実に骨太である。政府の経済財政諮問会議にて、高齢者の定義を見直す意見が出された事を受け、旧Twitterは大賑わいである。65歳以上を高齢者とする現行基準も世界的に見れば相当異常なのだが、健康的な生活習慣、医療へのアクセスのし易さの恩恵で70代でもお達者な方が増えたのも事実である。身体的衰えは否めないものの、社会参加と云う大義名分で口先介入するだけのバイタリティを持った人も少なくない。政府としても所得税を納める人が増え年金を支給する人が減るのは大歓迎だろう。個人的には統計的不整合が発生するので高齢者の定義変更に賛成出来ないし、そこを弄らなくても実務上の問題は無いと思う。課題は筋肉弱者でも活躍出来る環境作りであろう。パワードスーツを貸与し簡単な軽作業程度なら難なくこなせる様にすれば、社会参加の幅も広がるだろう。尤もそうまでして働きたい人がどれだけ居るのかは分からないのであり、そこら辺の精査は必要なのである。
間違っていないだけに厄介である。GAIを搭載したGoogle検索のプレビュー版の珍回答が一部地域で話題である。「チーズがピザにくっつかない」と云う質問に対し、「無害な接着剤をピザソースに混ぜる」と云うネットミームを返したそうである。要件は満たしているので誤りとするのは可哀想であるが、採用出来る解決法では無いことも明らかである。この手の明文化されていない共通認識をどこまで織り込めるかが今後の課題であろう。チーズ専用接着剤が開発されて共通認識をアップデートしなければならない可能性も含めてである。国や地域によってそれらは大きく異なる場合も有るのでローカライズも必要となろう。しかしLLMに「当たり前の事」を学習させるのは相当の労力を要するだろうし、人類がスットンキョウな質問をしてくるのを防ぐ手段も無い。いずれにせよ回答の妥当性を判断する責任は人類が負うべきなのであり、AIのご託宣に従えば万事解決とはならないのである。
まあそうだよね。政府の知的財産推進計画2024の原案が示されたらしい。その中で「AIで錬成したものであっても、発明は自然人に帰属する」と明記されているそうである。将来AIが特許申請まで自動化したら怒涛の出願で審査がパンクする危険性が有るからかも知れない。また、エクセレントな特許が莫大な利益を生み出した時、「その特許はワシが育てた」とAI提供企業が訴えてくるのを予防する意図も有るのだろう。アイディア出しは手伝ってもらったとしても、少しは人類も頭を使いなさいと云うメッセージとも読み取れる。AIは創薬分野での活躍が期待されており、使わなければ国際競争で後れを取る恐れも有る。政府が推進と規制と云う結局どっちなんだよ的な動きを見せているのも、その潜在能力を高く評価しているからであると、好意的に解釈したい。個人的にはAIが発明者になる未来も見てみたいのであるが、その独創性を人類が理解出来るかまでは分からないのである。
自分だったら何を残すか。40秒ぐらい熟慮する良い機会かも知れない。独Machdyne社が、200年データを保持可能なUSBメモリを販売している。大抵のデジタル記憶装置、特にフラッシュメモリの類は10年持てば良い方だろう。HDDの様な磁気方式ならもうちょっと頑張れそうだし、保管に注意を払えば100年は大丈夫と謳った光学方式の製品も有るが、USBメモリでそれらを超える記録性能を誇ると云うのだから大きく出たものである。200年後にはどうせ生きていないから言ったもの勝ちと云う見方もある。ただし記憶容量は8KByte、半角カナ8192文字である。圧縮ツールを使えば多少は増やせるだろうが、それにも限度が有ろう。29.95ユーロとお買い得なんだから文句を言えた筋合いでは無いが、せめて写真ぐらいは収められないものかと思う。200年後の子孫に埋蔵金のありかを示した暗号を残す、と云う迷惑千万な悪戯以外の使い道が思い付かないが、USB規格がその頃も使えるのかまでは分からないのである。
実用化出来れば普及に弾みが付くであろう。進境著しいAIであるが、アシスタント役としてはまだまだ力不足である。詳細かつ具体的に指示を与えればそれなりに満足のいく答えを返してくれるが、誰しもが四角四面だとは限らない。その溝を埋める為には「察する力」が必要なのである。「週末までに卵が無くなりそうだったら2、3個買っておいて」と云う指示を良しなに解釈出来る様にならねばならない。過去の消費傾向から週末時点での在庫を予測し購買動向から2個か3個を選択し要求しているのはダチョウの卵では無い事を推測出来なくては、こう云う適当なリクエストに応える事は不可能だろう。しかも買ったら買ったで「セール品じゃなかった」と不満を言われる事も有るのである。それらを全て弁えた察する力を手にしたAIなら私達の強力な相棒になってくれると思うのだが、そこまでこちらの胸の内を見透かされるのも気持ち悪いのであり、力加減が難しいのである。