これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

自動車業界 (その5)

2023-01-28 10:06:34 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、自動車業界についての最終稿です。ドイツについては前回書きましたので、今回はその他のヨーロッパ諸国の自動車業界について書きました。

【フランスとルノー】
 第二次世界大戦でフランスの工業は壊滅的な被害を受けました。ドゴール大統領がルノーを国営化して→→1年間ほどで立ち直り→→ヨーロッパを代表する自動車会社になりました。技術的に優れた車種を次々に上市しました。1979年には、アメリカで第4位だったアメリカン・モーターズを買収しました。アメリカでの事業がうまく行かず、本体の経営も傾いてきて、1987年にアメリカン・モーターズをクライスラーに売却しました。

 1990年に、ルノーは国営企業から株式会社になり→→1996年に民営化を完了しました。(然し、現在でもフランス政府が株式の15%を保有しています。)

 1999年に経営不振に陥っていた日産自動車を傘下に収めました。ルノーが日産の株式の『44.4%』を、日産がルノーの『15%』を保有し、ルノーからカルロス・ゴーン氏が副社長(COO)として派遣されました。(たったの4年間で)2003年には約2兆円も有った有利子負債を返済して→→日産は危機を脱出しました。

 然し、2019年には、ルノーが『純損益が80億800万ユーロ』、日産が『総額6,712億円の赤字』になりました。今後、両社がどうなって行くのか目が離せません。

(余談 :日産の問題) 日本の企業には、大なり小なり『派閥人事』の問題が有ります。経営が順調な時は、重役達が派閥闘争を楽しんでいても会社は何とか維持出来ますが、景気が悪化してきたら派閥闘争を中断して、一致団結して対策を練り/強力に事に当たる必要が有ります。

 日産の経営が悪化したのは、バブル崩壊(1991年~93年)が引き金でしたが、派閥闘争も原因だったと思います。 日産の派閥闘争の歴史とゴーン氏の問題は、井上久男氏の次の記事に詳しく書かれています。(インターネットで読めます。)

 私は、重役達の派閥闘争の弊害を身をもって体験しました。井上久男氏の記事からは、中間管理職や平社員の悲惨な状況が伝わってきません! 「派閥闘争は『パワハラ』と同等か?それ以上の犯罪だ!」と私は思います。

❶ 『独裁、内紛、権力闘争……日産を苦しめてきた「歴史の呪縛」』
❷ 『ゴーンという「怪物」を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る』

・・・ フランスに本社の有る自動車会社 ・・・
★ ルノー
★ パナール ジェパナール ジェネラル ディフェンス :軍用車両を製造
▲ ルノー・トラック :ボルボグループ ・・・現在はバスを製造
▲ シトロエン :ステランティスの子会社
▲ プジョー  :ステランティスの子会社
▲ DSオートモビルズ :ステランティスの子会社

【イタリア】
 イタリアで最大の自動車メーカーは、フィアット(従業員数≒214,000人;2014年)です。フィアットは、アルファロメオ、ランチア、マセラティ、アバルトを次々に傘下に収めました。 フィアットは、現在はステランティスグループになっています。

 現在純粋なイタリアの自動車メーカーは、フェラーリとトラックやバスを製造するイヴェコしか有りません。

・・・ イタリアに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フェラーリ :従業員数≒2,850人(2014年)
★ イヴェコ  :トラック、バス ;従業員数≒25,000人
★ パガーニ・アウトモビリ :従業員数60人ほどの小さな会社
▲ ステランティスグループ :フィアット、アルファロメオ(フィアットの傘下) 、ランチア(フィアットの傘下)、マセラティ(フィアットの傘下)、アバルト(フィアットの傘下)
▲ フォルクスワーゲングループ :ランボルギーニ
▲ マヒンドラグループ(インド) :ピニンファリーナ

【スウェーデン】
 ボルボは1999年に乗用車部門をフォードに売却し→→フォードが2010年に中国の浙江吉利控股集団に売却して→→乗用車部門は『ボルボ・カー・コーポレイション』になっています。 現在、ボルボ・カー・コーポレイションは電気自動車(EV)に注力しています。多分、リチュウムイオン電池は中国から調達する計画だと思われます。

 スウェーデンは昔から、ABボルボ社とスカニア社がトラックを沢山生産しています。

(余談 :スウェーデンの電力事情) スウェーデンは水力発電≒40%、原子力発電≒40%、風力発電≒10%、バイオマス・廃棄物発電≒7%と極めて珍しい国です。化石燃料を用いた発電は『1%』ほどしか有りませんでした。今月(2023年1月)原子力発電に関する制限を緩和する法案が提出されました。現在、スウェーデンの電気料金は非常に安いので、すでに電気自動車が沢山走っている様です。

・・・ スウェーデンに本社の有る自動車メーカー ・・・
★ ABボルボ :トラック、バス、建設機械、船舶用エンジン、航空宇宙 
★ ボルボ・カー・コーポレイション :乗用車 ;2010年から中国の浙江吉利控股集団 が株式の『82%』を握っている。
★ ケーニグセグ :1993年設立のスーパーカーのメーカー ・・・少量生産
★ スカニア :トラック、バス、産業用ディーゼルエンジン ;フォルクスワーゲングループ

(余談 :ボルボ車の思い出) 1995年頃、私が所属していた部に40歳前後の人格が素晴らしい男性社員がいました。彼はボルボの中古車を数年毎に乗り換えていました。「ボルボ車が特に好きではないが、ボルボの中古車は格安の値段で買えるから」と言っていました。時々乗せて貰ったのですが、夏の暑い日はエアコンを使用出来ませんでした。現在は改善されて、真夏でもエアコンは使用出来る様です。

【オランダとステランティス】
 オランダには自動車の量産企業は『ネッドカー』1社だけ有ります。一時期三菱自動車の子会社でしたが、現在はオランダの企業『VDL』の傘下に入っています。

 2021年1月に、フランス、アメリカ及びイタリアのメーカーが対等合併して『ステランティス』と言う巨大企業が誕生しました。その本社はオランダのアムステルダムに有ります。『ステランティス』は会社の名前で、製造する車のブランド名は昔のままです。 ジープ、クライスラー、アルファロメオ、シトロエン、プジョー、・・・などなど。

 (日本とドイツの自動車メーカーに対抗出来る様に、)ジリ貧に落ちいる恐れの有った会社が『大同団結』した分けですが、「電気自動車(EV)化にうまく対応出来るのか?」私にとっては非常に興味深いです。

【イギリス】
 イギリスの工業分野は、1960年代からジリ貧状態が続いています。典型的なのは、自動車産業です。「2020年にEUを離脱しましたから、今後益々イギリスの自動車産業は衰退するのでは?」と私は予想しています。

 イギリスには沢山自動車メーカーが有りましたが、その多くは外国企業の傘下に入り、現在はアストンマーティン社だけがイギリスに本社を置く生粋のイギリスのメーカーなっています。 有名なロールスロイスはジェットエンジン等の部門と自動車部門に分割され、自動車部門はBMWの傘下に入っています。

 イギリスの自動車産業の栄枯盛衰(えいこせいすい)は、日本の反面教師としては素晴らしいです。 日本も容姿や血筋でボンクラ議員に投票し続けたら、産業が衰退してしまいます! 志を高く持った、世情に通じた、勉強家を選んで投票しましょう!

❶ アストンマーティン :高級スポーツカーメーカー ・・・従業員数≒1,250人(2010年)

・・・ 外国の企業に吸収された等のイギリスの自動車会社 ・・・
★ ジャガー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ランドローバー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ミニ :かってはローバーの一部門→→2001年からBMWが製造している。
★ ロールス・ロイス・モーター・カーズ :BMWの傘下
★ ベントレー :1998年からフォルクスワーゲングループの傘下
★ ロータス・カーズ :吉利汽車が株式の51%を保有している。

(余談 :ジャガー) 私は、1986年に神戸に家を建てました。近所に洒落た洋館が有って、広い庭にピカピカに磨いたジャガーMk22.4サルーンを駐車していました。小豆色で、私好みのスタイルだったので、休日に散歩する時は、必ず前を通ってジャガーを眺めました。2000年頃にケーブルテレビと契約しました。そして、『主任警部モース』を見たのですが、モースの乗っていた車は形も色も近所の車と同じでした。2010年頃まで、大事に乗っていた様でした。

【ロシア】
 ロシアを『自動車』と言う視点から見ると、『発展途上国』に分類されると思います。半導体産業が発展していません、エアーバックも国内では製造されていません。欧米諸国の経済制裁が続く限り、1980年代の安全性の低い自動車しか製造出来ないと予想します。

 ロシアは国土面積が(日本の45倍)世界第一位です。人口は日本の1.14倍有ります。乗用車の保有数は日本の90%ですが、トラック・バスの保有数は57%ほどしか有りません。鉄道で物資を運んでいる国です。 従って、ウクライナ軍が鉄道路線を破壊したら、前線に物資を送る事が難しくなってしまうと思われます。

(余談 :ロシアの工業力) 私は大昔、エアーバックの火薬を収納する『インフレーター』を1年間ほど掛けて開発しました。ロシアが私をスカウトしたらインフレーターを製造出来る様になると思われますか? 絶対に不可能です! 冷間鍛造と機械加工の技術者/ノウハウ、加工機械が不可欠ですが、ロシア国内では調達出来ません。多分、プーチン氏はロシアの工業力を把握出来ていないと思われます。

★ 国土面積 :ロシア≒17,09万km2、アメリカ≒983万km2、中国≒948万km2、日本≒38万km2
★ 人口 :ロシア≒14,202万人、アメリカ≒33,481万人、中国≒141,178万人、日本≒12,421万人
出典 :ウイキペディア、人口は2022年時点

★ 乗用車保有数 :ロシア≒5,600万台、アメリカ≒11,626万台、中国≒22,691万台、日本≒6,219万台
★ トラック・バス保有数 :ロシア≒923万台、アメリカ≒17,278万台、中国≒4,648万台、日本≒1,627万台
出典 :日本自動車工業会『世界各国の四輪車保有台数 (2020年末現在)』

自動車業界 (その4)

2023-01-21 12:33:42 | 工業技術
【はじめに】
 今回はドイツの自動車業界について書きます。

 第二次世界大戦後、自動車の生産と言う点ではアメリカが圧倒的な力を持っていましたが→→日本、ドイツ、イギリス、フランスなどで自動車メーカーが成長し→→国際競争が激化して→→日本とドイツの企業が一馬身ほど先行する様になりました。

 ハイブリッド自動車が普及し始めると→→日本が先頭に躍り出る様になり→→欧米諸国は環境問題を理由にして→→数年後には電気自動車(EV)しか販売出来ない規制を設けました。 今後10年以内に、世界の自動車産業は大きく変化すると私は予想しています。

【ドイツの自動車業界】
 ヨーロッパにおける自動車業界は、ドイツの一人勝ちの状態になっています。

 ベンツは安全性に力を入れてきました。1996年に出向した中小企業の社長から、「車を買い替えたいので、車種を選んで欲しい」と依頼されました。私は、(その少し前に)車の安全性について詳しい、英文の雑誌を読んでいたので、エアバック付きのベンツ車を推奨しました。ベンツは高級車のイメージが強いので、「顧客からそんなに儲かっているのなら、負けてくれと言われる」と社長は言われましたが、「私が事故で死んだら、会社が潰れてしまうので無理して買った!と答えて下さい」とアドバイスしました。

 予想通り、「負けてくれ」と言う要求が有りましたが、社長は何時も私がアドバイスした答えを返していました。社長の車に月に何回か同乗させて貰いましたが、車体下の温度が表示され→→露結の可能性が確認できました。高速道路のカーブを曲がる時→→殆どハンドル操作が不要でした。カーナビでテレビが受信出来ましたが、運転中は受信出来なくなっていました。座席ヒーターが有ったので、寒いシーズンには助かりました。

 フォルクスワーゲンは株式公開会社ですが、ポルシェ・オートモービル・ホールディングが株式の『53%』を保有しています。ポルシェ一族と傍系のピエヒ一族がポルシェ・オートモービル・ホールディングの株式を『100%』保有しています。従って、フォルクスワーゲンは実質的にはポルシェ一族とピエヒ一族が共同経営しているのです。

(注記 :アウディ) 〇四つマークのアウディ車は日本でも良く見かけますが、1964年からフォルクスワーゲンの巨大な子会社です。フォルクスワーゲングループで高級車を製造しています。

(注記 :ポルシェ) ポルシェもォルクスワーゲンの子会社で、スポーツカー、SUV(スポーツ用多目的車)、セダンを製造しています。

・・・ ドイツに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フォルクスワーゲン
★ メルセデス・ベンツ
★ ダイムラー・トラック :メルセデス・ベンツ・グループ
★ BMW
★ アルピナ :アルピナ社は、BMWが製造した車に、手作業で改造して販売している。年間販売台数は1,700台ほどで、その内・約400台を日本に輸出しています。
★ フンケ&ヴィル  :ブランド名はYES!(小型スパーツカー) ・・・現在は生産していない模様
▲ フォード・ジャーマニー :フォード社の現地法人
▲ オペル :ステランティスの子会社

【ドイツの国際問題】
 2005年~21年の間ドイツの首相だったメルケル氏は、『経済安全保障』と言う考え方が欠如していた様に思います。 中国の購買力に頼り過ぎ、ロシアの地下資源を偏重し過ぎました。 私には、危なかっしい『近欲』の政策を実行している様に思っていました。

 2018年から米中貿易摩擦の問題が発生しました。2021年に大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代して→→貿易摩擦問題はあまり話題にならなくなりましたが→→習近平氏が台湾に侵攻する可能性が高まったので→→米中間の軍事衝突への対応が必要になってきました。

 米中間の緊張が高まって来たら→→アメリカは中国包囲網を構築しようと画策して→→ドイツはアメリカ側に付く事が要求され→→ドイツと中国間の貿易は縮小すると予想します。

・・・ ドイツの貿易額 ・・・ 2021年
★ 輸出 :中国≒1,036億ユーロ、 アメリカ≒1,221億ユーロ ・・・輸出総額≒1兆3,754億ユーロ
★ 輸入 :中国≒1,417億ユーロ、 アメリカ≒ 721億ユーロ ・・・輸入総額≒1兆2,025億ユーロ

 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して、ドイツを含むNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに武器を支援し、ロシアに経済制裁を加えました。ドイツで使用していた天然ガスの『60%』はロシアからパイプラインで送られていましたが、ロシアは対抗処置としてパイプラインを閉鎖しました。その為、ドイツは大金をはたいて天然ガスを買いあさり、今年の冬は何とか切り抜けそうにな状況の様です。

 『ウクライナ戦争が、早期にウクライナの勝利で終わって欲しい』と、NATO諸国の中でドイツが一番望んでいると私は見ています。

 ウクライナは、ドイツ製戦車『レオパルト2』の支援を強く望んでいます。ポーランドとスペインが供与する意思を表明しましたが、ドイツの承認が必要な様です。今の所、ドイツは承認しそうに有りません。 アメリカが供与を検討しているハイマースの射程150km弾(GLSDB)と、ポーランドなどがレオパルト2を多量に供与したら、今年中にウクライナが勝利して、戦争が終結しそうに思います。

(悲惨な映像を見て考える事!) テレビやインターネットでウクライナ戦争の映像が沢山見られます。住宅がガレキの山になっていて、畑は穴だらけです。ウクライナの復興は大変だと思います。ウクライナの民間人と両国の兵士が毎日沢山亡くなっています。日本を含む欧米諸国は、一日も早くロシア軍をウクライナから撤退させる様に、兵器を供与すべきだと思います。

【ドイツの電動自動車(EV)の問題】
 欧米諸国は、騒音規制と排気ガス規制を強化する方針を打ち出しました。2022年11月に欧州委員会が発表した新排ガス規制では、タイヤの摩耗やブレーキで発生する『粉』も規制しています。 これらの規制をガソリン車やディーゼル車でクリヤーする為には、研究/開発に巨額の投資が必要になると予想され→→欧米諸国は電動自動車(EV)の普及に舵を切りました。

 ハイブリッド自動車は燃費、排気ガス、騒音の総合得点が高いですが、日本の自動車メーカーが先行しているので、日本との競争を避ける為に、欧米諸国はハイブリッド自動車では達成出来ない規制にしたのだと思われます。

 然し、EVは中国が先行しており、近年インドが安いEVの輸出を始めています。欧米諸国は中国とインドとの競争には勝てると考えているのでしょうか? 甘い!甘い! 国家間の貿易戦争に勝つためには、(日本もそうですが!)国を挙げた取り組み/努力が必要です。

 ドイツのEV化には、日本以上に重大な問題を沢山抱えています。・・・電力需要の増大、半導体とリチュウムイオン電池の生産・・・などなど。

《課題 :ドイツの電力需要の増大対策》 電動自動車(EV)が増加すると→→電力需要も増加するので→→発電設備を増やす必要が有ります。ドイツは脱原発政策を進めてきたので、風力発電と太陽光発電で対応しようとしています。 昨年(2022年)に法律を改正/制定して『新発電計画』に取り組み始めました。

 風力発電には、❶発電量が『風』任せ、❷低周波騒音が発生する、❸野鳥の衝突死、➍景観の悪化・・・などの問題が有るので、政府の方針通りに事が進むとは考えられません。

 九州電力の試算では『100万kW』の太陽光発電所を建設する為には『58km2(山手線の内側面積とほぼ同じ)』もの面積が必要です。2030年の目標値『21,500万kW』を達成するためには、ドイツの国土の『3.5%』にパネルを張り巡らせる必要があります。景観破壊など・・・種々の問題が発生しそうに思います。

・・・ 2022年に発表したドイツの新発電計画 ・・・
★ 太陽光   :2021年≒5,890万kW→→2030年≒21,500万kW
★ 陸上風力 :2021年≒5,620万kW→→2030年≒11,500万kW
★ 海上風力 :2021年≒ 770万kW→→2030年≒ 3,000万kW
● 年間発電量:2021年≒240兆Wh→→2030年≒600兆Wh
出典 :自然エネルギー財団・一柳 絵美『ドイツ 自然エネルギー拡大加速に向け法律一式を採決』

(注記 :脱原発政策) 1988年からドイツは脱原発政策を進めて来ました。メルケル氏は一時、脱原発政策を見直しましたが福島原発事故(2011年)によって、脱原発政策に戻らざるを得なくなりました。17基有った原発を2020年までに全て廃止すると決定しました。 2022年末の時点では、3基稼働していた様です。その内2基を2023年4月まで運転出来る様にしておく事になっています。

《課題 :ドイツの半導体メーカー》 ヨーロッパ諸国は半導体に力を入れて来なかったので、現在、種々の産業で半導体不足が問題になっています。近年、半導体の重要性に気付いて、EU全体で製造体制を発展させようとしています。

 ドイツには、半導体メーカーが①インフィニオン・テクノロジーズ、②カールツァイスSMT、③シルトロニックの3社が有ります。 インフィニオン・テクノロジーズは、2021年の半導体売上高が世界第10位でした。(日本の『キオクシア』とほぼ同じ売上高でした。) 他にエルモス(Elmos Semiconductor)と言う企業が有りますが、車用の照明(LED)を製造しています。

(注記 :ASML社) オランダにはエーエスエムエル(ASML)と言う半導体製造装置メーカーが有ります。露光装置の世界シェアが『80%以上』も有る様です。 然し、オランダには半導体メーカーが育っていません。 最新鋭の半導体工場を建設する為には、ASML社、日本とアメリカの企業から装置を購入する必要が有るのです。

《課題 :ヨーロッパのリチュウムイオン電池》 ヨーロッパ諸国はリチュウムイオン電池の製造もなおざりにして来ました。ヤット近年、リチュウムイオン電池工場が多数建設される様になって来ています。

 先行する中国は、リチュウムイオン電池に必要な地下資源の確保に、国家として取り組んでいます。周回遅れの様に思えるヨーロッパで、リチュウムイオン電池産業が発展する為には、各国が相当努力する必要が有ると私は見ています。

【ボッシュ :不思議な企業】
 ドイツには『ボッシュ(Bosch)』と言う、巨大な自動車関連部品などを製造する会社が有ります。日本にも『ボッシュ(株)』と言う子会社が有って、埼玉県や群馬県などに工場を所有しています。

 大昔、私は非常にユニークで素晴らしいボッシュ製品を購入した事が有り、その時・ボッシュ社について勉強しました。考えられない様な、ユニークな会社です。株式の92%を、慈善団体の『ロバート・ボッシュ財団』が所有して、配当金の大半を受け取っています。(従って、非上場会社です。)

 ロバート・ボッシュ財団には『議決権』が有りません。『ロバート・ボッシュ工業信託合資会社』と言う、『1%』しか株式を所有していない組織が有って、議決権の93%を保持する事になっています。従って、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社がボッシュ社の経営を行っています。経営理念は『長期的に社会貢献できる経営を行う』です。 (ボッシュ一族が『7%』所有していますが、原則として一族は経営に口出ししない事になっています。)

 毎年、巨額の金を研究開/開発に投資して→→新製品を上市して→→会社を発展させて来ました。ボッシュは、こういう経営体制を80年間も続けています。資本主義社会でもボッシュの様な企業が存続出来るのですね! 『目から鱗が落ちる』様に思いました。

 ロバート・ボッシュ財団は、所有する病院の運営、教育、国際協力などなどに配当金を使用しています。 

・・・ ボッシュとトヨタグループのデンソーの比較 ・・・
★ ボッシュの従業員数≒40万人(2021年)、デンソー≒16.8万人(2022年連結)
★ ボッシュの売上≒10.2兆円(2021年)、デンソー≒5.5兆円(2022年)

自動車業界 (その3)

2023-01-14 10:51:27 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、インドとアメリカの自動車業界について書きます。

 21世紀になって、インドの経済は発展し始めましたが、古い文化が残っていて経済発展の足枷になっている様に思います。それで、カースト制度等についても書いておきます。

【インド】
 インドの国土は中国の『35%』ですが、人口は中国とほぼ同じです。1991年から自由化政策を採用して、近年急激な経済成長を続けています。中間所得層が増えて、購買力も高くなって来ています。四輪車の潜在需要は大きいと私は予想しています。

 2020年度のバイクの生産台数は、1,835万台で世界一でした。インドはバイクの輸出国です。然し、四輪車の生産台数は少ないですが、(人件費が安い為か?)四輪車の価格が安いので輸出国です。 インドで最大の自動車会社は『マルチ・スズキ』で、日本のスズキの子会社です。

 インドで二番目の自動車会社のタタ・モーターズは、イギリスのジャガーとランドローバーを傘下に収め、韓国やスペインにも進出しています。(インドの企業は、少し成功すると、国内に投資しないで外国に進出する傾向が有ります。)

 インドは、大気汚染が極めて深刻で、電気自動車(EV)化が進むと予想されています。既に、非常に安価なEVが市販されています。

★ 国土面積≒328.7万km2
★ 人口≒13.8億人 ・・・2020年
★ 自動車 :生産≒ 440万台、 販売≒ 376万台、保有≒ 6,853万台 ・・・2020年
★ 自動車メーカー :マルチ・スズキ、タタ・モーターズ(Tata Motors)、マヒンドラ(Mahindra)、・・・

(余談 :牛肉と豚肉) インド人の80%はヒンドゥー教で、14%がイスラム教徒です。ヒンドゥー教は牛肉を、イスラム教徒は豚肉を食べられません。ヒンドゥー教は牛乳を飲んだり、乳製品を食べる事は許されています。 牛は屠殺(とさつ)して→→ヒンドゥー教が食べられないので→→輸出しています。・・・私には腑に落ちない風習の様に思います。

(余談 :カースト制度) 1950年に施行された憲法で『カースト制度』は禁止されていますが、現在でも存在しています。工業化が進んだ地域では急激にカースト制度が無視される様になるのでは?と思いますが、農村地域では簡単には無くならないのでは?と思われます。

 カースト制度はヒンドゥー教の考え方から生まれました。神の前では平等が基本のイスラム教徒でも、インドではカースト制度に近い社会慣習を採用しています。 インド陸軍の一部では、同じカーストで部隊を編成しています。

 カースト制度には2種類あります。江戸時代の『士農工商∔非人』に近いのが『ヴァルナ (種姓)』です。 人間を、バラモン(司祭階級)、クシャトリヤ(武士階級)、ヴァイシャ(庶民階級)、シュードラ(隷属民)、パーリヤ(不可触民)に分類する制度です。

 もう一つの身分制度が、『ジャーティー』で、職業(生業)の世襲制度です。例えば、大工の子は大工になって、大工の息子と娘しか結婚できず、大工同士しか一緒に食事出来無いと言う制度です。時代が経つにつれて→→細分化され→→『ジャーティー』は3,000程にもなっている様です。

 インドのカースト制度は、『ヴァルナ』と『ジャーティー』が両方適用されるので、私には良く理解出来ません! 例えば、農民は『ジャーティー』では『農民カースト』で、『ヴァルナ』では『シュードラ』です。 然し、土地持ちの農民は『クシャトリヤ』と主張している様です。

(余談 :王) 昔のインドは『藩王国』の集合体の様な国でした。現在でも、トンデモナイ富豪の『王(マハーラージャ)』が存在しています。

(余談 :英語と高等教育) インドには多種多様な言語が存在しています。 憲法では、公用語は『ヒンディー語』ですが、15年間は英語を第二公用語とすると規定していました。その後、無期限に延長されて現在も英語は第二公用語として使用されています。・・・私は、インドの紙幣を持っています。日本の紙幣には漢字とローマ字が印刷されていますが、インド紙幣には17の言語が印刷されています。

 インドには優秀な大学が沢山有りますが、英語で授業しています。インド人の英会話には訛りが有りますが、英語圏で十分通用する様です。卒業後に外国に出て行くケースが多いい様です。『インド工科大学』が有名ですが、国立の工学系大学・23校の総称です。日本では近年『人材不足』が問題になっていますが、「インド工科大学卒業生が国内で働き始めたら、インドの工業は一層発展する」と私は見ています。

(余談 :インドの紙幣) 私はインドに行った友人達からインドの紙幣を沢山貰ったので、今でも大切に保管しています。インドの紙幣はクシャクシャ、汚れていて、落書きが多く、黴菌が沢山付着している恐れが有るそうです。 (日本のATMの一部では、殺菌しているそうです。)

【アメリカ車】
 私が若かりし頃、アメリカの自動車業界には『ビッグスリー』と呼ばれる巨大企業が3社有りました。現在何とか頑張っているのは、ゼネラルモーターズ(GM)とフォードモーターの2社だけです。 (GMは2009年に倒産し→→アメリカ政府が支援して再建されましたが、現在も財務状況は厳しい様に思います。)

 アメリカは世界第二位の自動車生産国ですが、世界第一位の輸入国になってしまっています。ドルが世界の基軸通貨で無かったら、アメリカ人は今の様な豊かな暮らしが出来ない国家になってしまったのです。

❶ ゼネラルモーターズ(GM)
❷ フォードモーター
❸ クライスラー :現在はオランダに本社が有るステランティス N.V.の一部門になっている。
➍ アメリカン・モーターズ :1987年にクライスラーに吸収された。

【アメリカに有る自動車工場】
 アメリカには、勿論GM、フォード、テスラの工場が有りますが、日本やドイツの企業が沢山、アメリカに工場を持っています。アメリカの自動車生産台数には、これらの工場で生産された数が含まれています。

・・・ 日本とドイツのメーカーがアメリカに所有する工場 ・・・
★ トヨタ自動車 :ケンタッキー工場
★ トヨタ自動車とマツダ :アラバマ(?)工場
★ 日産自動車日産自動車 :デカード工場、キャントン工場、スマーナ工場
★ 本田技研工業 :メアリズビル工場、イースト・リッベルティ工場、アラバマ工場、ティッモンズビル工場、
★ フォルクスワーゲン :チャタヌーガ工場
★ メルセデスベンツ :バンス工場
★ BMW :スパータンバーグ工場

【テスラ社とマスク氏】
 テスラ社は、電子技師であったニコラ・テスラ(1856年~1943年)の名前を拝借して、2003年に設立された会社です。2009年にスポーツタイプの電気自動車『ロードスター』の製造を開始しました。太陽光発電所の建設なども手掛け、急成長しています。

 2008年にイーロン・マスク氏がCEO(最高経営責任者)になって経営しています。マスク氏が21.9%の株式を所有しています。テスラの株価が異常に高いので、マスク氏は世界一、二を争う長者になっているのです。

 私の独断と偏見で見たマスク氏は、『目立ちたがり屋の御天気屋さん』です。順風満帆の時は『それ行け!』と実力を発揮しますが、厳しい局面に向かうと『さじを投げてしまう』のでは?と危惧しています。

・・・ テスラ社の生産台数 ・・・
★ 2012年 :0.26万台
★ 2013年 :2.2万台
★ 2014年 :3.2万台
★ 2015年 :5.0万台
★ 2016年 :7.6万台
★ 2017年 :10.3万台
★ 2018年 :24.5万台
★ 2019年 :36.7万台
★ 2020年 :49.9万台 ・・・この年から黒字になった。
★ 2021年 :93.6万台
出典 :ポジテン『テスラの販売台数の推移と売上高・営業利益率・純利益の推移』・・・2022年9月22日

正月に働いた事が有りますか?

2023-01-07 12:02:18 | 人生
【はじめに】
 今回は、私の年末年始の記憶を書きます。

 私の管理している大阪の賃貸マンションに、30歳前後の男性が一人で住んでいます。入居する時「接客業です」と言っていました。9時頃に出掛けて→→22時頃に帰宅します。休みは木曜日だけで、年末年始は休み無しですから、年間310日以上働いています。

【正月の屋台】
 私は無神論者なので最近は初詣には行きません。子供が小さい頃は毎年行きました。子供にとっては、『屋台』は正月の楽しみの一つですね! 初詣の屋台は、宗教に関係なく楽しい/素晴らしい風習だと思います。

 ある屋台の前を通りかかると、「さっき一万円札を渡したのに、貴方は五千円札と間違えて釣りをくれた。僕が渡した一万円札には印が付いている。」と言う客がいました。私の目の前で、女性の店主が金を入れている木箱を開けて、印の付いた一万円札を探し始めました。木箱にビックリするほど沢山『札』が入っていました。屋台は儲かるんですね!

 印の付いた一万円札が見つかっても、釣り銭を間違えた証拠にはなりません。私は『詐欺』ではないのか?と疑ってしまいました。

【明治神宮→浅草→成田山】
 私は19歳頃に、東京の2室しか無い小さなアパートで、1年間ほど自炊した事が有ります。共同のトイレと炊事場が有りましたが、風呂は近くの銭湯に行く必要が有りました。出稼ぎ労働者達と肉体労働をしました。

 正月休みに何もする事が無かったので、大混雑すると言われていた東京の初詣を見に行く事にしました。31日の22時頃に出発して→→明治神宮の賽銭を投げ込む場所の前に0時頃に到達しました。

 当時、参道は一方通行でした。おぼろげな記憶ですが、原宿駅で下車して代々木駅の方に歩いたと思います。噂通り凄い人込みで、私の前に若い芸者と思われる着物姿の女性を二人連れた、和服の大店の旦那と思われる方が歩いていました。周りの人達が大きな声で旦那を冷やかすのです。旦那を目掛け蜜柑を投げる輩もいて、私の頭に当たった記憶が有ります。

 多分今でも同じだと思いますが、本殿の前に筵を敷いて、その手前に縄を張ったのが賽銭を投げ込む場所です。一番前まで行ける人は少なく、後ろの方から硬貨を投げていました。私は、どれだけ賽銭が集まるのか見たかったので、一番前まで無理して進みました。初詣が始まったばかりの時間でしたが、ビックリするほど沢山賽銭が入っていました。

 次に向かったのは浅草寺です→→その後、成田山新勝寺に行きました。途中、屋台で休憩して、朝食と昼食を頂きました。その後で川崎大師に向かう予定だったのですが、疲れてしまって帰路につきました。(雑踏の中を歩くのは疲れます!)

 アパートに帰って、牛乳を温めないでガブガブ飲みました。体が冷えていたので、酷い腹痛と下痢になって→→二日間寝て過ごしました。姉が、「お賽銭を入れなかったので罰が当たったのよ!」と言いました。

【藪入り(やぶいり)】
 私の父は1901年(明治34年)生まれです。尋常小学校を中退して、和歌山県・南部町の商店に丁稚奉公に入りました。その頃はまだ藪入り(やぶいり)が来るのを待っている子供や親がいたのです。藪入りは、『旧暦の1月16日』と『旧暦の7月16日』ですから、丁稚達は正月も働いたのでしょう!?

 藪入り以外に、月に何回か丁稚に休みが与えられた様です。休みの日、父は10kmほど歩いて田辺市の『辻の餅』と言う店に『おけし餅』を食べに行ったそうです。私が小さい頃、私を田辺市に連れて行くと、『辻の餅』に寄って『おけし餅』を御馳走してくれました。

 店の奥に10人程が座れる椅子が置いていて、何時も老齢の女将さんと父は世間話をしていました。女将さんが茶をだしてくれて、私は『おけし餅』を沢山食べました。私は今でも、田辺市に行ったら必ず『おけし餅』を買って帰ります。

(余談 :お盆) 浄土真宗では盆や法事にお餅を仏壇に供え、その餅を『おけそく』と呼ぶそうです。 田辺市では宗派に関係なく、盆に『おけし餅』を買って食べる様です。妻の実家が田辺市に有るので、私は盆には早起きして、『おけし餅』を買って来ました。未明から作ったら、追加は作らないので、早く行かないと売り切れてしまうのです。段々・この習慣は下火になって来たので、今は午後からでも買えるかも知れません。

(余談 :店は正月二日から) 私が子供の頃、故郷の龍神村には商店が20軒以上有ったと思います。現金商売では無くて『掛売』でしたから、12月の末には店主は集金で大忙しでした。疲れてしまって、多分どの店も元日は『寝正月』だったのだと思います。正月二日から店は開いていた様に記憶しています。

 街の丁稚を使っていた大きな店も、元日は休みだったと思います。丁稚達も『寝正月』だったのでしょう!

 父は山林労務者を10人以上雇っていました。賃金は盆前と12月の末に支払っていました。その金で商店の支払いをしたのです。

【年末年始の賃金】
 製鉄所や製紙工場は24時間の連続操業をしています。機械のメンテナンスや改造工事は、一般に運転を止める正月、お盆、ゴールデンウイークの時期に行います。

 正月工事の時は、昔から全国的に特別な日当が支払われました。31日~2日は3倍、30日と3日は2倍、29日と4日は1.5倍だったと思います。 工事費が嵩むので、正月工事は段々と少なくなって来ました。

 私は製紙機械の設計開発に通算9年間ほど携わりました。富士市の製紙工場で3回正月工事の現場監督をやった事が有ります。正月に営業しているビジネスホテルや安宿が少なくなっていました。現役か元か忘れましたが、市会議員が銭湯を相続して、隣接地にビジネスホテルを建てていました。ホテルのロビーから直接、銭湯の脱衣所に入れる様になっていました。

 このビジネスホテルは料理が美味しくて、リーズナブルな料金だったので、普通の時はなかなか予約出来ませんでしたが、年末年始はガラガラでした。そんな分けで、私は3回の正月工事の時、利用させてもらいました。

 年末年始は従業員の多くを休ませて、配膳を御主人がされました。31日~3日まで通常の2倍ほど高い料金でした。 但し、夕食には毎回大きな伊勢海老を一尾(いちび)焼いた料理が出ました。最初の二日は幸せな気分でしたが、4日目になると普通の料理が食べたくなりました。 ご主人は、何時も私の傍に座って、「大赤字です!」と言っていました。

 会社は12月29日~1月5日まで休みでした。1月2日か3日に社長が『10万円』入った紙袋を持って工事現場に来て、各自に渡しました。

 現場作業者は、休日手当、残業手当が貰えた上に『10万円』頂けるので喜んでいました。 設計担当者は、出勤した事になっていなかったので、休日手当も残業手当も出ないのです。通常の出張費は支給してもらいましたが、ビジネスホテル代は2倍以上もして、「間尺に合わない!」と思いました。 勿論、会社は設計の人件費を顧客に請求していました。

 正月休みが全く無いと、「区切りの無い、何か可笑しい!一年」の様に思えました。