AI (ええ愛・Atelier Ichien)

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上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進みなさい 人の心に灯をともす 5435より 写真はMさんからいただ...

2023年08月13日 | 
【上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進みなさい】5435



岡本彰夫(あきお)氏の心に響く言葉より…


広島県福山市の医師会に依頼され、講演に赴いた。

和気藹々の裡(うち)に終了し、遅い夕食を頂戴して心地よく宿の部屋へ退散しようとした際、二次会のお誘いを受けた。

快くお受けして地下のバーへと伺った。


何でもここのバーテンダーは女性で、全国の競(きそ)いで金賞を得た人らしい。

立ち居振る舞いといい、当を得た説明の内容といい、申し分なかった。

謝意を述べ、二言三言と言葉を交すうちにどういう経緯でそうなったのかはわからないが 突然彼女が嘆き出した。


金賞は頂けるが、どうしても最高位のグランプリには至らない。

二日したら京都で大会があるので、心が落ち着かないのだという。

そこで私は、コースターにこんな歌を書いて彼女に贈呈した。


「手をうてば鯉(こい)は餌(え)と聞き、鳥は逃げ、女中は茶と聞く、猿沢池(さるさわのいけ)」(多川俊映・しゅんえい/唯識十章)


これは古代インドの深層心理学というべき「唯識論」の「唯識所変(しょへん)」(聞く立場によってものである。 解釈が異なる)のたとえを詠んだ、興福寺の古歌(こか)として教えてもらった歌である。

猿沢の池の畔(ほとり)でポンポンと手をうつ、これを聞いて、いつも餌の事ばかり考えている鯉は慌てて池畔(ちはん)に集まり、鳥は鉄砲と聞き間違えて逃げて行く。

旅籠(はたご)の女中さんは、お客が呼べばすぐ茶を持って行かねばならないから、ポンポンと耳にすると茶を持って走る。

しかし真実はただ畔(ほとり)で手をうっただけなのだ。


つまり賞を得られねばどうしよう、もしも落ちたら恥をかく、福山へ帰ってどう言い訳をしようなどと考えるから、萎縮して実力を出せないだけなのだ。

だから、この歌をしっかりと胸に刻んで臨みなさい。

そして、上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進みなさい。

これとこれを調合したら、このカクテルが出来るという事にとどまらず、お客さんが寂しそうなら楽しくなるように、悲しそうなら嬉しくなるようなバーテンダーになって下さいと告げて別れた。


二日経って彼女から電話が入った。

見事最高賞を授かったという。

しかもシェーカーを振っている姿が素晴らしいとの評価を受けたらしい。

心さえ変われば、人生は回転して行くものである。


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枡野俊明氏の『競争からちょっと離れると、人生はうまくいく /三笠書房』という本の中にこんな文章があった。


『「勝ちたい」「負けたくない」という思いをいったんあきらめる。

少しのあいだ脇に置いてみる。

ちょっとそこから離れてみる。

すると、必ず、気づくこと、見えてくるものがあるはずです。

道元禅師の言葉に、「放てば手にみてり」というものがあります。

欲や執着を手放したとき、本当に大切なものが手に入る、ということです。』



「どうしても勝ちたい」、「優勝したい」という執着を手放す事。 

心を縛るものから解放されると、肩の力がストンと抜ける。

そして、自分のことではなく、お客様に喜んでもらうことだけを考える。


上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進むことができる人でありたい。





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