これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

憲法第九条の改正議論を始める前に

2021-11-27 09:33:39 | 政治
【はじめに】
 先日の衆議院選挙で憲法改正に賛同する政党が、衆参両院で憲法改正の発議が出来る2/3以上の議席を獲得しました。 11月19日に、岸田首相は「憲法改正実現本部」を立ち上げました。

 第九条の改正議論が近々始まると予想されるので、私の考え方を公表することにしました。

【立憲民主党と憲法改正議論】
 現在・立憲民主党は代表選挙中ですが、来年の参議院選挙と同時に憲法改正の国民投票が実施される事を予想して、代表を選ぶべきだと私は思います。 枝野幸男氏が進めた「共産党と社民党との連携」で国民投票に臨んだら大敗してしまうのでは?と私は予想しています。

 憲法改正議論が活発化したら、各テレビ局は討論会を放映するでしょうが、立憲民主党からの出席者が真面(まとも)な議論が出来るでしょうか? 共産党と社民党は、第九条を宗教の聖典の一節の様に語ります。この2党と同じ論法では、立憲民主党は埋没してしまいそうです。

【日本国憲法】
 敗戦後に日本の保守派政治家達は、「GHQが天皇の戦争責任を追及するのでは?」と恐れていたと想像しますが、46年2月にGHQが提示した英文の憲法草案では『象徴天皇』として認められる事になっていました。 私見ですが、吉田茂は「天皇制さえ認めてもら得れば、日本の共産化を防ぎ、内政を安定化出来る、この際はGHQ案を丸呑みしておこう、将来改正すれば良い!」と判断したと思います。

 GHQは、旧日本軍を取り敢えず解体するために『第九条』を盛り込んだのだと思われます。有史以来、数千万人の人口を抱える大国が、軍隊を持たなかった例は有りません。GHQも「日本人は将来、第九条を改正して、軍隊を持つだろう」と考えていたでしょう。

 国家予算の乏しい日本にとっては、第九条は有難い規定になりました。 朝鮮戦争やベトナム戦争への参戦を避ける口実に出来、自衛隊を設立した後は軍事予算を増やさない口実にも出来たのです。 戦後の経済発展と科学技術の発展は、『第九条』のお蔭だ!と言っても過言では有りません。

 米ロ冷戦が始まって、日米は『奇妙奇天烈』な関係になりました。第九条を押し付けたアメリカが、「日本は軍隊を持て!」、「軍事予算を増やせ!」、「国際紛争に軍隊を派遣しろ!」、「アメリカからもっと兵器を買え!」・・・と要求してきたのです。

 米ロ冷戦は終わりましたが、ロシアは今でも覇権主義国家で、21世紀になって中国が台頭してきて→軍備を急速に拡充しています。そして、米中冷戦時代に入ろうとしています。日本は何時までも、『九条の傘』で雨を凌ぐ事は出来ません。

★ 45年8月 :敗戦(ポツダム宣言を受諾)
★ 46年2月 :GHQが英文の憲法草案を提示
★ 46年5月~48年11月 :極東国際軍事裁判(東京裁判)
★ 46年5月 :第一次吉田内閣
★ 46年11月 :日本国憲法を公布
★ 47年4月 :新憲法下での最初の衆議院選挙(社会党・片山哲内閣)
★ 47年5月 :日本国憲法の施行

(余談 :大日本) 韓国は『日帝』と問題にしますが、『大日本帝国』とは通称の国名で、旧憲法や法律で規定されていません。正式な国名は『大日本国』です。旧憲法は『大日本帝国憲法』ですが、「大日本の帝国憲法」の意味で、「大日本帝国の憲法」と言う意味では有りません。

 『大日本』は死語の様になっていますが、現在でも天皇が公式文書に押す印鑑『国璽(こくじ)』は『大日本国璽』となっています。 (因みに、日本の国璽は金印です。)

【憲法第九条の原文】
第二章 戦争の放棄 :戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

(解説) 第九条の文字を追っ掛けても「何を制限/禁止しているのか?」分からないと思われます。多くの憲法学者の見解は、「❶武力で他国を侵略したり、❷武力を背景に他国を脅してはならない」、「❶と❷の為の軍隊は持ってはいけない」と九条は規定しているのだ!

 「2 前項の目的を達するため」と態々(わざわざ)記載したのは、自衛権は国際的に認められている権利だから、九条は自衛権を行使する為の軍隊を禁止していない・・・これが歴代政府の見解で、一部の憲法学者も支持しています。

 各国の軍隊は『〇〇国軍』や『✕✕国防軍』が正式名称です。例えば、アメリカは『合衆国軍( United States Armed Forces)』です。 日本は、自衛権を強調するために『自衛隊( Japan Self-Defense Forces)』と『防衛省(Ministry of Defense)』を正式名称にしています。

(私見) 第二次世界大戦後の兵器の進歩は目覚ましいです。 防衛出来ない兵器がドンドン開発されています。 防衛省は口を濁しますが、最新の攻撃ミサイルは迎撃ミサイルでは撃ち落とせません。 北朝鮮は、日本が保有する迎撃ミサイル・システムでは対応出来ないミサイル開発に注力しているのです。

 攻撃兵器が進化したために、専守防衛と言う考え方が成り立たなくなっているのです。 その為に、近年「日本を狙ってミサイルが発射される兆候が有ったら敵基地を先制攻撃する能力を、自衛隊は持つべきだ!」と主張する人達が増えてきたのです。

【国際連合憲章の第51条】 自衛権
 「自衛権は国際法で認められている権利である」とよく言われますが、国際連合憲章の第51条の規定を指しています。 ウイキペディアに記載されていた訳文を、以下に転記しておきます。

 第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

【軍隊とは?】
 「自衛隊は、専守防衛が任務だから軍隊では無い」と言うのが歴代政府の見解です。揚げ足を取った見方をすると、「他国の軍隊は先制攻撃をして、他国を壊滅するのが使命だ」と言っている様に聞こえます。 そもそも・こんな議論をするのは世界広しと言えども日本だけです。

 自衛隊が軍隊で無いと他国に主張しても、全く通用しません。 アメリカの軍事分析会社『グローバル・ファイヤーパワー』の2021年の報告では、自衛隊の軍事力は世界第5位です。

 百歩譲って「自衛隊は軍隊では無い」と認めたら、国連から要請が有っても自衛隊を紛争地域に派遣してはいけない事になります。 捕虜の取り扱い(保護)については、ジュネーヴ条約の中の第3条約に規定されています。この規定が適用されるのは、軍人と・それに準ずる組織のメンバーに限定されています。 紛争地域に自衛隊を派遣する時、歴代の政府は派遣先の国で「自衛隊は軍隊で有るから、万一・捕虜になってもジュネーヴ条約に従って保護されるべきで有る」と主張しています。 国内では「自衛隊は軍隊では無い」、海外では「自衛隊は軍隊だ」と説明せざるを得ないのです。

・・・ グローバル・ファイヤーパワーの2021年軍事力ランキング ・・・
1位 :アメリカ・・・核保有国
2位 :ロシア ・・・核保有国
3位 :中国  ・・・核保有国
4位 :インド  ・・・核保有国
5位 :日本
6位 :韓国
7位 :フランス・・・核保有国

(余談 :捕虜に関する法律) 殆ど話題になりませんが、日本にも捕虜に関する法律が有ります。 『武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律』;2004年公布。 然し、「紛争地域で自衛隊が捕虜として捉えた人間をどう取り扱うのか?」、政府見解を聞いた事が有りません。

日本の軍事費 :イギリスの有力シンクタンクである国際戦略研究所(IISS)の年次報告書「ミリタリー・バランス」では、2020年の日本の軍事費(防衛費)は世界第8位でした。

【軍隊の要否を議論すべき!】
 今後・憲法第九条の改正を議論する場合は、従来の政府見解を全て無かった事にして、「軍隊が必要か?」、「軍隊は不要か?」を真正面から討議すべきだと私は考えます。

 共産党だけ明確な主張、「段階的に自衛隊を縮小して、将来は完全に廃止する」、「国連から国際連合平和維持軍(PKO)の派遣要請が有っても、応ずるべきでは無い」と言っています。 社民党は自衛隊は違憲だと主張しています。 れいわ新選組は、九条の改正には反対を表明していますが、自衛隊を廃止しろとは言っていない様です。

 「憲法九条で軍隊を持つことが禁じられているから、自衛隊は廃止すべきだ!」と言う方がおられたので、「憲法九条が無かったら、貴方は軍隊を持っても良いと思われるのですか?」と聞いて見ました。 彼は黙ってしまいました。

 日本の周辺には、❶核爆弾とミサイルの開発に全力で取り組んでいる北朝鮮、❷核爆弾を1,000発まで増やそうとしており、兵器の開発に目覚ましい成果を上げている中国、❸核爆弾を6,500発も保有するロシアが有ります。

【夢想の世界に生きるのか?】
 田島陽子先生は、「何でも、話し合って解決しよう!」と主張されます。堀江貴文氏は、「中国が欲しいと言うのなら、尖閣あげちゃえば!」と昔・言いました。 「他人は危害を与えない」と言う夢想の世界(夢とファンタジーの世界)に生きる方が良いと考えるのは個人としては立派な生き方です。 然し、国家の使命の一丁目一番地は、「他国の侵害から国民の生命と財産を守る事」ですから、為政者は現実の世界で考え/対処する必要が有ります。

 田島先生を日本国の特使として北朝鮮に派遣しても、成果が得られないのは明らかです。 自衛隊を解散させたら中国が尖閣諸島に上陸するのも明らかです。 堀江氏は、「沖縄も欲しいと言うのだったら、あげちゃえば!」と言うのでしょうか?

【軍隊を持たない国】
 現在・軍隊を持たない国が存在します。全て小国で、近隣の国に国防を委託しているケースが多いいです。 人口34万人のアイスランドは軍隊を保有していませんが、北大西洋条約機構(NATO)に参加しています。人口127万人のモーリシャスには、警察(≒8,000人)の他に治安部隊(≒1,500人)が有ります。 モーリシャスの人口は日本の1/100ですから、警察官がとんでもなく多い国だと言えます。(日本の警察官は30万人弱です。)

【軍隊を持たない国になったら!】
 憲法改正の国民投票で、「日本は軍隊を持たない」と決まったらドンナ事になるのか?」想像して見て下さい!

・・・ 自衛隊廃止のメリット ・・・
 自衛隊を廃止したら、国防費を科学技術分野や工業分野に回す事が出来ます。米軍基地は直ぐには返却されないと予想しますが、将来は米軍は撤退するでしょう。 米軍が撤退したら、北朝鮮が日本を攻撃する恐れは無くなるでしょう。

 自衛隊と米軍の基地を、有効に利用出来る様になります。元気溌溂な自衛隊員が経済活動に参加する事になります。 単純に考えれば、軍隊を廃止したら日本の経済は発展しそうです。

① 国防費(2020年≒、53,400億円)→他の用途に回せる。
② 思いやり予算(国防費の一部)(2020年≒、2,017億円)→他の用途に回せる。
③ 米軍基地が返却され→有効活用が出来る。
④ 自衛隊の基地を廃止する→有効活用が出来る。
⑤ 隊員(≒25万人)が経済活動に参加できる。

・・・ 自衛隊廃止のデメリット ・・・
 「他国が日本の領土を取りに来ない」、「武力を背景に日本に不利な要求を呑ませようとはしない」との考え方に立てば、自衛隊を廃止するデメリットは殆ど無いと思います。

 万一、尖閣諸島、太平洋の島や沖縄を要求してきても、「上げたら良い」との考え方も成り立ちます。 この考え方に賛同されますか?

 中国とロシアは紛争国に軍隊を派遣して、その国を取り込もうとしています。「遠いい国がどうなろうと」、「国際秩序がどうなろうと」どうでも良い。 自衛隊を廃止する事は、「兎に角、紛争には関わらないでいよう!」と言うスタンスを選択するのと同じです。

 自衛隊を廃止したら、米軍基地が日本に存続していても、アジア地域の軍事バランスは極めて大きく変化します。中国は好き放題に出来る様になり、台湾へ進攻すると思われます。 台湾から難民が沢山・日本に来る可能性が有ります。 難民に紛れて兵器を持った台湾兵が入って来る可能性が有ります。 警察と海上保安庁で対応出来るでしょうか?

 日米の貿易収支は、(2020年を除いて)日本が大幅な黒字が続いています。 アメリカから高価な兵器を国家予算で(言いなりの値段で)沢山輸入して、黒字幅を減らして来ました。自衛隊を廃止したら、兵器の輸入が無くなります。 日本の貿易黒字を減らす、別の手段を考え出す必要が有ります。 何も対策しなかったら、日米貿易戦争が始まります。

❶ 国家が国民の生命と財産を守れなくなる。
❷ 軍事同盟が破棄される。
❸ アジアの軍事バランスが大幅に変化して、中国の脅威が高まる。
❹ 国土の防衛が出来なくなる。
❺ 国連平和活動に参加出来なくなる?
❻ 武力革命を防止出来るか?
❼ 災害対策部隊の創設が必要になる。

【私の第九条改正案】
 第九条の3項として、「3 自衛権を行使するための軍隊は保有する。」と追加すべきか?否か?を国民投票に掛ければ良いと私は考えます。賛成多数だったら、『日本軍』と『国防省』に名称を変えるべきです。

 否決されたら、『自衛隊』と『防衛省』のままの現状維持が良いと考えます。軍隊を持つか?、無くすか?を国民投票に掛けるのはリスクが大き過ぎます。 軍隊を保有しない大国が、有史以来存在した例が有りません。 「日本で、軍隊を保有しない大国が存続出来るか?否か?」をテストする事には大反対です。


過剰介護と人間の尊厳

2021-11-20 19:29:12 | 在宅医療
【はじめに】
 今年・私は後期高齢者になったので、健康保険の自己負担が10%になって喜んだら、保険料がガバット上がってしまいました。 私はリタイアして10年になりますが、歯科医に10回ほどお世話になっただけです。最近の3年間は歯医者にも行っていません。

 2001年に厚生省と労働省を統合して巨大な厚生労働省(厚労省)が誕生しました。現在の職員数は33,000人ほど、年間予算を33兆円以上も使っています。2007年に年金記録問題が明るみになりましたが、その後も種々の問題が発生しています。 多くのコメンテーターが問題点を指摘していますが、野党の議員達は勉強不足なのか?追及していません。

 今回は、厚労省の問題点の内、過剰介護と過剰医療に絞って投稿します。

【S氏のケース】
 我が家の近くに子供が同級生で、母親達が友達付合いをしている『S家』が有ります。奥さんは冗談の通じる気さくな方なので、昔から時々雑談をしています。旦那さん(S氏)は私より5歳年下でした。

 2007年にS氏が61歳の時、自宅で脳溢血か脳血栓で倒れてしまい、以来自宅介護が始まりました。 S氏の出来る事は、❶片手を少し動かせる、❷嫌と言う表情が出来る、❸「アー」と言う様な叫び声を出して奥さんを呼ぶ、❹頭を少し動かせる、❺耳が聞こえる、❻食べ物の咀嚼が殆ど出来ないので流動食でした。

 娘さんが二人いるのですが、S氏が倒れられる前に二人とも結婚されて、それぞれ二人子供(孫)が出来ていました。 孫達が来ると部屋の中を走り回るので、ベッドに寝ているS氏に微小な振動が伝わったのか?S氏は耐えられ無かった様で、孫達を嫌う様になってしまいました。 奥さんは13年間も一人で介護されました。

 S氏は、パソコンゲームに夢中で、テレビドラマや演歌の放送を楽しみにしていた様でしたが、発病してからは野球放送以外は見なくなってしまいました。 最後の2年間は、野球放送放送も見る元気が無くなって、寝る時間が段々長くなりました。 真夜中でも目が覚めると叫び声を出して、奥さんを呼びました。

 亡くなる2年程前に重い肺炎になり、医者が「普通の治療では助かりませんが、設備の整った大病院で最先端の治療受けたら助かる可能性が有ります」と言われたそうです。 奥さんから相談をうけたので、[医者は、もう十分介護されたのだから、奥さんを解放してあげよう!」と言いたかったのだと私はアドバイスしました。 結局・奥さんは救急車を呼んで入院させました。

 その後も2回・肺炎になり、入院しました。殆ど意識の無い患者に先端医療を施して、二年間延命させる事に意味が有ると思われますか? 費用は若い人達の負担です。「国民皆保険制度の見直しが必要だ!」と私は思います。

 S氏は、13年間ほど寝たっきりで2020年に74歳で亡くなりました。 その13年間、回復の見込みが全く無く、本人が嫌がるのに毎週一回介護トレーナーが来ていました。私は奥さんに「本人が嫌がっているのだから、リハビリは止めた方が良い」とアドバイスした事が有ります。一回のリハビリに国が一万円負担したと仮定すると、一万円✕50週✕13年間=650万円になります。

・・・ S氏が13年間受けていたサービス ・・・
★ リハビリ :週一回・・・介護トレーナーが一人来て、足や手を動かしていた。痛いらしくて毎回嫌と言う顔をしていた。
★ 訪問診療 :週一回・・・医師と看護婦
★ 生活支援サービス :週一回・・・二人来て、プラスチックプール状の風呂に入れていた様です。

(私見 :医療技術と医薬品の進歩) 「医療技術や医薬品が進歩して、S氏の様な患者が普通に近い生活が出来る様になれば素晴らしい」と思います。 然し、病状の回復は無く、単に何年か延命出来る様な進歩は人類にとっては『害』で、決して『益』にはならないと思います。 国民皆保険制度と介護制度を維持する為には、「何処まで治療するか?」、「何処まで介護するか?」、線引きが必要な時代になっていると考えています。 政治的な判断が必要です。 厚労省の抱える多くの問題を、国会で真面目に議論して欲しい!

【T氏のケース】
 私は大阪の小さな賃貸マンションの管理をしています。このマンションにはエレベーターが有りません。 二階に今年76歳になる身寄りの無い女性(T氏)が住んでいます。 私が管理を始めたのは2018年2月ですが、その前年に3ヶ月ほど入院したそうです。病院では寝たっきりだったので、足の筋肉が弱ってしまい、退院後・リハビリ施設に週一回通う様になりました。

 私がT氏と知り合いになった頃、「歩ける様になったら、前の会社で働く事になっている」と嬉しそうに言っていました。 暫くして、リハビリ施設の担当者が、「大分・良くなったから走って見ましょう」と言ったそうです。床に転がっていた物に躓いて→転倒→骨折→また3ヶ月ほど入院しました。

 退院後・リハビリには通わなくなって、デイサービスを週一回利用する様になりました。 運動を殆どしないので、歩くのが更に難しくなってきました。2020年の7月頃に、マンションの住人達が「Tさんは急に痩せてきた」と言っていました。誰かに(思いっきり力を入れて)ズボンを持ち上げてもらわないと、階段の昇り降りが出来なくなってしまいました。

 2020年10月頃にベランダに設置したエアコンの屋外機の上にうつ伏せに倒れて動けなくなってしまったので、私がレスキュー隊を呼びました。今年(2021年)3月に施錠した部屋の中でほぼ一日動けなくなり、生活支援サービスに来た女性がレスキュー隊を呼びました。

 今年の5月からは介護スタッフが週七日・毎日来る様になりました。 私は、30歳前後の男性・介護トレーナーと顔見知りなりました。 エントランス部の掃除をしていると、「おはようございます」と言って、T氏の部屋に上がっていきましたが、数分後に降りて来て、「今日は気分が乗らないから、リハビリは止める」と言ったと、不満気でした。彼は時間が余ってしまったので、私と雑談しました。

 「Tさんはリハビリしても良くなる可能性は全く無い。僕は見込みの有る方の手助けをしたいんだけど」と言いました。「Tさんは毎日話し相手が来て、家事を全てやって貰えて天国だね。医者が、そんな介護が必要だと書類を作ってくれたら、私でも介護して貰えるのか?」と聞いて見ました。 「その通りです」と言うので、「医者のだまし方を教えてくれ!」と言うと笑っていました。

 介護分野に詳しい方の話では、「T氏の様にフルスペックの介護が必要な方は、介護施設にとっては喉から手が出る程欲しい顧客で、取り合い状態になっている」そうです。

・・・ T氏の受けているサービス ・・・
 今年(2021年)の5月からは、毎日(土日も)生活支援サービスの為に介護施設から自転車で一人か二人、3時間(長い日は6時間)ほど来て、買い物、料理、洗濯、掃除をしています。週一回・デイサービスに出掛けます。週二回・リハビリにトレーナーが来ます。一週間か二週間に一度、医者に連れて行く担当者が別に来ます。

★ 日曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 月曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 火曜日 :11:30~12:30=リハビリ、13:00~15:00=生活支援サービス
★ 水曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 木曜日 :11:00~16:00=デイサービス、~18:00=送って来たヘルパーが生活支援サービス
★ 金曜日 :リハビリ、11:30~15:00=生活支援サービス
★ 土曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス

・・・ T氏の病状の悪化 ・・・
 この5年間でT氏の体力の衰えはドンドン進んでいます。もう直ぐ車椅子が必要になるのでは?と予想していますが、知り合いの医者は「寝たっきりになっても10年以上生きられるだろう」と言っています。国の負担はどのくらいになるのでしょうか?!

★ 2017年 :(72歳)3ヶ月入院して歩行が困難になった→リハビリに通う様になった。
★ 2018年2月 :私と立ち話する様になった。
★ 2018年6月頃 :リハビリ施設で転倒→骨折→3ヶ月ほど入院
★ 2018年9月頃~ :週一回デイサービスに通うようになった。
★ 2020年7月頃 :急に痩せてきて、手助け無しでは階段の昇り降りが出来なくなった。
★ 2020年8月頃 :デイサービスの他に、週二回生活支援サービスを受ける様になった。
★ 2020年10月頃 :ベランダで動けなくなってレスキュー隊に助けてもらった。
★ 2021年3月 :(76歳)施錠した部屋の中で動けなくなりレスキュー隊に助けてもらった。
★ 2021年5月~ :過剰介護が始まった。

(余談 :T氏は強欲で超我儘です!) 去年の9月に、一階に30年以上住んでた一家が転居する事になりました。奥さんが10年以上寝たっきりで、全く換気をしなかったので部屋中にカビが生えて、全面的なリフォーム工事が必要な状態になっていました。

 「T氏が一階に移りたいと言ってくるだろう。 許可するつもりだが、君に言って来たら大家に直接電話する様に言ってくれ」と大家から言われていました。 工事が始まる前に、T氏から「家賃は現在のままで、一階に移りたい」と電話が有ったそうです。大家が了承すると、「大家が引っ越し業者を探して、費用は大家が負担してくれ」と言い出しました。

 大家がカンカンになって怒って、電話を切ったそうです。 リフォーム工事の見積金額は300万円以上なりました。 工事が始まると、T氏が部屋に入ってきて作業員に「この部屋には私が入る」と言っていたそうです。ほぼ工事が完了した頃、T氏が「工事代金の一部を負担するから一階に移らせてくれ」と大家に電話したそうです。「240万円出してくれたら了承する」と回答したら、「一週間時間を下さい」とT氏が言いました。

 結局・回答期限が過ぎても電話が無く、不動産屋に募集を掛けて貰いました。直ぐに話が纏まって、12月に新しい人が入居しました。 T氏は住民達に(今でも、)「今度、一階が空いたら私が移る」と言っています。

【”介護の囲い込み”の問題】
 2021年時点で全国の有料老人ホームに入っている方は26万人もおられるそうです。 有料老人ホームの『介護の囲い込み』と言う問題が、最近話題になっています。

 2001年に『高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)』が制定され、その後・何回も改正されています。 『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』、即ち『有料老人ホーム』に関する法律です。

 問題は、利益を最大限引き出すために、過剰な介護をして介護保険で定められた限度額ぎりぎりまでサービスする不埒な有料老人ホームが沢山出て来た事です。 A氏がB有料老人ホームを作って、Cデイサービス会社とDリハビリ会社も運営していたとします。B有料老人ホームの入居者を全員、Cデイサービス会社とDリハビリ会社に通わせて、過剰なサービスを受けさせるので『囲い込み』と呼びます。

 都道府県が有料老人ホームのやり過ぎをチェック(立入検査)する事になっていますが、有料老人ホームの数がドンドン増えているのに、どの都道府県でも担当部署の職員数を増やさない為にチェックが疎かになっているのです。

 立入検査すると殆どの有料老人ホームの運営に問題が有り、対処に時間と人手が掛かり、新たな立入検査をするのが難しくなっている様です。その為に全国の立入検査件数は減少しているとの報道が有りました。 近年は滅多に立入検査が行われないので、「儲けられるだけ儲けておこう、罰金も刑罰も軽いから!」と言う輩が増えている様です。

 介護の分野は人手不足だとの報道が時々有りますが、「過剰介護を止めさせたら少しは余裕が出てくるのでは?」と推察します。そして、介護保険料を下げる事も可能になるのでは?と思います。

【N氏の奥さん】
 この話は過剰介護の話では有りません。「高額な医療費を国が何処まで負担すべきか?」と言う問題です。

 2007年頃に働いていた職場に、50歳前後の男性社員(N氏)がいました。 N氏と私はタバコを吸うので、喫煙所で時々雑談をしました。N氏の奥さんは10年以上前に高額の医療費が必要な珍しい病気(希少疾患)を発病しました。 N氏は、もう介護に疲れてしまって、誰かに悩みを聞いて貰いたかったのです。

 N氏は、「殆ど全額・国が負担してくれるが、毎年の医療費は1,600万円~1,800万円も掛かる。もう2億円以上になっている。治る見込みは全く無い!」と自嘲気味に言っていました。 ある日・N氏が医療費控除の明細書を持って来ました。その年の医療費は1,800万円以上になっていました。 「僕の年収の4倍以上だ!」と笑っていました。

 医療技術と医薬が進んだので、昔だったら助からなっか患者を救う事ができます。 然し、高額の医療費が必要になるケースが多いい様です。 『人の命は金には代えられない』と言いますが、将来が有る若い人には・この考え方で国費を出すのには賛成です。然し、老人の場合は、何処かで線を引かないと「国は破綻してしまうか?」、「教育費や研究開発費などを減らすか?」の二者択一の問題になります。

 どんな生物でも年老いたら死んで、そのスペースに次の世代が生きられる様にします。 「人間は元気な内だけ思う存分・楽しく生きて、生かすために高額の医療費が必要になったら、尊厳を維持して死ぬのが理想だ」と私は考えています。

 スウェーデンでは、❶80歳以上の患者、❷70歳代でも腎不全などが有る患者は、集中治療室(ICU)が利用出来ません。

今回の衆議院選挙

2021-11-13 09:21:08 | 政治
【はじめに】
 10月31日に実施された衆議院選挙について書きます。我が家の有る神戸市では、市長選挙も有りました。

 大方のマスコミは野党勝利を予想していましたが、結局・大山鳴動して鼠一匹の様な結果で終わりました。 現在の『小選挙区比例代表制』は、ちょっとした風の変化で政権交代が可能になる制度です。 近年・自民党政権ではスキャンダルが多く、『強風』が吹きそうな状況でした。それでも立憲民主党は議席を減らしたのです。「何故なのか?」立憲民主党は猛省する必要が有ります。

【投票場の風景】
 31日・神戸は9時頃まで雨が降っていたので、10時頃に妻と投票場に行きました。待たされる事無く、短時間で終了しました。50人ほど見掛けましたが、二十歳前後の若者は全く見掛けませんでした。

 本人確認のために誕生月を聞かれたので、「忘れました」と言ったら→担当者が顔を上げて→無言で私の顔をジット見ていました。 「痴ほう症の人の本人確認はドンナニするのか?」興味が有ったのです。後で、妻に叱られました。

【選挙公報】
 私は大阪の小さな賃貸マンションを管理しています。住民の一人が郵便受けの下に、チラシを放り込む段ボール箱を勝手に置いていて、皆さん色んな不要物を捨てます。月に3回ほど私がゴミ袋に入れて、ゴミ置き場に置いています。 

 沢山・選挙公報を読んだ形跡無しに捨てていました。 「この賃貸マンションには底辺の生活を送ってきた方が多いいので、厚生福祉に関する政策に興味が有るのか?」と勝手に思っていました。「選挙に行っても、どうせ、私の生活は向上しない!」と諦めているのでは?

 私は、選挙公報を一通り読んで、最終決断しました。

【辻元清美氏の落選】
 辻元清美氏は大阪10区で、維新・池下卓氏&自民・大隅和英氏と戦って敗れました。 選挙戦終盤になって、よりにもよって自民党員の山崎拓氏(84歳)に応援演説をしてもらったのを見て、「こりゃ駄目だ!」と思いました。

 もう皆さんは覚えておられないかも知れませんが、山崎拓氏は10年間ほど山田かな子氏を愛人にしていました。彼女が告白したので、2002年に週刊文春が取り上げました。週刊文春によると、山崎氏は大のセックス狂でだった様です。辻元氏はこの事を知らなかったのか?忘れたのか?。「藁をもつかむ思い」だったのか? いずれにしても、ビックリ仰天しました。

 辻元氏は61歳ですから、少し早いですが、政治の世界から引退されて、「趣味を作って余生を楽しまれては」と思います。

【立憲民主党は勉強と改革が必要!】
 枝野幸男氏は大学の後輩で、考え方に共通する所があったので、長年注目して来ました。立憲民主党を立ち上げた時から、枝野氏は大幅に考え方を変えた様に思いました。

 今回の選挙を共産党や社民党と共闘すると発表した時、「そこまで考え方を変えてしまったのか!」と呆れてしまいました。

 立憲民主党に必要なのは、目先の票の追求では無くて、「立憲民主党に国の運営を任せても大丈夫だ!」と国民を説得する事です。蓮舫氏の様に言葉巧みに与党のスキャンダルを追及しっても、「国を任せられる」と国民の多くは考えないでしょう!

 21世紀になって、世界の『経済情勢/軍事情勢』、『科学技術/工業技術』、『エネルギー問題/CO2削減問題』、・・・等々・問題山積で、内容が急激に変化しています。10年前の知識が通用しない問題が沢山有ります。 与野党の政治家は勉強が必要な時代になっているのです。

 与党だと、副大臣と大臣政務官になれるので、官僚から種々教えて貰う事が出来ます。知識を広め/経験を積んで/官僚個人を知ったら、大臣になっても何とか仕事をこなせます。 野党議員は独学で勉強する必要が有ります。

 立憲民主党の議員達が経済情勢/軍事情勢などなどを猛勉強して、大臣や副大臣の勉強不足を追及出来る様になったら、党内の意見を集約出来る様になり、国民は立憲民主党に国を任せても良いと考える様になります。現状のままで、政権が取れても『鳩ポッポ内閣』や『空き缶内閣』の二の舞になってしまいます。

(余談 :私がブログを始めた理由) 私は、4年前に与野党の国会議員10名程に、「ボランティアでやりますから、工業技術、科学技術等々の要点を短く纏めた勉強資料を作らせて下さい」と申し入れて見ました。2回コンタクトを試みた方もいましたが、一人も連絡をくれませんでした。

 与野党の先生達が誰も相手にしてくれなかったので、ブログで自分の思想を公表しようと思い立ったのです。 技術屋の端くれなので、工業技術や科学技術についても今後は投稿したいと考えています。

 昔の民主党政権の時に防衛大臣になれる議員がいなかったので、民間人だった森本敏氏に依頼しました。 立憲民主党が現状のままでは、政権を取ったとしても、専門知識が必要な大臣は民間人を登用せざるを得なくなってしまいます。こんな状態で立憲民主党の支持率がアップするとは考えられません。

(余談 :野党合同官僚ヒアリング) 野党議員が官僚に教えて貰う『官僚ヒアリング』は昔から有りました。近年は『野党合同官僚ヒアリング』になり、NHKが何を考えたのか?カメラを持ち込んで放映する様になりました。 教えを乞う場では無くなって、官僚を吊るし上げる場に変質してしまいました。(生徒が先生を罵倒するシーンを全国放送して良いのか?)

 官僚は時の政権の考え方を忖度して、政策を提言したり、法案を作成するのが仕事です。 忖度し過ぎて文書を改竄したり、破棄する事は問題です。然し、そんな問題が発生しても、国会で追及すべきで有って、野党合同官僚ヒアリングで取り上げるべきでは有りません。

 立憲民主党が将来政権を任された時、官僚を上手くコントロールし無かったら、国家の運営は出来ません。アメリカの様に、政権が交代すると国家公務員のトップ(官僚)を入れ替える制度で有れば、野党議員が時の官僚を叩いても良いでしょう。 今までの様に官僚叩きを続けたら、立憲民主党が政権を握ると優秀な官僚達はサッサと辞めてしまいますよ!

(余談 :烏合の衆の野党) 与党の場合は烏合の衆でも何とか纏まります。与党は、大臣、副大臣そして大臣政務官と言う『甘い飴』を配る事で党内を纏められます。大臣と副大臣に任命されれば、皇居に参内して認証式に出られます。

 立憲民主党では、昔・自民党にいた小沢一郎氏(79歳)と中村喜四郎氏(72歳)が活躍されている様です。この両議員は、「考え方は問わない、兎に角選挙に勝って議席数さえ増やせば良い」、「政権を取って国をドンナニ変えたい等々は、政権を取った後で議論しよう!」、「財源の事など無視して、一票でも多く取れる公約を掲げて戦おう!」と考えている様に見えます。(私は、二人の事を『選挙屋』と読んでいます。)

 テレビの討論会に出た立憲民主党議員は、(党内で反対派に批判されない様に)論点をずらして、何を言いたいのか分からない様な発言をします。話題になっている問題について党内の意見が集約が出来ていないのが見え見えです。

 立憲民主党は、党内で政策議論を活発に行って、余りにも考え方が違う人達には出て行ってもらう必要が有ると考えます。共産党や社民党の考え方に近い人は排除すべきです。(私は共産党と社民党を否定はしていません。烏合の衆では駄目だと言っているだけです。)

【憲法改正】
 今回の総選挙の結果から、憲法第九条を除けば憲法改正が出来るのでは無いかと考えます。

 第九条の改正を含めると、反対者が多いいと思われますが、それ以外で有れば改正議論に参加する政党は沢山出て来るでしょう! 例えば、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党です。この四党の合計議席数は、憲法改正の発議が可能な衆参両院の2/3を超えています。

 GHQは1946年2月に英文の憲法草案を吉田茂内閣に提示しました。殆ど内容を変更しないで翻訳して、11月に日本国憲法を公布しました。それから75年経過していますが、一字一句改正しないで現在に至っています。(他国が作った憲法を、後生大事に75年間も守り続けている国は他には無いと思います。自分で憲法が作れず、改正も出来ない情けない国なんでしょうか?!)

 改正が必要だと私が考える点は種々有ります。例えば、『第二十四条』を改正して同性婚を認めるとか。

 2022年7月に参議院選挙が行われますが、それまでに前述の四党で改正案を纏めて参議院選挙と同時に国民投票をすべきです。 時間が無いので、四党で合意出来る事案に絞って国民の判断を仰ぐべきです。

 民主主義の根源は憲法です。民主主義思想を広める為には、多くの国民に憲法に興味を持って貰う必要が有ります。 憲法改正の国民投票を三、四回やれば国民の多くが憲法について関心を持つ様になると思います。その後で、第九条の改正を議論して、国民の判断を仰ぐべきだと考えます。

【最高裁・裁判官の審査】
 最高裁・裁判官の審査については沖縄県を除いて、全国的に興味が無い様です。「公報を読まれた方は少なかったのでは?」と推察します。私は時々ですが読みます。

 今回・11名の審査が行われましたが、9名は東大卒で8名は東大法学部卒でした。裁判官は融通の利か無い、カチンカチン人間に向いた仕事なんでしょう! (私の大学と高校の後輩が各1名いました。)

(余談 :最高裁の裁判官) 憲法と裁判所法の規定によって、最高裁の長官(1名)と裁判官(14名)に欠員が出来ると、時の内閣が任命し、天皇が認証します。 定年(70歳)は有りますが、任期は有りません。 政権が変わっても、前の政権が任命した裁判官を首には出来ません。重罪を犯したら罷免出来ます。

 任命された後の最初の衆議院選挙の時に国民の審査を受けます。その後、10年経過して定年になっていなかったら、再度審査を受けます。罷免の印『✕』が50%以上有ると罷免されます。

 法律では40歳以上で法律の知識/経験が豊富な人を選ぶ事になっていますが、実際は60歳以上が殆どの様です。

 法律の規定で無く慣例で(1970年代から)、裁判官出身6人、弁護士出身4人、検察官出身2人、行政官出身2人、法学者出身1人の15名になるように調整されています。 例えば、検察官出身の裁判官が辞めると、検察官出身者が任命されます。

 憲法第64条に『裁判官弾劾裁判所』が規定されています。衆議院議員7名と参議院議員7名で構成されます。最高裁を含めた裁判官の罷免を決めるのが役割です。戦後、7件で罷免の判定が出ました。現在1件審議中です。 最高裁の裁判官が訴追された例は有りません。

ヴェーバーが残してくれたヒントを基に (その8)

2021-11-06 06:15:33 | 民主主義
【はじめに】
 今回が本シリーズの最終稿です。 フィリピンのドゥテルテ大統領とベネズエラのチャベス大統領&マドゥロ大統領について書きます。 両国とも立憲共和国です。

 共通しているのは、両国とも長い間スペインの植民地だった点です。独立したのはベネズエラの方が百年以上前ですが、混乱が続いていて、特に10年程前から経済がドンドン悪化しています。

第17章 :フィリピン
【私とフィリピン人の青年】
 2003年頃に私は某大手重機械メーカー(K社)に出向していました。K社では海外から受注したジョブの図書は(社内の打ち合わせ用を除き)英文で作成していました。 フィリピンは昔アメリカの植民地だったので、英語が公用語の一つになっています。

 K社は、日本のCAD専門学校を卒業した、優秀なフィリピン人の男性を非正規社員として雇い、数年間・ミッチリ機械設計を教えました。独り立ち出来る様になると、その青年を帰国させて(資金援助して)設計事務所を設立させました。三、四カ月間隔で彼は来日して2週間程滞在していました。次の仕事の打ち合わせと、計画図を作成していたのです。

 彼と私はタバコを吸ったので、毎日・雑談しました。 彼は来日する時、必ず部下を一人連れて来て、K社が用意したマンスリーマンションで二人で自炊していました。お米(インディカ米)を持って来ていました。(米を会社に持ってきて見せてくれました。日本の炊飯器でも美味しく炊けると言っていました。) 「日本滞在中はK社が日本円で給料を支払ってくれるので、貯めて→炊飯器やカメラを買って→親戚に配ったり、売って儲けるのだ」、「何時も、二人で持ちきれない程買える」と嬉しそうに言っていました。

【フィリピンの基礎データ】
 正式国名はフィリピン共和国です。昔は漢字の『比』で表しました。 昔は銅などの鉱業産品を輸出していましたが、現在は軽工業(食品加工、製糖、製剤、繊維)が中心です。 40年間ほどアメリカの植民地だったので、英語の読み書きが出来る国民が多いいです。

★ 人口 :10,903万人(2020年)・・・人口爆発が続いています。
★ 面積 :29.9万km2
★ 1人当たりのGDP :8,449ドル(2020年)・・・PPP
★ 多民族国家 :タガログ族、ビサヤ族、モロ族、華人、混血人、その他の少数民族
★ 宗教 :キリスト教(ローマ・カトリック信者が多いい)
★ 公用語 :フィリピン語(人工語)、英語

【フィリピンの歴史】
 フィリピンは、16世紀から370年間ほどスペインの植民地でした。1898年にアメリカがスペインから買い取り、植民地にしました。第二次世界大戦中に日本が侵攻して独立させました。日本の敗戦で一旦はアメリカの支配下に入りましたが、翌年に独立が認められ『フィリピン共和国』になりました。

 その後、長く武装闘争が続きましたが、2019年に最後の武装勢力との停戦が成立しました。

 フィリピンに住む『華人』は明朝や清朝の時代に移住した人達の子孫です。数は少ないですが、金持ちが多いい様です。

★ 1529年 :スペインの植民地(サラゴサ条約)
★ 1571年 :スペインがマニラを植民地の主都とした。
★ 1898年 :アメリカの植民地(スペインから買い取った)
★ 1899年 :独立宣言→フィリピン第一共和国
★ 1899年~1902年 :米比戦争
★ 1901年 :フィリピン第一共和国を廃止→アメリカの統治
★ 1941年 :日本軍がマニラに侵攻した。
★ 1942年 :日本軍がフィリピン全土を占領した。
★ 1943年 :日本の承認によってフィリピン第二共和国が成立した。
★ 1946年 :独立→フィリピン共和国
★ 2016年 :ドゥテルテ大統領
★ 2019年 :モロ・イスラム解放戦線(MILF)の武装解除

【人口爆発】
 フィリピンの最大の問題は、20世紀の後半から人口爆発が続いていることです。1960年の人口に対し、60年後の2020年には4倍にもなってしまいました。

 こんなに急激に人口が増加したら、失業率がアップして、生活が貧しくなって、犯罪が増加し、反政府闘争が始まりそうに思えますが、今の所・フィリピンではそんな問題は発生していません。 何故なのか?研究してみる必要が有ります。 幾ら何でもこのまま人口増加が続いたら、私の危惧が現実化すると予想します。

★ 1960年 : 2,709万人 (100%)
★ 1980年 : 4,810万人  (178%)
★ 2005年 : 8,786万人 (324%)
★ 2010年 : 9,234万人 (341%)
★ 2015年 :10,098万人 (372%)
★ 2020年 :10,903万人 (402%)

【フィリピンの政治制度】
 立憲共和国で、大統領と副大統領は直接選挙で選ばれ、任期は6年です。 大統領と副大統領選挙は同時に行われ、別々に投票されます。 再選は出来ません。

 国会は2院制で、上院(元老院)は任期6年・定員24名・全て全国区制で選ばれます。日本の参議院議員の様に、3年毎に半数が選ばれます。 下院(代議員)は任期3年で(憲法では)定員250名、小選挙区制(80%)と全国区制(20%)です。

【ドゥテルテ大統領】
 2016年にドゥテルテ氏が大統領に就任した時、「トンデモナイ事になる」と思いました。 手荒な政策をドンドン実行しました。 例えば、麻薬関連の犯罪者は射殺したり、投獄したりしました。 町長になっていた麻薬王(カーウィン)を逮捕して、息子は射殺しました。 生ぬるい対策では、フィリピンの麻薬問題は解決しないと思います。

(注記) フィリピンは島国ですから、小型の船で麻薬を密輸するのは簡単だと思われます。 従って、麻薬を撲滅することは不可能でしょうが、日本程度になれば成功と言えます。麻薬が重大な問題になっているメキシコやコロンビアは、ドゥテルテ大統領の毒薬手法を参考にしない限り問題は解決しないと思います。

 フィリピンはキリスト教徒の多いい国ですが、イスラム教徒が武装して自治を求める闘争をしてきました。 ドゥテルテ大統領は、2019年にモロ・イスラム解放戦線(MILF)の武装解除に成功しました。

 人口爆発が起こっているフィリピンでは、治安を改善して西側諸国からの投資を増やして、工業を発展させ→仕事を増やす事が肝要だと思います。その面では、ドゥテルテ大統領の政策は正しかったと思います。

 経済成長率は6%~7%、失業率は5%台を維持してきましたが、コロナの影響で2020年からは悪化しています。コロナが収まったら、V字回復して欲しいと願っています。

【投資先としてのフィリピン】
 私は、フィリピンは投資先として優れた点が多いいと考えています。

❶ 英語の読み書きが出来る人が多いい。
❷ 労働年齢の国民が多いい。 (2021年の平均寿命は71歳ですが、平均年齢は24歳です。)
❸ 労働賃金が安い。一人当たりのGDPを市場交換レート(MER)と購買力平価(PPP)で以下に示します。 MERの一人当たりのGDPが非常に少ないのが魅力です。 2020年の平均年収は48万円でした。
 ★ フィリピン :3,323ドル(MER)、8,449ドル(PPP)・・・2020年
 ★ 日本 :40,089ドル(MER)、42,212ドル(PPP)・・・2020年
 ★ 中国 :10,511ドル(MER)、17,104ドル(PPP)・・・2020年
❹ 人口が多いいので、将来有望なマーケットとして期待できる。
❺ 既に工業技術が有る。 造船分野は現在世界第4位です。
❻ 中国に屈する国では無い。 南沙諸島の領有権問題が有り、中国が金をばら撒いてフィリピンを支配下に置くとは考えられない。 中国企業が進出する恐れは少ないです。

第18章 :ベネズエラ
【ベネズエラの基礎データ】
 ベネズエラの正式国名は『ベネズエラ・ボリバル共和国』です。多民族国家です。スペイン人が入植を開始して500年経過している為に、混血が進んでいます。

 ベネズエラは地下資源に恵まれています。特に石油と天然ガスの埋蔵量は世界第一位とか第二位だと言われています。 然し、❶超重質油の為に1バーレル当たりの生産コストが70~80ドルと非常に高く、❷石油公団に対する統制を強化した等が原因で、現在の生産量は少なくなっています。

★ 人口 :2,850万人(2019年)
★ 面積 :91.6万km2
★ 民族 :スペイン人の混血の国
★ 宗教 :ローマ・カトリック≒76%
★ 公用語 :スペイン語
★ 一人当たりのGDP :15,891ドル(年)・・・PPP
★ 石油と天然ガス :埋蔵量は非常に多いい
★ 鉱物資源 :ボーキサイト、鉄鉱石、ニッケル鉱、金、ダイヤモンド、リン

【ベネズエラの歴史】
 16世紀からスペイン人がベネズエラに入植を始めました。ベネズエラは、スペインの植民地の中では、独立したのが早い方です。アメリカとスペイン帝国が戦った米西戦争(1898年)よりも半世紀前には独立国家になっていました。

 独立後・200年程になりますが、内紛の絶えない国です。

 明治になって鎖国政策が破棄されたので、日本人が海外に移住する様になりました。アメリカ大陸に沢山渡りましたが、ベネズエラに行った人は少なかった様です。現在・日系ベネズエラ人は800人程しかいないそうです。

★ スペインの植民地化 :16世紀からスペインが植民地化を進めました。
★ ベネズエラ第一共和国 :1810年~12年
★ 独立戦争→1821年に独立
★ ボリビア共和国 :1824年
★ ベネズエラ・ボリバル共和国 :国名の変更 ;チャベス政権(1999年~2013年)・・・反米に転換
★ 2010年代以降は経済危機と政治の混乱が続いています。
★ マドゥロ政権 :2013年にチャベス死去→マドゥロが政権を引き継いだ。
★ 2015年の総選挙 :野党が圧勝(167議席中112議席)
★ 2018年 :不正選挙でマドゥロ氏が大統領になった。
★ 2019年 :グアイド国会議長が暫定大統領就任を宣誓・・・55ヶ国以上が支持
★ 2020年 :国会議員選挙・・・野党がボイコット

【ベネズエラのハイパーインフレ】
 ベネズエラはインフレ率が二桁の国でしたが、マドゥロ大統領になった頃から急激にインフレ率が高くなり始めました。2018年には通貨単位を5桁切り下げ、2021年に6桁切り下げるデノミを実施しました。《2回のデノミで11桁切り下げたので、2018年の1,000億ボリバル・ソベラノ (Bs.s)が2021年には1Bs.sの価値しかない事になります。その為に、現地での取引(買い物)はUSドルを使用している様です。》

・・・IMFによるインフレ率・・・
★ 2021年 :ベネズエラ≒2,700%、 日本≒―0.17%
★ 2020年 :ベネズエラ≒2,355%、 日本≒―0.03%
★ 2019年 :ベネズエラ≒19,906%、日本≒0.47%
★ 2018年 :ベネズエラ≒65,374%、日本≒0.99%
★ 2017年 :ベネズエラ≒ 483%、 日本≒0.49%
★ 2016年 :ベネズエラ≒ 255%、 日本≒―0.12%
★ 2015年 :ベネズエラ≒ 122%、 日本≒0.80%
★ 2014年 :ベネズエラ≒ 62%、 日本≒2.76%

【多量の難民流出】
 ハイパーインフレが始まった頃から(特に2019年から)約570万人も、コロンビア、ペルー、チリ等に難民が流出しています。 流出先の国は貧しいので、難民は苦しい生活をしている様です。 (日本は、既に50億円ほど難民支援金を出しています。)

【紙幣の印刷】
 ベネズエラは、紙幣の印刷をイギリスの民間企業に委託していましたが、印刷代が払えなくなってしまいました。マドゥロ大統領は2018年に暗号通貨(デジタル通貨)『ペトロ(Petro)』を発行して、公務員の給与をペトロで支払う事にしました。 民間ではペトロは殆ど流通していない様です。ベネズエラの財政は危機的状況なのです。

【ベネズエラの現状】
 2019年には大規模な停電が発生し、地下鉄が運行出来なくなる等の混乱が発生しました。 21年現在、国民の3/4が食糧不足に悩んでおり、医薬品も不足している様です。石油産出国ですが、ガソリンが不足しているので、通勤に支障が出ています。

【ベネズエラの政治制度】
 現在の憲法(2009年憲法)では、大統領は直接選挙で選ばれ、任期は6年で、再選が認められています。 国会は1院制(国民議会)で、任期は5年です。定員は165議席で、内3議席は先住民に与えられます。 普通選挙を採用しています。

 憲法で規定する政治制度には問題は有りませんが、マドゥロ大統領の強権政治の為に『立憲民主主義国家』とは言えない状況になっています。

【チャベス政権】
 チャベス氏は左翼思想(共産主義思想)を持った軍人でした。一度クーデターを企てましたが、失敗し投獄されました。釈放後は政治家になり、1999年の大統領選挙で勝ちました。

 チャベス氏は、貧困者の救済政策を始めました。❶無料診断制度、❷農地改革(農場主から土地を取り上げ→農民に与える)

 チャベス大統領の経済政策に問題が有ったので、経済が悪化していく様になりました。例えば、❶虎の子の石油公団 (PDVSA) への統制強化、❷統制価格の導入などなど。反米を打ち出した為に、2006年からアメリカは経済制裁を続けています。

【マドゥロ政権】
 2013年にチャベス大統領が病死した後を、副大統領だったマドゥロ氏が引き継ぎました。マドゥロ氏が引退するか、死亡しない限りベネズエラは民主化出来ないと予想します。

 2017年に行われた国会議員選挙(制憲議会選挙と呼ばれている)では、マドゥロ大統領を支持する労働組合や学生団体のメンバーには3票与える事にしました。その為、野党は選挙をボイコットしました。

 2018年の大統領選挙の時、反対派の有力者が選挙に出れ無くして実施しようとしました。反対派が選挙をボイコットしたので、マドゥロ氏が当選しました。反対派は選挙が無効だと主張して、グアイド国会議長を暫定大統領にしました。 55ヶ国以上が暫定大統領を、21ヶ国がマドゥロ大統領を支持しています。

 2020年に実施した国会議員選挙を、反対派がボイコットしたため与党が90%の議席を獲得しました。最高裁判所の判事は既に支持者で固めていたので、マドゥロ大統領は三権を掌握した独裁者になっています。

【ベネズエラの軍隊】
 チャベス政権が誕生してから、兵器はロシアと中国から輸入しています。 徴兵制を敷いていた様ですが、現在は廃止した様です。2021年の兵力は、陸軍63,000人、海軍25,500人、空軍11,500人、国家警備軍23,000人です。

 国内政治は大混乱状態ですが、反政府側は武力闘争はしていません。2013年以来、反米政権が続いていますが、北朝鮮の様にアメリカを刺激する様な動きは有りません。

【中国の目論見】
 中国がベネズエラに進出しようとしていますが、「地下資源を狙っている」との見方が大半です。然し、私は、「軍事基地の建設が目的では?」と疑っています。

 大昔・ソビエトのフルシチョフ第一書記がキューバに核ミサイルを持ち込もうとして失敗しました。習近平は賢いので、インフラ整備に金を貸して、沿岸の一部を租借して→海軍基地を作って→空軍基地を作ると予想しています。

 中国が、悪徳高利貸しの様な事をして港を手に入れた例は有ります。(中国は石油の前金として6,200億ドル貸して、現在2,000億ドル程残っている様です。) 他国の土地を租借する事は国際ルールに違反しませんから、アメリカは反対出来ません。 本格的な海軍基地を作ってしまえば、夜陰に乗じて秘密裏に核ミサイルを持ち込むでしょう!