューターに入っていました。 このプログラムへのアクセス権が設定されていました。 設計部の主担当者と見積部署の担当者は、このプログラムのほぼ全てのデータを見る事が出来ましたが、その他の社員は限定された範囲のデータしか見れなくなっていました。何年も前に終了した工事(ジョブ)のデータも取り出す事が出来ました。 (製造原価は極秘情報ですから、『生産管理プログラム』へのアクセス権設定は不可欠です!)
数千万円以上になる装置でも、10日以内に見積金額を出す必要が有りました。『生産管理プログラム』が無かったら、そんな短時間には出来ません。
設計が作成する図面は、①現地据付け図、②組立図、③部分組立図、④部品図で、それぞれの図番で(人件費を除いた)製作原価が把握出来る様になっていました。 他社から購入する部品/機器を全て図面化したので、その図番を『生産管理プログラム』にインプットすると購入価格が分かりました。
新規の見積を始める時→→よく似た過去の案件を探して→→『生産管理プログラム』で実績原価を調べ→→今回の相違点を加味して→→予想工場出荷価格を計算していたのです。
・・・ 生産管理プログラムの概要 ・・・
ステップ❶ :顧客から営業部に見積依頼が入る→→営業部から設計部に見積依頼依頼書を発行する。
この時、営業部は見積番号(Eナンバー)を大型コンピューターにインプットし→→予想工場出荷価格が欲しい日時、積算の精度(3%~10%)もインプットしました。
ステップ❷ :設計部で見積が出来る資料を作成し→→見積課で『予想工場出荷価格リスト』を算出し→→コンピューターにインプットし→→営業部で営業経費、利益などを加味して見積書を作成し→→顧客に提出しました。
見積課が作成する資料には、設計と現場に許される作業時間(人件費)、購入品毎の注文金額、加工外注費などが細かく記載されていました。
見積書提出時に、技術説明が要求されるケースが多々有り、設計担当者が同席しました。
ステップ❸ :顧客から営業部に注文が入る→→営業部で工事番号(Oナンバー)をインプットすると→→前述の見積課がインプットしていた『予想工場出荷価格リスト』が→→ジョブの『予算リスト』になりました。
ステップ❹ :設計部が図面や購入機器の仕様書を作成する→→資材課が仕入先や外注先を検討し→→金額が決定すると→→金額/発注先/納入予定日をインプットしました。
資材課は、一品毎に予算内だったか?をチェックし→→オーバーした場合は『異常』とインプットしました。
ステップ❺ :購入した機器や部品が入荷すると→→受け入れ検査をして、『入荷済み』とインプットし→→自動倉庫などに保管し、保管場所をインプットし→→資材課が金を支払い/日にちをインプットしました。
ステップ❻ :組立作業が開始されると、機器や部品を取りに行って→→倉庫の担当者が、受け取った社員の氏名と日時をインプットしました。
ステップ❼ :設計部の主担当者が、『生産管理プログラム』にインプットされた情報をチェックして→→毎月一度、進捗報告書を作成しました。
主担当者は、「①予算内に収める、②顧客が要求する納期を守る」責任を負わされていました。
(注記 :作業日報) 『作業日報』と言う用紙が有って、設計と現場社員が毎日、どの『Oナンバー』で何時間働いたか記入し、『生産管理プログラム』に担当の女性社員がインプットしていました。 然し、『Oナンバー』に各部署のトータル作業時間が決められていたので、超過した分はインプットしませんでした。 換言すると、『生産管理プログラム』のデータから必要な作業時間は把握出来なかったのです。