これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

日本の活性化➍-3 :生産性、GDP、給与

2022-07-30 08:52:08 | 会社の活性化
【はじめに】
 今回は、生産性に関連する具体的な例を幾つか書きます。正常な状態で企業が競争して生産性向上に努力する事は極めて重要ですが、国家間の力関係で努力が報われない場合が有り、絶大な力を持った狂人によって、多くの努力が水泡に帰したケースも有りました。

【タイヤ製造装置と特許戦争】
 製造/販売している製品に関連する特許権を取得する事は、(先週投稿した『日本の活性化➍-2 :生産性、GDP、給与』に書きました)『付加価値生産性』をアップする事です。 販売数量が増えれば『物的生産性』もアップした事になります。

 日本にはタイヤ製造装置を手掛ける企業が2社有ります。 KS社はアメリカの会社から技術導入して始めました。MH社は独自に研究開発を進めて来ました。KS社の設計に私の友人がいたのですが、MH社と凄まじい特許戦争をしていました。(彼から私は特許の重要性を教えてもらいました。)

 KS社の本社の隣に、大手タイヤメーカー(B社)の本社工場が有り、ブロック塀で隔てられていましたが、自由に出入りの出来る小さな木戸が有りました。KS社のタイヤ製造装置の設計部隊は本社で勤務していました。B社のタイヤ製造装置は全てKS社製でした。

 KS社の設計担当者は、B社の操業状態を何時でも観察出来たので、改善すべき点を把握する事が出来、特許のアイディアが次から次へと湧いて来たのです。アメリカの技術提携先を当てにする様な状況では無くなっていました。ロイヤリティーは払い続けていたのですが、1975年頃に知人がアメリカに出張した時、技術提携先を訪問したら社員が数名しかいなかったそうです。既納機のメンテナンスとKS社からのロイヤリティーで細々と存続していたのです。(暫くして、KS社は技術提携を解除しました。)

 KS社とMH社は価格競争もしていたので、タイヤ製造装置では余り儲からなかった様です。然し、日本のタイヤメーカーが海外に工場を建設する様になったので、KS社とMH社はこの分野では世界的な会社になりました。

【アメリカの重電・重機械メーカー】
 「一つの分野で3社以上が競合するのが好ましい」と私は考えています。1社が50%以上のシェアを握ったら→→価格決定権を得る事が出来て→→会社の経営は楽になりそうです。 然し、会社が天国にいる様な状態になったら、製品の改良/コストダウン/コンプライアンス(法令遵守)/人材育成・・・何の努力もしなくなってしまいます。 会社は人間の集まりですから、生産性向上が要求される厳しい環境で生きていれば→→社員は逞しくなり→→会社は優良企業の一員になれます。

 戦後、アメリカには大型の電気機械と大型の機械を手掛ける会社が3社有りました。《ジェネラル・エレクトリック(GE社)、ウエスティングハウス、アリスチャーマー》

 業界一位のGE社と二位のウエスティングハウスが結託して(現在では違法な手段で)アリスチャーマーを潰しました。ウエスティングハウスは、「アリスチャーマーのシェアーを取り込もう」と目論んでいましたが、シェアーの多くはGE社が取ってしまったのです。存続の危機に陥ったウエスティングハウスは、原子力発電の研究開発に社運を掛けました。 その成功を見て、GE社も原子力発電を手掛ける様になりました。

 その後、ウエスティングハウスはジリ貧になって、1998年に原子力部門を売却し、1999年には全て売却してしまいました。 結局、巨大なGE社だけが生き残りましたが、近年・GE社の財務状況は芳しく無い様です。

 アメリカ人は(日本人とは真逆に)、日進月歩で技術開発が進む分野でベンチャー企業を興したり/発展させるのは得意ですが、技術が成熟した分野を複数抱える巨大企業を経営をするのは不得意の様に思います。 将来、GE社は軍需分野以外の部署を売却して、兵器廠になると予想しています。

(注記) アメリカは日本に次いで長寿企業の多いい国です。有名な長寿巨大企業に、USスチール(創業=1901年)、ザ コカ・コーラ カンパニー(1892年)、JPモルガン・チェース(1799年)、シティグループ(1812年)、ステート・ストリート(1792年)、デュポン(1802年)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)(1837年)、ティファニー(1837年)、ファイザー(1849年)、アメリカン・エキスプレス(1850年)、エクソン・モービル(1863年)、シェブロン(1879年)・・・

【半導体の問題】
 1971年に入社して直ぐに、面識が無い、直属の上司でも無い重役から、「半導体の情報を集めて、定期的に報告書を提出しなさい」と指示されました。文献や資料を集めるだけで無く、テキサスインスツルメンツの商談会などにも参加しました。当時、半導体の価格が信じられないスピードで低下していました。

 1970年代、半導体産業はアメリカのお家芸の様になっていましたが、NEC、東芝、日立製作所が手掛ける様になって、急激に発展しました。1985年に半導体業界は不況になり、アメリカのメーカーの一部が撤退する状況になりました。1986年時点では、日本の上記3社は世界シェアの50%以上を握っていました。

 ロナルド・レーガン大統領が中曾根康弘総理大臣に強力な圧力を加えて、日本の半導体産業を潰しにかかりました。 そして、1986年9月に極めて不合理で不平等な『日米半導体協定書』を押し付けました。→→日本の半導体産業は殆ど消えてしまったのです。 この時、私は次の様な”悟り”を開きました。

教訓❶ :出る杭は打たれる!
教訓❷ :アメリカは独善的な国で、自国に都合の良い国際ルールを押し付ける。
教訓❸ :個人や企業が一生懸命頑張っても、国と国の力関係で努力が水泡に帰す事が有る。

 近年、半導体産業を復興させるべきだと考えた自民党政権は、台湾のTSMC社に懇願して、日本(熊本県)に工場を建設して欲しいと要請しました。ソニーグループ、デンソー、国が8,000億円用意して、工場が建設される様です。

(余談 :半導体の周辺技術と産業) 日米半導体協定書によって、日本で半導体を製造する事は難しくなりましたが、製造装置、検査機器、材料などの製造企業は生き残りました。 私が注目してきたのは『(株)SCREENホールディングス ;旧社名=大日本スクリーン製造』です。2021年時点の連結従業員≒5,900名、連結売上≒3,200億円もの企業に成長しています。

【鉄鋼産業の衰退原因】
 国賊と呼べる様な稲山嘉寛( よしひろ)氏の独断的な行動によって、多くの先人たちの苦労が水泡に帰し→→鉄鋼産業は停滞してしまいました。 鉄鋼産業に関連した企業の従業員・数十万人の給与は、その後殆どアップしませんでした。(私も犠牲者の一人です。)

 戦後、八幡製鐵と富士製鐵が中心になって、高炉の大型化に取り組みました。そして、重機械メーカーの協力で世界最高の一貫製鉄技術を確立しました。 60年代の後半には世界に誇れる超大規模な生産性の高い製鉄所が稼働する様になっていました。

 韓国政府(朴正煕大統領)は本格的な製鉄所の建設を目論みましたが、世界銀行等から資金が調達出来なかったので、65年の日韓基本条約で日本から手に入れた金の一部を流用し、日本輸出入銀行からの商業借款で浦項総合製鉄(現在のポスコ)を建設しました。

 製鉄所は機械が揃ってもノウハウが無ければ操業出来ません。ボンボンとして育った稲山氏は各種技術資料、(製作図を含んだ)設計図の重要性/価値を理解していなかったと思われます。新日本製鐵社内だけでなく協力していた会社の反対を押し切って、それらの図書を、無償で浦項総合製鉄に渡してしまいました。それらの図書は、(現在だったら)『1兆円以上』の価値が有ると思われます。(一貫製鉄所を一式建設する以上の価値が有ったと思います。)

 稲山氏は更に、中国の上海宝山鋼鉄総廠向けでも同様の愚行をしてしまいました。その後、中国は日本から入手した図書で沢山製鉄所を建設し、鉄鋼製品を安価に輸出する様になって→→日本の鉄鋼産業は停滞する事になってしまったのです。

★ 65年 :日韓基本条約
★ 68年 :韓国・浦項総合製鉄(株)設立・・・現在・ポスコ
★ 70年 :新日本製鐵発足・・・初代社長=稲山嘉寛→→会長(73年~81年)
★ 71年 :私は大学を卒業して→→鉄鋼会社に入社して→→機械部門に配属されました。
★ 73年 :浦項総合製鉄竣工
★ 77年 :中国・宝鋼集団の大型一貫製鉄所建設工事開始(上海宝山鋼鉄総廠)

(余談 :圧延設備の組立図) 74年頃に私の席の近くで、大ベテランの製図工が上海宝山鋼鉄総廠向け圧延設備の組立図を描いていました。圧延設備の長さは数百メートルにもなるので、A0のロール紙(幅914mm✕長さ30m)を使用していました。時々見学させてもらいましたが、完成まで1年程掛かった様に記憶しています。描いている時は一切話し掛けてはいけませんでした。一般に顧客に渡すのは組立図ですが、稲葉氏は部品の製作図も無償で渡してしまったのです。(渡した図書の量は、大型コンテナーで何台分も有ったと思います。)

【談合と生産性】
 100億円が適正価格のビルを談合して110億円で受注したとします。 GDPがアップします→→受注した企業の生産性もアップした事になります→→企業の利益もアップして→→社員の給与も上げて貰えるかも知れません。 昔は、土木・建築関係の会社が国や地方公共団体の仕事を受注する時には談合していました。(「現在もやっているのか?」は知りません。)

 談合を拒否する会社を皆が協力して→→叩き潰して→→政治家と結託して→→外国企業を入札に参加させない様に出来れば→→永遠に談合する事が可能です。

 談合は、生産性アップと同じ効果が得られますが、談合で成り立つ業界では、切磋琢磨して技術を磨いたり、コストダウン方法を考え出したりする必要が有りません。従って、国際競争力を高める事が難しく、世界的な企業に成長するチャンスを自ら放棄している様に思います。

(余談 :談合の対象) 談合の対象は国や地方公共団体だけでは有りません。 昔からの慣例で大手民間企業の一部も対象になっているケースが有ります。 私が勤務していた会社は、燃料、電気機器、電気工事、土木建築工事・・・等はそれぞれの業界が談合するので発注先を自由に選べませんでした。

(余談 :上水の談合) ダム建設を伴う上水工事は、談合がやむを得ないケースです。 ダムは計画開始から完成までに10年以上掛かるのが一般的で、20年掛かるケースも有った様です。 その間、毎年の様に計画が変更され、図面の修正が必要になります。私は昔、某ダムの非常用発電装置の担当をしていましたが、毎年!毎年!打合せをして、配置図を大幅に修正させられました。見積の段階で馬鹿に出来ない費用が発生するするので、メーカー側は談合して、1社が対応する事にするのです。

(余談 :談合の刑罰) 業者間(企業間)の談合は、刑法第96条(公契約関係競売等妨害)で「3年以下の懲役か250万円以下の罰金、またはその両方」が課せられます。 官製談合は、『入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(官製談合防止法)』第8条で、関わった職員に対して「5年以下の懲役か、250万円以下の罰金」が課せられます。

 私がまだ若かった頃の話です。「某業界の大手3社に談合担当部長がいて、定期的に集まって全国の案件を、3社のどの会社が受注するか決めている」と何故か?教えてくれる方がいました。次回集まる日、3社の談合担当部長の氏名と電話番号も教えてくれました。飲み友達3人で手分けして、正否を確認する事にしました。2人がドラマに登場する探偵の様に担当部長を尾行し、私は3人に電話を掛ける役をやりました。尾行された二人の部長は、同じ時間に同じホテルに入りました。電話すると、3人とも「ただいま外出中です!」との事でした。

 日本は有期懲役や禁錮の場合は、加重主義を採用しています。同様の犯罪を沢山犯しても大した刑は課せられません。談合は殆どの場合『確信犯』ですから、私は「アメリカの様に『加算方式』を採用すべき!」だと考えています。

 前述の談合担当部長達は、年間数百件以上の談合に関わっていたと思われるので、『加算方式』にしたら刑期は数百年になります。 談合担当部長に任命されそうになったら→→辞表を提出して→→サッサト退職する様になると予想します。 談合罪に『加算方式』を採用したら、談合は劇的に無くなるでしょう!

日本の活性化➍-2 :生産性、GDP、給与

2022-07-23 12:50:39 | 会社の活性化
【はじめに】
 今回と次回は『生産性』に着目して、日本の問題点を考えてみます。

 『生産性』と言う言葉は良く聞くのですが、「生産性向上対策を立案しろ」と言われると、「何を、どうしたら良いのか?」分からない方が沢山おられる様に思います。今回は、原点に帰って「生産性の定義」についても言及しました。 面白く無いですが、我慢して読んで下さい。

【企業の業績と給与】
 A社に勤めている従業員の給与は、A社の業績が向上しないとアップしません。 特殊な例ですが、求人難の時、某中小企業で大卒の新入社員の初任給をアップしたので、心太(ところてん)式に給与を見直した事が有りました。

 会社の業績が良くなっても、社員の給与が上がるとは限りません。 日本の優良大企業では、利益の大半を内部留保に回して、給与も配当もソコソコしかアップしなかった様に思います。「これが、日本の経済を30年間も停滞させた原因の一つだ!」と私は考えています。

 日本人は老後が心配で→→セッセと箪笥貯金をして→→最近は相続税を減らす努力/工夫をしている方が増えて来ています。 日本の大企業が、儲けた金を設備投資等に回さないで、内部留保を溜め込むのは『箪笥貯金』に似ている様に思われませんか?!

会社の業績が向上しても給与がアップしなかった!) 私が中小企業(N社)に出向していた時の話です。N社の売り上げはジリ貧に陥っていたのですが、画期的な製品を開発したので儲かる様になりました。古手の社員が、「税金で払う分を減らして、ボーナスをアップして欲しい」と懇願しましたが、何故か?社長は首を縦には振りませんでした。

【生産性とは?】
 『生産性』と言う言葉を良く聞きますが、以下に示すように種々の定義された『生産性』が有ります。 一般には、➊の概念の生産性が使用されますが、数値として算出出来ないので、何の事か良く分かりません。『産出』を『生産量』に置き換えた❷~❺の物的生産性と、『産出』を『付加価値額』に置き換えた❻~❾の付加価値生産性で議論されます。

  生産性の定義 :生産性=産出(output)/投入(input)・・・一般的な定義

・・・ 物的生産性 ・・・
❷ 1人当たりの生産性=生産量/労働者数
❸ 1時間当たりの労働生産性=生産量/(労働者数✕労働時間)
❹ 資本生産性=生産量/資本ストック量
❺ 全要素生産性=生産量/合成投入量(労働✙資本✙原材料等)

・・・ 付加価値生産性 ・・・
❻ 1人当たりの生産性=付加価値額/労働者数
❼ 1時間当たりの労働生産性=付加価値額/(労働者数✕労働時間)
❽ 資本生産性=付加価値額/資本ストック量
❾ 全要素生産性=付加価値額/合成投入量(労働✙資本✙原材料等)

(余談 :日本生産性本部) 公益財団法人日本生産性本部と言う分けの分からない団体が有ります。 2014年に79歳で会長に就任して、今年87歳になるヨボヨボの老人がまだ会長です。何処から金が出ているのか?予算は100億円、職員数は270人もいます。

【全要素生産性】
 国家や企業の活性化を議論する場合、前述の❺か❾の『全要素生産性』を使用すべきだと思います。生産量が多くなっても、価格が下がったのでは企業の収益は上がりません。国家としては、GDPも大きくなった事にはなりません。

 従って、私は❾の付加価値額を考慮する全要素生産性で議論/分析すべきだと考えています。

【全要素利潤(生産性)】
 大企業だったら大学で経済学を学んだ社員がいるので、『付加価値額』を計算出来るかも知れません。中小企業では『付加価値額』と言ってもピントきません。私は、『利潤(利益)』を用いる『全要素利潤(生産性)』を提唱します。

❿ 全要素利潤(生産性)=利潤(利益)/合成投入量(労働✙資本✙原材料等)

 種々の製品を製造している大企業では、其々の製品毎に全要素利潤を算出して、アップしているか?ダウンしているか?定期的にチェックすべきです。 そして、何故?ダウンしたのか分析すべきです。

【グローバル化と生産性】
 現在は、国も企業も他国と密接な関係の中に存在しています。生き残るためには、他社よりも生産性を上げる必要が有ります。然し、国内企業だけを相手にして「生産性向上目標値」を検討しては駄目な時代になっています。

 まだまだ賃金の安い国が沢山ありますから、労働集約形産業分野は海外に工場を移す必要が有ります。現在、社員が30名程の小さな企業が、外国に複数の工場を持っているケースさえ有ります。

 昔、大型のスーパーマーケットが全国に沢山出来て、商店街が寂れる問題が発生しました。これは、「安く多量に仕入れて、多量に販売する」、「一カ所で何でも揃えられる」と言う小売業の生産性向上が起こったのだと考えられます。

 10年程前に、私に最初の孫が出来たのですが、歩いて行ける所に玩具を扱う『トイザらス』が有りました。大きなアンパンマンの縫いぐるみを買ってやりました。 直ぐに店じまいしたので、玩具はアマゾンで買っています。

 アマゾンは何でも安いですね! 電気量販店に知り合いが務めているので、「買って欲しい」と懇願されます。「アマゾンと同等の価格にしてくれたら買う」と言うのですが、未だに実現していません。

(余談 :”トイザらス”の思い出) 孫に「一つだけプレゼントする」と言って”トイザらス”に行きました。孫は目を輝かせて店内を見て回りました。お気に入りが見付かった時の嬉しそうな顔は素晴らしかったです。子供は金額を見て買う分けでは無いので、安い物を選んだら、つい「もう一つ買って良い」と言ってしまいました。ジジ馬鹿!ババ馬鹿ですね! 玩具はアマゾンで買うよりも、”トイザらス”の方が子供の為には良い様に思います。

【経済安全保障と生産性】
 新型コロナが蔓延し始めて→→マスクの大半を中国から輸入している事実をマスコミが報道し→→国民の多くが多量にマスクを買い込んで→→店からマスクが消えてしまい→→安倍のマスクが配布されました。

 2021年から穀物と燃料(原油)価格が高騰し、今年・ウクライナ戦争が勃発して更に高騰しています。 必需品の輸入を今までは民間企業に任せて来ましたが、「安定して輸入出来る様にする為には政府の介入が不可欠だ!」と言う事を日本国民は学びました。

 ウクライナ戦争によるロシアへの経済制裁から、輸出先も多様化する必要が有ると分かりました。最近の中国経済の動向を見ていると、中国経済の成長が鈍化する恐れが出ています。この点からも輸出先の多様化を官民協力して進める必要が有ります。

 電力不足が深刻な問題になっていますが、主な原因は2016年から進めて来た『電力自由化』によって沢山の火力発電所が廃棄された事です。 それまでは、電気事業法で電力会社に「収益は保障するが、供給責任を全うしなさい」と規定していました。『電力自由化』とは、新規電力会社の設立を認め、価格競争させて電気料金を下げるのが狙いでした。「供給責任を負う義務は無くすが、収益は自分で工夫して確保しなさい」と大方針転換しました。 その為に、電力会社は火力発電所を破棄して→→稼働率をアップして→→収益アップを狙いました。

 与野党の政治家達は勉強不足ですから、『電力自由化』と『電力不足』が同義語だと認識出来なかったと想像します。官僚の一部は認識していた様ですが、「こんなに早く、火力発電所の廃棄が進む」とは予想していなかったと思います。 岸田首相は今になって、「電力の供給義務が(電力会社では無く)政府に有る」事に気付いて、慌てふためいているのです。

【取引先企業の値下げ要求と生産性】
 日本の大企業の多くは、部品を外部(協力会社)から調達しています。大企業は毎年の様に協力会社に値下げを要求します。協力会社が努力して→→コストダウンをして→→3%値下げしたとします。販売数量が同じだと、協力会社の売り上げは3%少なくなってしまいます。

 1956年~73年頃の高度経済成長期で有れば、大企業の発注数量が毎年増加していたので、協力会社は毎年!毎年!値下げを要求されても、成長出来たと思います。経済が停滞している現状では→→労働者の60%程が勤務する中小企業の発展を阻害して、給与アップを抑えると→→国民の購買力が増加せず→→日本の経済を低迷させてしまいます。 ブーメラン効果で大企業の発展も阻害されるのです!

 「大企業が協力会社を虐めて、自分だけ儲かれば良い」と言う体質を変えないと、日本は発展しません。 「下請け会社」は差別用語に分類して、禁止にすべきです。マスコミ関係者は「協力会社」と言う用語を使用しましょう!

【一歩先んじた開発と生産性向上が必要です!】
 競合他社に勝つ為には『一歩先んじた開発と生産性向上が必要です!』 価格競争の”イタチごっこ”から抜け出した例を書きます。

 2軸式スクリュー圧縮機と呼ばれる機械が有ります。 これは、戦後、スウェーデンのSRM社が、技術提携を希望する企業に『スクリュー圧縮機の構造/寸法、主要部の必要な精度、運転実測データ(性能)等』を開示して、ロイヤリティーを得る商売を始めました。多くの国の多くの企業がSRM社と技術提携しました。

 日本でも数社が技術提携した様です。然し、KS社とMK社が熾烈な開発/価格競争をして→→海外にも展開して→→頑張っています。 (日立産機も汎用品を手掛けています。 IHIが自動車用のスーパーチャージャーとして製造している様です。)

 SRM社が開示するのは、あるサイズの2軸式スクリュー圧縮機に限定したデータです。ローター間の隙間と、ローターとケーシングの隙間を小さくする必要が有るのですが、SRM社は主要部の最終加工を職人芸でやっている様です。 SRM社は、「大型化/小型化と部品の加工方法は、技術提携した会社で考えなさい」と言うスタンスです。

 私が2軸式スクリュー圧縮機に興味を持った1975年頃、その都度設計の大型機でKS社は結構な収益を上げていました。小型の汎用機はMK社が強く、中型機はほぼ互角の状況でした。KS社が小型の汎用機を1台売ると、3万円ほど赤字になっている様でした。(然し、トータルとしてはKS社は儲かっていました。)

 小型汎用機の設計と営業に私の知人がいたので、「何故?赤字体質から抜け出せないのか?」数年間観察しました。 私が出した結論は、➊KS社は大企業で社員の給与が高い。❷KS社の現場社員は全て男性で給与が高い。➌KS社はMK社の販売価格を目標に、常にコストダウンに尽力していました→→目標値を達成すると→MK社が一歩先のコストダウンに成功していました。

 KS社とMK社はコストダウンと性能改善に、同じ様に努力していたと思いますが、一歩先を進んだ努力は報われますが、後塵者の努力は殆ど意味が無いのです。

 KS社は、赤字続きの小型汎用機の為に、10km程離れた所に専用の工場を建てました。暫くして、工場見学に行くと、新しく女性パート社員を数名雇って、壁向きに並べた作業台で部分組み立てをしていました。壁には、図面では無くて組み立て手順を示す写真を貼っていました。従来からの男性社員は全体を組み立てていました。 工場には作業効率を改善する種々の工夫が施されていました。

 工場新設後も赤字が続いていた様でしたが、既納機の数が増えて→→メンテナンスの仕事が増え→→予備品の注文も増えて→→黒字体質が定着する様になった様でした。

日本の活性化➍-1 :生産性、GDP、給与

2022-07-16 09:40:59 | 給与
【はじめに】
 今月行われた参議院選挙で野党の多くは、「国債を発行して経済対策をするべきだ!」と主張し、与党(自民党と公明党)はダンマリを決め込みました。 与党が大勝利したので、国民は岸田首相に「経済対策は二の次で良い」と言うメッセイジを伝えた様に思います。

 「日本は国債をマダマダ発行しても大丈夫だ!」と言う経済コメンテーターが沢山います。一方、財務省は国債の発行を抑えようと躍起になっています。 私は、「日本は現在、悪いインフレに突入しているので、国債を発行して経済を立て直すべき時だ!」と考えています。

 兎にも角にも、現役世代の給与がインフレ率以上にアップする様に、与野党の政治家、政府と日銀が一体になって工夫/努力する必要が有ります。

【良き時代の給与】
 1956年~73年は、若い人達には信じてもらえ無いような高度経済成長期でした。経済成長率は毎年10%以上も有ったのです。

 私は、今から50年程前(1971年)に大学を卒業しました。初任給は税込みで5万ほどでした。毎年!毎年!給料は10%以上もアップして1985年頃には税込みの月給は10倍以上になっていました。 当時、土曜日も出勤日で、超!超!多忙で→→毎日クタクタになって→→日曜日は寝て暮らす事が多く→→月に一度くらいしか妻や子供を連れて買い物に出掛けませんでした。 狭い社宅住まいだったので、嵩張る物は買えませんでした。努力しないでお金が溜まったのです。

 1985年頃から人減らしが始まって、月給は少しずつ少なくなって行きました。1996年~2006年の10年間・出向したのですが、年収はピーク時の70%程になりました。この10年間はドンナニ活躍しても年収は変わりませんでした。 2006年に定年になり、小規模の会社に再就職しました。年収は20%程アップしました。

 長男は今年45歳になりますが、多分・私が出向していた頃の年収に達していないと思われます。 日本は実質の平均給与が、毎年2%~3%アップする様にならないと、若者達が未来を語れなくなると思います。

(余談 :出張での小遣い稼ぎ) 私は入社以来、週に一、二回は遠方に出張していましたが、会社規定の出張手当(日当)、宿泊費、食事代を支給してもらいました。勿論、旅費も出ました。飛行機の出張も多かったのですが、昔は往復のチケットを買うと朝食付きのビジネスホテルの宿泊券がもらえました。 要するに、ホテル代が浮いたのです。そして、出張先の食事代は営業が出してくれました。 遠方に出張した時は必ず土産を買って帰りましたが、妻には内緒の小遣いが何時の間にか沢山貯まりました。色々使ったので殆ど残っていませんが、1,000万円近くになったと思います。

【平均給与の推移と対策】
 下に示す様に30年以上も前から、残念ながら日本の平均給与は増加していません。この事実を与野党の政治家達は重く受け止めるべきです。

 平均給与を増加させる為には景気を良くする必要が有ります。「日本の景気が低迷している原因は、政治家達が先送りしてきた沢山の問題が錯綜しているのだ!」と私は考えています。 問題A、B、C・・・X、Y、Z。それぞれの問題を同時並行で、少しずつ改善していく必要が有ります。単に財政政策を捏ね回しても解決出来ません。

 少子化問題、女性活躍社会(男女平等)、高齢者の雇用、生産性の向上、食糧と燃料の安全保障、輸出産業の発展、ベンチャー企業を興せる環境整備、官庁のデジタル化による効率化、大学と研究機関のレベル・アップ、民需技術と軍需技術の垣根の撤廃、悪性既得権の剥奪(悪い族議員の摘発)、本格的諜報機関の創設・・・等々の問題。

・・・ 実質平均給与の推移 ・・・ 1年を通じて勤務した給与所得者の実質平均給与
★ 2020年≒433万円
★ 2015年≒420万円 ・・・19年消費税10%
★ 2010年≒431万円 ・・・08年がリーマンショック→→14年消費税8%
★ 2005年≒456万円
★ 2000年≒468万円
★ 1995年≒468万円 ・・・91年~93年はバブル崩壊期間→→97年消費税5%
★ 1990年≒464万円 ・・・89年に消費税導入(3%)
出典 :厚生労働省『図表1-8-2 平均給与(実質)の推移』

【インフレ】
 資本主義国で健全な経済成長を維持する為には、インフレ率を『2%』にする必要が有ると言われています。歴代政府と日銀の目標も『2%』でした。

 日銀は『2%』を目標にして努力してきた様に見えますが、歴代の政府はインフレ率が目標値に近づくと消費税率をアップして→→日銀の努力を無にしてしまいました。 日銀君がボロボロの車を何とかして発進させようと努力しているのに→→助手席に乗った政府君がブレーキを踏むので→→車は前に進めないのです。

 今年になって悪いインフレ(スタグフレーション)に突入したので、政府と日銀はインフレ率『2%』の達成では無く、給与アップを目標にすべきだと思います。

・・・ インフレ率の推移 ・・・
★ 1980年に7.8%だったインフレ率は次第に低下して→→86年からバブル経済が始まり→→88年にインフレ率は0.7%程になり→→翌年(89年)に理想値に近い2.3%なりましたが→→消費税(3%)が導入されました。
★ 1991年~93年にバブル崩壊
★ 95年に阪神淡路大震災が発生しました。
★ 97年にインフレ率は1.7%にアップしましたが、消費税率を『5%』にしてしまったので、インフレ率は低下して、経済の低迷は続きました。
★ 99年~05年の7年間も、デフレになってしまいました。
★ 06年~08年には”ほんの少し”インフレになりましたが、08年9月にリーマン・ショックが発生しました。
★ 09年~12年の4年間もデフレになりました。
★ 11年3月に東北大震災が発生しました。
★ 13年に日銀総裁に黒田氏が就任しました。
★ 14年にインフレ率は2.8%になりましたが→→消費税率を8%にした為に→→インフレ率は1%以下になってしまいました。
★ 16年にはウルトラCの『マイナス金利政策』を導入しましたが、インフレ率は低いままでした。
★ 19年に、まだ1%以下のインフレだったのに消費税を10%に引き上げてしまいました。
★ 20年から新型コロナが蔓延する様になってデフレになってしまいました。
★ 22年は国際的な燃料と穀物価格の上昇と円安の為に『1%』程の悪いインフレになると予想されています。

【悪いインフレが始まりました!】
 2021年から原油と穀物価格が急激に高騰し始めました。 今年(22年)にウクライナ戦争が勃発して供給量が減少した為に→→更なる価格アップになってしまいました。

 更に急激な円安になってしまいました。 2021年1月に『1$≒103.7円』→→22年1月に『1$≒114.9円』→→昨日(7月15日)は『1$≒138.8円』です。 単純計算すると、2021年1月に103.7円で輸入していた物が、昨日は138.8円にもなっています。『34%』ほど値上がりしているのです。

 2015年から1%以下のインフレと軽微のデフレ状態が続いて来ました。現在も供給過剰の状態に有るのです。 輸入価格と円安の為に生活必需品は値上がりすると予想されますが、(一部の輸出割合の高い大企業を除いて)サラリーマンの給与がアップするとは考えられません。

 年金の支給額は毎年、(前年の)現役世代の給与の変化と物価変動を加味して決定されます。 21年度は『0.1%』→→今年(22年度)は『0.4%』引き下げられました。スーパーの価格がアップしても、来年度の年金が増えるとは限りません。

 日本は現在、経済が悪化しているのに物価が高騰すると言う悪いインフレ(スタグフレーション)に突入したのです。

【100円ショップ】
 100円ショップ(百均)はデフレの象徴です。 最初に100円ショップが出来たのは1985年で、現在・最大手のダイソーは1991年に最初の店舗を開きました。従って、30年以上の歴史が有る事になります。日本が、その間デフレが続いたので100円ショップが存続出来たのです。

 今年・100円だった品物が、毎年1%値上がりしたら、下に示すように30年後には135円になります。毎年3%値上がりしたら、30年後には243円にもなってしまうのです。30年以上も100円ショップが維持出来たのは、ある意味奇跡だったのです。

 資本主義経済で国が発展する為には、インフレが必要不可欠です。然し、高いインフレ率では、種々の問題が発生します。然し、デフレでは経済が停滞してしまいます。「適正なインフレ率は2%だ」と言うのが大方の見方です。

★ 1%インフレ :今年100円→→10年後≒110円→→20年後≒122円→→30年後≒135円
★ 2%インフレ :今年100円→→10年後≒122円→→20年後≒146円→→30年後≒181円
★ 3%インフレ :今年100円→→10年後≒134円→→20年後≒181円→→30年後≒243円

(余談 :タッパーウェア) 1986年頃、私は主として銅合金を使った超精密機械の担当でした。加工中に錆が発生するので、気密性の高い容器を探しました。妻が台所でタッパーウェアを使っていたので、何点か家から持って行って試して見ました。タッパーウェアの気密性は素晴らしく、錆の問題は解決しました。

 今でもタッパーウェアは高価ですが、当時は現在より高かった様に思います。現在は通販で入手出来ますが、当時は女性が訪問販売していました。工場の近くの訪問販売員を呼んで、数万円分発注すると、数人で納入しました。(多分、工場を見たかったのです。) その後も何回か発注しました。

 100均でもプラスチック容器を売っていますが、気密性と耐久性は全く違います。「性能が優れていたら、多少高価でも買う」と言う心意気が欲しいですね! 最近、「ブドウ一房を150万円で落札した」とか「秋刀魚一匹を一万円で落札した」と言う記事を読みました。

 東京の日本橋に行ったとき、時間が有ったのでブラブラしました。フルーツが好きなので千疋屋(せんびきや)と言う店に入って見ました。美味しそうな見事なフルーツが並んでいました。(結局、目の保養をしただけでした。)

【ビッグマック指数】
 マクドナルド社は世界の多くの国に進出して、ほぼ同じ品質で・同じ商品名で販売しています。 イギリスの経済誌『エコノミスト』が、各国でのビッグマックの販売価格と為替レートを比較して、実感出来る経済数値を考案しました。 それを、『ビッグマック指数』と呼びます。

 各国のビッグマックの価格は、マクドナルド社が「その価格で無いと売れない」と考えて設定しています。 換言すると、「アメリカでは621円で売れる物を、韓国では440円にしないと売れない!」、「もっと貧しい国民が多いい日本では390円にする必要が有る!」とマクドナルド社の経営陣が判断しているのです。

 要するに、マクドナルド社の経営陣は「日本国民は韓国よりも購買力が無い」と判断しているです。私は、残念ながら正しい判断だと思います。

 『世界経済のネタ帳』による2021年の57カ国のビッグマック価格ランキングの抜粋を下に示します。()内の数字は、私が日本の価格を100として算出した指数です。 1位のベネズエラは経済破綻した国です。一般に貧しい国では、日本円に換算したビッグマック価格は安くなりますが、経済が破綻するとトンデモナク高くなります。

1位 :ベネズエラ=918円 (235)
2位 :スイス =774円 (198)
3位 :ノルウェー =693円 (178)
5位 :アメリカ =621円 (159)
9位 :ユーロ圏 =552円 (142)
16位 :韓国 =440円 (113)
31位 :日本 =390円 (100)
33位 :中国 =380円 (97)
48位 :インド =280円 (72)
56位 :ロシア =249円 (64)




妻の認知症と夫の我儘

2022-07-09 09:21:25 | 在宅医療
【はじめに】
 先週、奥さん(Tさん)が重度の認知症になった旦那さん(M氏)から依頼されて、認知症患者を受け入れてくれる介護施設を調査した事を投稿しました。

 今回は、M氏を腹立たしく思う様になった経緯について書きます。

【どんな状態だったか!】
 奥さん(Tさん)は今年76歳になるのですが、60歳になった頃に認知症の症状が出て来ました。 その前から、Tさんの御両親が認知症の末期で寝たっきりになっていました。 Tさんが62歳~63歳頃に御両親が相次いで亡くなられましたが、御両親が亡くなった事は全く脳にインプットされませんでした。 今でも、生きていると思っています。 

 Tさんは古い古いガラ携帯を持っていて、時々実家に電話しています。一回り年下の弟さんが父親と祖父になって話をしている様です。 私は、Tさんに父親の話をする様に仕向けるのですが、嬉しそうな顔で「猟銃を持って猪や鹿を撃ちに出掛けた」と最近も言います。

 72歳のお盆に帰省したのですが、御両親がいないので頭が混乱してしまった様でした。その後、症状が急に進んでしまいました。 塩加減が分からなくなって、料理を作る家政婦を雇う様になりました。 (Tさんは気が向くと、買い物に出掛けてドッサリ食材を買って来て、沢山料理を作って冷蔵庫に入れますが、塩辛くて食べられません。 私が遊びに行くと、家政婦さんが作った料理を、「私が作ったのよ」と言って出してくれました。)

 旦那さん(M氏)は今でも忙しく働いています。 家政婦を雇う様になった頃から、私は「Tさんを施設に入所させた方が良いのでは?」とアドバイスして来ましたが、「家に誰もいないのは寂しい」と子供の様な事を言い続けました。

 病状は更に悪化して、時々ですがM氏を「知らないお爺さんがいる」と言って、手提げ金庫を隠したりします。 私が様子を見に行くと、家の中では私が誰か分かるのですが、外に出て草引きをしていると、「知らないお爺さん」になってしまいます。

 去年の秋、(実家に帰りたかったのだと思いますが、)家から200kmほど遠くのJR田辺駅で保護されました。今年の春先には御坊駅で保護されました。二回とも、和歌山県に住む親戚に電話して、車で送ってもらいました。 春先の時、私は(草引きの為に)M家に行っていました。Tさんは急いで車から降りて、家に入り「お腹が空いた!」と言いました。

 その後直ぐに、GPS発信機を五、六台買ってハンドバッグや買い物袋に入れています。 5月頃から、500m程の距離に有るスーパーに買い物に出掛け→→帰路が分からなくなり→→警察に保護さる事件が二、三回有りました。その都度、従業員を迎えに行かせました。

 私は月に一、二回はM家に行っています。Tさんは、私がコーヒー好きなのを覚えている様で、コーヒーメーカーで作ってくれます。但し、紙フィルターを装着しないので、飲める代物では有りません。

【その後、どうなったか!】
 今年の6月になって、M氏から介護施設の調査を頼まれました。 その調査結果は2022年7月2日投稿の『認知症と介護施設』に書きました。

 渋るM氏を説得して、7月2日に介護付き有料老人ホームに入所させました。 ガラ携帯を持たせていたので、深夜に「連れに来て」と電話が有り、3日の昼食後に連れて帰ってしまいました。

 M氏から「連れて帰ったら、精神的に落ち着いているので心配しない様に」、「今後は実家に帰るとは言わないと思う」と電話が有りました。 認知症は悪化するだけで、良くなる事は絶対に有りません。M氏が、「何を考えているのか?」分からなくなってしまいました。

 施設には、「料金は毎月支払うから部屋は何時でも入所出来る様にしておいて下さい」と言ったそうです。 そんな例は今まで無かった様ですが、施設は了解した様です。

【8日の出来事】
 Tさんが、昨日(8日)の始発電車で淀屋橋まで出掛けてしまいました。6時ちょっと過ぎにM氏から「GPSによると、淀屋橋にいる」と電話が有りました。私は急いで朝食を取って、何時でも出掛けられる様にして、待機していました。

 7:30頃に、「警察が保護してくれたので、従業員に迎えに行ってもらう」と電話が有りました。

【私は少し腹を立てています!】
 M氏は、Tさんが保護された時、一度も自分で迎えに行った事が有りません。親戚に頼んで”はした金(二、三万円)”を渡すか、従業員に行ってもらうか、金で全てを解決して来ました。

 8日は早朝の出来事でしたから、直ぐに電車に飛び乗って近くまで行って、(GPS信号を頼りに)徘徊中のTさんを見つけて連れて帰ったら、始業時間に十分間に合ったはずです。 端(はな)から自分で連れに行く気が無いのだと気付きました。

 JRの職員や警察官を何だと思っているのか! 親切心でやってくれた親戚の人に”はした金”を渡して済む話か?! 私は少し腹を立てています! 皆さんは、どう思われますか?

認知症と介護施設

2022-07-02 09:36:16 | 在宅医療
【はじめに】
 知人の奥さんの認知症が進んできたので、種々の介護施設を調べました。日本は高齢化が進み、認知症患者が増えて来ていますので、「老後の心配をされている方が沢山おられるのでは?」と考え、調査結果を纏めて見ました。

 要介護認定を受けてケアーマネージャーが決まったら、時々会って将来の事や現在の悩みを相談される事を推奨します。 介護の仕事に携わるには、真面目で誠意が無いと務まらないようです。私が今までに会った方は、皆さん立派な方でした。

 ケアーマネージャーは、居宅介護支援事業所が紹介しています。
 どの施設でも酒はOKでした。喫煙が出来る施設も有りました。

【調査条件】
 裕福な知人から認知症の有料介護施設の調査を依頼されてたので→→インターネットで調べ/勉強して→→施設を見学させてもらい→→数人の介護士から生の声を聴いて→→色々なアドバイスを頂きました。

 後期高齢者の認知症になった奥さんを入居させる施設の調査の依頼でした。旦那さんは今でも働いています。子供が独立して遠方に住んでいるので、奥さんと二人住まいです。奥さんは週に1日・デイサービスを受けています。

 比較的費用の安いグループホームから超豪華な介護付き有料老人ホームまで調査/検討しました。 最高級の施設は豪華ホテルの様で、廊下が広く、ロビーはゆったりしていて、入居者の着ている服が違いました。車椅子を利用されている方も多かったです。 要介護度が高くなったら、本人にとっては、介護さえしてくれたら、設備の良し悪しは関係無い様に思いました。

【認知症患者は人間です!】
 奥さんが、1年程前に一人で電車に乗って実家に帰ろうとして、200kmほども遠くの駅で保護してもらいました。それから、時々実家に帰ると言います。現在は、旦那さんがGPS発信機を五、六個買ってハンドバッグや買い物袋等に入れています。近くのスーパーに一人で出掛けて、帰路が分からなくなくなり、警察に保護される様な事が起こっています。

 旦那さんから、2ヶ月ほど前に、玄関ドアに鍵を追加して奥さんが出れなくして欲しいと依頼されました。 適当な鍵を見つけたのですが、鍵を付けたら家全体を座敷牢にするに等しいと思いました。 認知症患者も人間ですから、「座敷牢で軟禁する片棒を担ぐべきではない」と考えて、介護施設を調査し、旦那さんを説得して来ました。

 1ヶ月ほど前に、「介護付き有料老人ホームを調査して欲しい」と言い出したので、本格的な調査をして→→資料を集め→→施設を見学しました。やっと、入居施設が決まり、近日中に入る予定です。

【認知症患者を受け入れてくれる施設】
 認知症患者を受け入れてくれる施設は沢山有ります。 入居時に連れて来た人が帰る時、大抵の場合は「帰りたい!連れて帰って」と言うそうです。「心を鬼にして帰って下さい」と言っていました。 10日間の仮入居制度の有る施設が有りましたが、私は推奨しません。

 「入居後・毎週一回、身内の方が短時間顔を見せてあげて欲しい。重度の認知症で誰か分からなくなっていても、身内の顔を見ると心が和む」と言っていました。2ヶ月ほどしたら、面会に来なくても大丈夫の様です。

★ グループホーム :民営
★ 特養老人ホーム :公立や社会福祉法人
★ 介護付き有料老人ホーム :民営
★ サービス付き高齢者向け住宅 :民営

【グループホーム】
 認知症だけが問題の場合は、「グループホームが一番良い」と色々な所でアドバイスされました。 然し、住んでいる市町村に有るグループホームにしか入れません。 国の方針で、市町村の人口を加味してグループホームの数と定員を制限しています。 知人が住んでいる市の人口は約7万人で、グループホームは3施設で、定員は合計で54人しか有りませんでした。

 どの施設も満床で、それぞれ20人ほど空くのを待っている状況でした。空きが出来ても申し込み順に入居者を決めているのではなく、ケアーマネージャーと相談して、緊急度を加味して入居者を決める様でした。

 グループホームでは、(部屋は個室ですが)入居者9人を1グループにして、介護士が一人か二人ついて、一日中グループで行動します。 車椅子が必要な人や、動きに全く問題の無い人が助け合って生活します。「プライバシーが保てないのでは?」と心配される方がおられる様ですが、認知症が進んだ本人にとってはプライバシーは関係無い様です。 一方的に介護を受けて生活するのでは無く、人間らしく助け合って生きる事が出来るのです。

 どの施設でも、入居を希望したら→→空きが出来るのを待って→→面接:施設の担当者が入居予定者に会って様子を確認し→→健康診断書、感染症の有無、申込書→→入居の可否を決め→→入居日を決める。

 施設の担当者が面接するのは、❶入居予定者が暴力を振るう恐れがないか? ❷帰りたいと言って「壁を叩く」恐れがないか? ❸大声で廊下を歩き回る恐れがないか?・・・等をチェックするのが目的だそうです。 「時々ですが、お断りする場合が有る」と言っていました。

【私立の介護付き有料老人ホーム】
 比較的安い所から超高級の施設まで、4ヶ所・見学しました。私は元サラリーマンで年金が少ないので、一番安い所でも年金だけでは賄え無い金額でした。 昔、「老後の為に2,000万円貯める必要がある!」と話題になりましたが、今回見学した一番安い施設でも2,000万円では足りません。

 月額利用料には、①介護費用、②医療費、③水道光熱費、④洗濯費などが含まれていません。現在の後期高齢者の健康保険の負担率は『10%』ですが、調査依頼者は『30%』です。要介護2の毎月の介護費用は、21,967✕3=65,901円になります。 要介護5になると『86,904円』になります。

 部屋の広さは18m2~21m2でした。 見学はしなかったのですが、全国展開している超豪華な施設では、60m2も有りました。夫婦で入居されて豪華な余生を送る施設の様でした。

 どの施設の資料にも『職員体制:要介護者○○』が記載されています。法律の規定で要介護者3人に介護士を1人以上付けなければなりません。 職員体制の数値は、「要介護者数/介護士数」の事です。要介護者3人に介護士が1人の場合は『職員体制:要介護者3.0』となります。 一対一で介護する場合は『職員体制:要介護者1.0』になります。 今回の調査では1.5~3.0でした。

(余談 :タクシー代月100万円) 私は、老人ホームの見学にタクシーを利用したのですが、運転手さんは少し前まで京都市内でタクシー運転手をしていたそうです。京都では有名な高級老人ホームの前を通りかかると、老人が手を振っていたそうです。乗せると、200kmも離れた「○○市の✕✕町に言ってくれ」と言ったそうです。✕✕町に着くと、「その先が分からない」と言うので、交番に連れて行ったそうです。 巡査が鞄を開けると、「この人を見掛けたら次の番号に電話してください」という紙が入っていました。

 2時間ほどすると、息子さんが車で駆け付けて「月に何回もタクシーに乗って遠方に出掛ける。代金が月に100万円ほど掛かるが、父が気晴らしをして、長生きしてくれたら安いものです!」と言われたそうです。・・・金持ちは違いますね!

(余談 :入居金) 1985年頃、私が所属していた部に10歳程年上の方がおられ、「母親を介護付き有料老人ホームにいれるべきか?」悩んでいました。三人兄弟で、母親は広いお屋敷に一人で住んでいた様でした。殆どの老人ホームが満室で、入居時に1億円ほど支払ったら入れるところが1ヶ所だけ空いていたそうです。家屋敷を売却したら1億円以上になる様でしたが、結局3人が協力して母親の介護をしました。

 今回調査した中で一番入居金が高かったのは『3,880万円』でした。超豪華な施設でも入居金は『1,600万円』でした。昔の様にベラボウに高い入居金を要求する施設は無い様です。 その後、介護付き有料老人ホームは増えて、現在は空いている施設が結構沢山有りました。

【特養老人ホーム】
 地方公共団体などが運営する特別養護老人ホーム(特養老人ホーム/特養)の費用は安いですが、待機者(待っている人)が多くて簡単には入れません。

【サービス付き高齢者向け住宅】
 サービス付き高齢者向け住宅は『サ付き』や『サ高住』と呼ばれています。建物の内部がバリアフリーで、安否確認や生活相談のサービスをしてくれる、民営の賃貸マンションの様な施設です。 要介護度が高くなったら、特養等に移る必要が有ります。

【介護老人保健施設】
 介護老人保健施設は『老健』と呼ばれています。入院が必要でない要介護者が入って、リハビリして自宅に帰れる様にする施設です。 2024年3月末で老健は廃止されます。

【介護医療院】
 介護医療院は、老健の代わりとして、2018年に創設された施設です。 病院の場合は、(同じ病気では)一般に3ヶ月経つと退院させられますが、介護医療院は要介護者を長期入院させる病院です。死ぬまで入院する事も可能です。 個室は無くて、大部屋だけだと思います。

【軽費老人ホーム】
 地方自治体や社会福祉法人が運営する、自立あるいは要支援の高齢者が比較的少ない費用負担で利用できる施設です。

【ケアハウス】
 地方自治体や社会福祉法人が運営する、軽費老人ホームC型をケアハウスと呼んでいます。ケアハウスには一般型と介護型の2種類が有ります。

 一般型(自立型)は60歳以上のほぼ自分で生活出来る人が入れる施設です。 介護型(特定型)は65歳以上で要介護1以上の人を受け入れる施設です。(一人暮らしの方が入る施設だと思われます。)

【住宅型有料老人ホーム】
 自立出来る老人や要介護度が軽度の老人(一般には60歳以上)が暮らしやすい様に作られた賃貸マンションの様な施設です。レクレーション施設を設けたり、老人が快適に暮らせる様に工夫している様です。

 利用料(家賃)は10万円~20万円以上、色々です。クリニックが併設されていたり、介護スタッフが常駐している所も有ります。 要介護度が高くなると介護付き有料老人ホーム等に移る必要が有ります。

【市区町村の体制】
 私が管理している賃貸マンションに生涯独身だった後期高齢者の女性(T氏)が住んでいます。 T氏が「金が足りない」と言うので、ケアーマネージャーが区役所に働き掛けて、生活保護を受けられる様になりました。 昨年(2021年)の秋頃から歩くのが難しくなり、今年になって部屋の中でも歩けなくりました。(多分、要介護4の状態だと思われます。) 土日も関係なく毎日、介護スタッフが一人か二人来ています。

 T氏は、4月1日から6月15日までリハビリの為に入院していました。その間に、認知症になった事にして、区役所の保健福祉課の担当者が『後見人?』になって、通帳を預かった様です。 T氏は私に、「役人が通帳を盗んだ!泥棒だ!」と言っています。 区役所の担当者とケアーマネージャーが、退院後に施設に入れようと、T氏を説得しましたが、「マンションに帰る」と主張した様です。 結局、マンションに帰って来ました。 ケアーマネージャーはT氏の担当を降りて、現在は地域包括支援センターのケアーマネージャーが引き継いだ様です。

 この賃貸マンションの家賃は、生活保護者に許容されている最高額(4万円)の1.7倍です。後見担当が大家に「4万円に下げてくれませんか!」と電話しました。勿論、大家は拒否したそうです。2.8万円は生活保護費を上乗せして市が出しているのでしょうか? 固定電話は解約させた様です。

・・・ 要介護者の相談部署 ・・・ ❶と❷は公的な機関
❶ 保健福祉課 :『後見担当』がいます。
❷ 地域包括支援センター :2005年に設立、ケアーマネージャーがいる。
★ 居宅介護支援事業所 :ケアマネージャーが常駐・・・病院や一般社団法人等が運営している。

【結論 :庶民の未来】
 介護付き有料老人ホームには空きが有るので、金持ちは殆ど待たずに入れます。 生活保護受給者も我がままを言わなかったら、ケアーマネージャーが施設を探してくれ、入れる様です。

 庶民の場合、幸運な方は特養老人ホームに入れます。 国や地方公共団体には金がないので、特養老人ホームの様な施設を増やす事は出来ません。従って、庶民の老後は在宅介護になります。 2018年に始まった『介護医療院』は、庶民にとっては朗報です。

 地価の安い都市の周辺に介護医療院を沢山作るべきだと考えます。介護医療院にはHCU(高度治療室)やICU(集中治療室)は不要で、高価な医薬や医術も不要です。 その代わり、要介護2の認定を受けたら、誰でも入れる様にすべきです!

 庶民が箪笥貯金をするのは、老後のためです。要介護2の状態になったら、子供の厄介にならずに介護医療院に入れると確信出来たら老人は気が楽になります。 三途の川を渡るのには六文しか要りませんから、箪笥貯金を子供や孫の為に使うでしょう→→日本の景気が良くなります。

 人は色々ですが、私は『要支援2』になる前に終焉を迎えたいと考えています。 それまでは、体操と散歩して、食事に気を付けて→→『ポックリ死』が私の理想です。 (私の母は100歳頃に要支援2程度になりました。)

 45歳~50歳になると親が後期高齢者になり、将来が不安だと予想します。介護医療院が全国に沢山出来たら、親の将来で悩む必要が無くなります。日本は活気を取り戻せるかも?知れません。