これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

自動車業界 (その5)

2023-01-28 10:06:34 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、自動車業界についての最終稿です。ドイツについては前回書きましたので、今回はその他のヨーロッパ諸国の自動車業界について書きました。

【フランスとルノー】
 第二次世界大戦でフランスの工業は壊滅的な被害を受けました。ドゴール大統領がルノーを国営化して→→1年間ほどで立ち直り→→ヨーロッパを代表する自動車会社になりました。技術的に優れた車種を次々に上市しました。1979年には、アメリカで第4位だったアメリカン・モーターズを買収しました。アメリカでの事業がうまく行かず、本体の経営も傾いてきて、1987年にアメリカン・モーターズをクライスラーに売却しました。

 1990年に、ルノーは国営企業から株式会社になり→→1996年に民営化を完了しました。(然し、現在でもフランス政府が株式の15%を保有しています。)

 1999年に経営不振に陥っていた日産自動車を傘下に収めました。ルノーが日産の株式の『44.4%』を、日産がルノーの『15%』を保有し、ルノーからカルロス・ゴーン氏が副社長(COO)として派遣されました。(たったの4年間で)2003年には約2兆円も有った有利子負債を返済して→→日産は危機を脱出しました。

 然し、2019年には、ルノーが『純損益が80億800万ユーロ』、日産が『総額6,712億円の赤字』になりました。今後、両社がどうなって行くのか目が離せません。

(余談 :日産の問題) 日本の企業には、大なり小なり『派閥人事』の問題が有ります。経営が順調な時は、重役達が派閥闘争を楽しんでいても会社は何とか維持出来ますが、景気が悪化してきたら派閥闘争を中断して、一致団結して対策を練り/強力に事に当たる必要が有ります。

 日産の経営が悪化したのは、バブル崩壊(1991年~93年)が引き金でしたが、派閥闘争も原因だったと思います。 日産の派閥闘争の歴史とゴーン氏の問題は、井上久男氏の次の記事に詳しく書かれています。(インターネットで読めます。)

 私は、重役達の派閥闘争の弊害を身をもって体験しました。井上久男氏の記事からは、中間管理職や平社員の悲惨な状況が伝わってきません! 「派閥闘争は『パワハラ』と同等か?それ以上の犯罪だ!」と私は思います。

❶ 『独裁、内紛、権力闘争……日産を苦しめてきた「歴史の呪縛」』
❷ 『ゴーンという「怪物」を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る』

・・・ フランスに本社の有る自動車会社 ・・・
★ ルノー
★ パナール ジェパナール ジェネラル ディフェンス :軍用車両を製造
▲ ルノー・トラック :ボルボグループ ・・・現在はバスを製造
▲ シトロエン :ステランティスの子会社
▲ プジョー  :ステランティスの子会社
▲ DSオートモビルズ :ステランティスの子会社

【イタリア】
 イタリアで最大の自動車メーカーは、フィアット(従業員数≒214,000人;2014年)です。フィアットは、アルファロメオ、ランチア、マセラティ、アバルトを次々に傘下に収めました。 フィアットは、現在はステランティスグループになっています。

 現在純粋なイタリアの自動車メーカーは、フェラーリとトラックやバスを製造するイヴェコしか有りません。

・・・ イタリアに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フェラーリ :従業員数≒2,850人(2014年)
★ イヴェコ  :トラック、バス ;従業員数≒25,000人
★ パガーニ・アウトモビリ :従業員数60人ほどの小さな会社
▲ ステランティスグループ :フィアット、アルファロメオ(フィアットの傘下) 、ランチア(フィアットの傘下)、マセラティ(フィアットの傘下)、アバルト(フィアットの傘下)
▲ フォルクスワーゲングループ :ランボルギーニ
▲ マヒンドラグループ(インド) :ピニンファリーナ

【スウェーデン】
 ボルボは1999年に乗用車部門をフォードに売却し→→フォードが2010年に中国の浙江吉利控股集団に売却して→→乗用車部門は『ボルボ・カー・コーポレイション』になっています。 現在、ボルボ・カー・コーポレイションは電気自動車(EV)に注力しています。多分、リチュウムイオン電池は中国から調達する計画だと思われます。

 スウェーデンは昔から、ABボルボ社とスカニア社がトラックを沢山生産しています。

(余談 :スウェーデンの電力事情) スウェーデンは水力発電≒40%、原子力発電≒40%、風力発電≒10%、バイオマス・廃棄物発電≒7%と極めて珍しい国です。化石燃料を用いた発電は『1%』ほどしか有りませんでした。今月(2023年1月)原子力発電に関する制限を緩和する法案が提出されました。現在、スウェーデンの電気料金は非常に安いので、すでに電気自動車が沢山走っている様です。

・・・ スウェーデンに本社の有る自動車メーカー ・・・
★ ABボルボ :トラック、バス、建設機械、船舶用エンジン、航空宇宙 
★ ボルボ・カー・コーポレイション :乗用車 ;2010年から中国の浙江吉利控股集団 が株式の『82%』を握っている。
★ ケーニグセグ :1993年設立のスーパーカーのメーカー ・・・少量生産
★ スカニア :トラック、バス、産業用ディーゼルエンジン ;フォルクスワーゲングループ

(余談 :ボルボ車の思い出) 1995年頃、私が所属していた部に40歳前後の人格が素晴らしい男性社員がいました。彼はボルボの中古車を数年毎に乗り換えていました。「ボルボ車が特に好きではないが、ボルボの中古車は格安の値段で買えるから」と言っていました。時々乗せて貰ったのですが、夏の暑い日はエアコンを使用出来ませんでした。現在は改善されて、真夏でもエアコンは使用出来る様です。

【オランダとステランティス】
 オランダには自動車の量産企業は『ネッドカー』1社だけ有ります。一時期三菱自動車の子会社でしたが、現在はオランダの企業『VDL』の傘下に入っています。

 2021年1月に、フランス、アメリカ及びイタリアのメーカーが対等合併して『ステランティス』と言う巨大企業が誕生しました。その本社はオランダのアムステルダムに有ります。『ステランティス』は会社の名前で、製造する車のブランド名は昔のままです。 ジープ、クライスラー、アルファロメオ、シトロエン、プジョー、・・・などなど。

 (日本とドイツの自動車メーカーに対抗出来る様に、)ジリ貧に落ちいる恐れの有った会社が『大同団結』した分けですが、「電気自動車(EV)化にうまく対応出来るのか?」私にとっては非常に興味深いです。

【イギリス】
 イギリスの工業分野は、1960年代からジリ貧状態が続いています。典型的なのは、自動車産業です。「2020年にEUを離脱しましたから、今後益々イギリスの自動車産業は衰退するのでは?」と私は予想しています。

 イギリスには沢山自動車メーカーが有りましたが、その多くは外国企業の傘下に入り、現在はアストンマーティン社だけがイギリスに本社を置く生粋のイギリスのメーカーなっています。 有名なロールスロイスはジェットエンジン等の部門と自動車部門に分割され、自動車部門はBMWの傘下に入っています。

 イギリスの自動車産業の栄枯盛衰(えいこせいすい)は、日本の反面教師としては素晴らしいです。 日本も容姿や血筋でボンクラ議員に投票し続けたら、産業が衰退してしまいます! 志を高く持った、世情に通じた、勉強家を選んで投票しましょう!

❶ アストンマーティン :高級スポーツカーメーカー ・・・従業員数≒1,250人(2010年)

・・・ 外国の企業に吸収された等のイギリスの自動車会社 ・・・
★ ジャガー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ランドローバー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ミニ :かってはローバーの一部門→→2001年からBMWが製造している。
★ ロールス・ロイス・モーター・カーズ :BMWの傘下
★ ベントレー :1998年からフォルクスワーゲングループの傘下
★ ロータス・カーズ :吉利汽車が株式の51%を保有している。

(余談 :ジャガー) 私は、1986年に神戸に家を建てました。近所に洒落た洋館が有って、広い庭にピカピカに磨いたジャガーMk22.4サルーンを駐車していました。小豆色で、私好みのスタイルだったので、休日に散歩する時は、必ず前を通ってジャガーを眺めました。2000年頃にケーブルテレビと契約しました。そして、『主任警部モース』を見たのですが、モースの乗っていた車は形も色も近所の車と同じでした。2010年頃まで、大事に乗っていた様でした。

【ロシア】
 ロシアを『自動車』と言う視点から見ると、『発展途上国』に分類されると思います。半導体産業が発展していません、エアーバックも国内では製造されていません。欧米諸国の経済制裁が続く限り、1980年代の安全性の低い自動車しか製造出来ないと予想します。

 ロシアは国土面積が(日本の45倍)世界第一位です。人口は日本の1.14倍有ります。乗用車の保有数は日本の90%ですが、トラック・バスの保有数は57%ほどしか有りません。鉄道で物資を運んでいる国です。 従って、ウクライナ軍が鉄道路線を破壊したら、前線に物資を送る事が難しくなってしまうと思われます。

(余談 :ロシアの工業力) 私は大昔、エアーバックの火薬を収納する『インフレーター』を1年間ほど掛けて開発しました。ロシアが私をスカウトしたらインフレーターを製造出来る様になると思われますか? 絶対に不可能です! 冷間鍛造と機械加工の技術者/ノウハウ、加工機械が不可欠ですが、ロシア国内では調達出来ません。多分、プーチン氏はロシアの工業力を把握出来ていないと思われます。

★ 国土面積 :ロシア≒17,09万km2、アメリカ≒983万km2、中国≒948万km2、日本≒38万km2
★ 人口 :ロシア≒14,202万人、アメリカ≒33,481万人、中国≒141,178万人、日本≒12,421万人
出典 :ウイキペディア、人口は2022年時点

★ 乗用車保有数 :ロシア≒5,600万台、アメリカ≒11,626万台、中国≒22,691万台、日本≒6,219万台
★ トラック・バス保有数 :ロシア≒923万台、アメリカ≒17,278万台、中国≒4,648万台、日本≒1,627万台
出典 :日本自動車工業会『世界各国の四輪車保有台数 (2020年末現在)』