時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

松竹伸幸氏について

2013-08-17 21:44:47 | 反共左翼
共産党は党員に対して党の見解を順守するように定める民主集中制
という制度を採用している。これは数回(時には数十回)にも及ぶ
議論を重ねた上で決定された事項は守りましょう、守らなければ
厳罰に処しますというもので、反共主義者はこれを嬉々として攻撃
するのだが、結果として個人として問題がある人間でも党員である間は
割とまともな意見が言えるようになる長所もあったりする。


さて、今回とりあげる松竹伸幸氏は以前は共産党の護憲派議員として
活躍したのだが、ある時期を境に党とのブレが生じ、結果的に
事実上の除籍にあっている方である。以下の引用は彼が議員だった時の
党の紹介文である。


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日本の平和は軍事偏重では保たれない、アジアの平和の流れに合流すべきだ―
松竹さんは、この立場から、非核・非同盟の外交政策を積極的に提唱。

昨年2月、沖縄基地問題で世界への「訴え」を発表したときも、
何回も沖縄を訪れて、被害者の話を聞き、中心的な役割をはたしました。

ttp://matinofuruhonya.blog.fc2.com/blog-entry-399.html

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なんのことはない、これは共産党が以前から一貫して主張してきた
ことであって、別に松竹が初めて唱えたことではない。

で、この松竹氏、今は憲法論や外交論を巡って党と対立し、
今年からかもがわ出版の編集長になっているそうなのだが、
彼が現在さかんに主張しているのは軍の容認である。


普通は除籍されることで組織に左右されない自由な意見が
述べられるはずなのだが、どういうわけだか共産党の除名に
あった人間は軒並み右傾化する。

軽い程度なら無関心という形での、保守派へ対する無言のエールで
済んでいるが、セクハラでクビにされた超カッコ悪い爺さんの
筆坂氏に至っては産経新聞に登場して改憲論をのたまっている有様である。

松竹氏も共産党と疎遠になったならば今こそ、
尖閣諸島や北方領土が日本の領土だというのは無理があるとハッキリ
言ってやればいいのに、領土を守るためには自衛隊が必要だと
なんだか共産党と仲が悪くなるのも納得だなーと思う主張をしている。

はっきり言って、「自衛」といいつつ実際には「軍隊」であるから
ヤバいんだという話なのに、自分の国は自分で守るといった
本末転倒な話をしていて、要するに「自衛隊」という名の軍隊を
彼は必要なものだと語っているのである。

こういう右にも左にも喜ばれそうな内容を書いて
その実、右傾化するという姑息な戦法は伊勢崎氏のそれに似ていて
実に利口だと思う。筆者は前々からこの方の領土論はおかしいと
思っていたので、こんな人が党にいるのは汚点だよなと考えていたのだが、
今は党と無関係らしいので、すごく安心した。

ただ、かもがわ出版で編集長を務めているとのことなので、
この方の場合は自発的に離党したようだが、同時代社のように
犬猿の仲になり、せっかく良書を多く出版しているかもがわ出版が
ただの反共左翼出版に変貌してしまわないかと少々不安でもある。

最後に彼の主張に対する、ある松竹ファンのコメントを
引用して、反共(=戦後)左翼の問題点にふれていきたい。

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私の愛読しているブログの一つ「超左翼おじさんの挑戦」は、
ブログ主の松竹さんがかもがわ書店の編集長に就任されることから、
その役割を終え、新たな冒険の旅に出ることとなりました。

とても参考になるブログでした。
今後一層のご活躍を期待しております。

その「超左翼」のお名前の通り、
いわゆる「左翼」の範疇に納まろうとしない姿勢に常に共感していました。


左翼であれば増税には反対しなければならない。

左翼であれば戦争には反対しなければならない。

左翼であれば領土なんて関係ないとうそぶかなければならない。

左翼であれば自衛隊は廃止と叫ばなければならない。

そういう思い込みや貧困な哲学をいかにして克服すればよいのか。

そのヒントは左翼の豊かな言葉のなかにこそある!
それを地でいく貴重なブログでした。

ttp://wa2zoo.blog8.fc2.com/blog-entry-540.html
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とまぁ、こんな文章なのだが、はっきりいって
増税反対、戦争反対、自衛隊廃止を主張するのが
左翼のアイデンティティというか存在理由ではないのか?

増税に反対せず、戦争に反対せず、自衛隊にも意見しないなら
わざわざ劣勢の左翼に与さず右翼になればいいではないか。

というか、そういう左翼は左翼ともはや呼べないのではないのだろうか?
実際、こういう軍隊の必要性を語る人間は
自分の立場を「リベラル」というずいぶんと曖昧な言葉で粉飾している。

何度も言っているが、こういう右翼と大差ない意見しかいわない
左翼というのは、右翼にとって恰好の攻撃の的であり、
右翼の主張を正当化させる駒にしかならない。いい加減気づけよと思う。

私は、北朝鮮(より正確にいえば総連)や共産党のような
左翼にすらバッシングされているマイノリティの側に立って
意見を掲げることこそが本来の左翼だと考えている。


今の日本の出版社で左翼らしい左翼は高文研やスペース伽耶、
新日本出版社、大月書店、昭和堂、桜井書店、自治体研究所、
かもがわ出版、学習の友社等々といったところで、数が少なくなっている。

こうして列挙すると結構あるように見えるが、平凡社とか筑摩書房、
みすず書房、お茶の水書房、岩波書店といった高名な学術出版社すら
軒並み反共左翼なのだから、本当に現在の日本で大衆に抗う意見を
述べる度胸のあるマスメディアは絶滅危惧種なのである。


戦前の治安維持法の時代から
この国において朝鮮人と共産主義者は徹底的に弾圧を受けてきた。
それは国家だけでなく大衆がこぞって参加した差別だった。

このシステムが戦後の冷戦体制で克服されずに今日まで来ている。
だから、左翼と称している連中も基本的にはこの二者については
本当に冷たい言葉を平然と浴びせてきている。

結局のところ、彼らは自分のことしか考えていないのだから
本質としては右翼と大差ない。信仰対象が異なるだけだ。

こういう国家主義的な左翼が同じく国家主義的な右翼と
手を取り合っているのが現状の日本であり、そういう有様の中、
上記の出版社は本当に頑張っていると思う。その中の一つに
松竹氏が高いポジションの職に就いたのは正直ショックで、
また貴重な出版社がつぶれてしまったなと思ってしまった。

戦後左翼の脆弱性について

2013-08-17 21:01:57 | 反共左翼
東大の政治学者の姜尚中教授について次のような評価がある。

http://watashinim.exblog.jp/10055773
http://toriton.blog2.fc2.com/blog-entry-171.html

要するに、相手を見て意見をコロコロ変えているということが
上の記事からよくわかると思う。

筆者は姜教授に恨みはないけれど(こんなんでも政治学者に
なれるんだなといった驚きはあるけれど)、とかく戦後の左翼、
特に最近顕著になっている左翼知識人は、相手を見て論調を
微調整できる大変器用な御仁が多い気がする。

前の記事に挙げたNHKスペシャルに登場した面々は
いずれも保守派と一緒になって活動していたりするのだが、
ほとんどの人間はその矛盾を指摘しないのだから、
そのコミュニケーション能力の高さには感服してしまう。

あんまり言いたくはないのだが、今の左翼は
反原発を強調するわりには宮城などの津波の被害にあった
地域の復興にそれほど熱をこめて話さなかったり、国防や
憲法よりも雇用問題をどうにかしなければならないのに
それにも無頓着だったりと、わざとやってんのかと言いたくなる
ほど、一般庶民と問題意識が共有できていない。それじゃいかんだろう
と思うのである。

しかも、その時々の状況で自分の主張を簡単に曲げてしまうし、
柄谷行人や吉本隆明など、戦後左翼の巨人が天皇制を支持したりと
本質としては国家主義者がスタンダードを占めてきた。

この点を克服しなければ、より分かりやすい言葉を用意し、
より多くの権力者をしたがい(あるいは屈している)右翼には
決して勝てないだろう。

8月15日のNHKスペシャルについて

2013-08-17 20:39:27 | マスコミ批判
数年前、NHKが安部晋三に簡単に屈服して
慰安婦特集の内容を改ざんしてしまってから、いよいよもって
このテレビ局は民営とは名ばかりの国営テレビだなと思っていたのだが、
先日の終戦記念日に放送された安全保障の是非を問う討論会には正直驚かされた。


こんなにあからさまな出来レースもないからである。

まず、出演者が岡本行夫、半藤一利、伊勢崎賢治、
土井香苗、宇野常寛と狙ったかのような顔揃いで、
この中には浅井基文氏や梅林宏道氏、大西広氏のような
近年の中国や北朝鮮といった仮想敵国に対する嵐のような
バッシングとデマゴーグスに反対意見を唱える人間が一人もない。

要するに、反北朝鮮で固められていて、
北朝鮮にも言い分があるんじゃないの?とか
北朝鮮に対する日本の報道はおかしいよと言う人は
初めから除外されているのである。

そういうわけだから、中国や北朝鮮は危険だという認識を
前提に議論が進むわけで、当然、国を守るためには軍事化と
同盟強化はやむを得ないという、てめぇら自民党の回し者か
と問いかけたくなる方向へ進んでいったのである。


正直、旧ソ連の兵器を使いまわししている北朝鮮と
最新鋭の軍艦と通常兵器で装備しているアメリカや日本の
どっちが危険かわからないなんてことはないだろう。

特にアメリカは普天間基地の移転にもの申しただけで、
強硬態度を取ってきた国で、怪しいという理由だけで
イラクにクラスター爆弾を投下した国である。

沖縄那覇市の市長を務めた瀬長亀次郎氏は、
沖縄の占領統治は日本がアメリカに反旗を翻したさいの
戦略拠点になっていたと回顧している。

つまり、日米安保同盟というのは、アメリカに攻撃されないために
奴隷契約を結んでいるものであるのだが、そういう意見は終始なかった。


そういう小さなコップの中で繰り広げられる舌戦が
はたして有益になるかと考えると非常に怪しいものである。


私は以前このブログで北朝鮮の領海ギリギリの地域で
アメリカと韓国が20万以上の大群で、しかも核爆撃可能な
最新戦闘機をもっての軍事演習をしており、何だかんだで
結局、人工衛星を飛ばしただけの北朝鮮と比べると、よっぽど
こちら側のほうが物騒じゃないかと主張した。

今月の6日、つまり8月6日の原爆の日に海上自衛隊は
「いずも」という旧日本海軍の軍艦と同名の戦艦の進水式を行った。

これを日本は「護衛艦」と称しているが、この戦艦は
英国、イタリア、スペインの一部現役空母よりも大きく、
ヘリ14機が搭載可能で、その気になれば戦闘機の搭載も可能だ。

しかも進水式では旧日本軍が使用した旗、旭日旗が掲げられたのである。
これで平和の国、ニッポンなどと言われて信じる国がどこにある?


筆者と立場は異なりますが参考になる情報が載っているので一応。
ttp://ameblo.jp/sniper1968/entry-11587665287.html


本来なら、こういう前提の認識に対して異議を唱えることが
必要であるはずなのに、中国危険、北朝鮮悪魔、さぁどうする?
といった議論なのである。そういう問いかけなら自然と答えは
軍備拡張や同盟強化を考える人が出てくるに決まってる。

アンケート調査では相手に自分が望むような答えを選ばせる
問いかけ(例えば、戦争にどちらかといえば反対ですか、
それとも絶対に賛成ですかといえば、答えは自ずと前者になる)
はご法度なのに、よりによって敗戦記念日にそういう番組をやるのが
仮にもプロのジャーナリズムを気取っている連中のすることか?

とまぁ、私に言わせれば露骨なやらせ番組だったのだが、
こういう番組を極右が見ると全く別の評価になるらしい。

ttp://omoixtukiritekitou.blog79.fc2.com/blog-entry-2124.html

ブログのデザインからしてネット右翼の雰囲気を醸し出しているが、
この人の面白いコメントが、岩田温専任講師(こんな奴でも専任講師
になれるんですね。本当に大学って保守思想には甘甘だなぁ)だけを
保守派に入れていること。対北朝鮮政策を考えれば、
ここにいる連中は全員、保守派なんだけどな。


一応パネラーを紹介すると、岡本行夫は元外交官で
バリバリの従米保守、半藤一利は文芸春秋の編集長を務め、
その後取締役になった作家だが、彼は基本的に昭和は悪いが
明治は良いという典型的な司馬史観の持ち主で、大日本帝国自体に
問題があったという基本的な事実を認知していない。

伊勢崎賢治は平和のために軍が必要なんだと語っているし、
土井香苗はシリアやリビア、北朝鮮といった途上国への経済制裁や政治的圧力を
全力で支持していて、宇野常寛は気鋭の保守派論客と騒がれているが、元々は
ただのヲタクで文芸評論で大賞を獲ったのをきっかけに出しゃばっている男だ。
ついでにいえば、こいつは中曽根の写真を自分のブログに飾っていたりする。


・・・・こう書くと、本当にろくでもないやつばっかりだなぁ(汗
この人選をした奴のセンスに脱帽するぜ。


まぁ、脱線してしまったのだけれども、上に紹介したネトウヨの
意見はどうでもいいんだけれども、やっぱり半藤や土井のような
連中は今の保守派にとっては恰好のネタなのである。


一見すると議論しているように見えるのだが、
実際には勝てる相手を選んでゲームをしているのだ。

マリオで言えば、ファイアでなければ倒せないトゲゾーやゲッソー
ではなくてクリボー・ノコノコを呼んできているのである。

橋下徹と山口二郎の「討論」の時にも感じたのだが、
反共左翼(基本的には反共なので、場合によっては簡単に
保守派と同調してしまう左翼)って共産党系の論客を排除する
割には対抗勢力としては役不足に感じてならない。

共産党も領土問題に関しては竹島は植民地問題として
解決する、尖閣・北方領土は自国のもの(これは70年代以前から
一貫してこう主張していた)という態度をとっているので、
かならずしも反発しているわけではないが、少なくとも安全保障に
関しては、現在の日米の上下関係を踏まえれば、米国の侵略戦争に
参加するのは必定なので断固反対という立場を取っている。
防衛に関しては和平外交と民間支援によって
各国との平和友好関係の構築を軸にして考えている。


それに比べると半藤氏をはじめとした反共(=戦後)左翼は
「日本が危なくなった時にどうするか」といった議題の立て方自体が
問題で「日本が危なくならないためにどうするか」といった議題に
しろとすら言わないのである。要するに、この討論会の欺瞞的な
ものは、予防策と緊急策を混同している点にあり、我々がまず
話さなければならないのは予防策なのだと言ってやればいいのに、
それができないのである。

「よその国が攻めてきたらどうするの?」じゃなくて
「よその国が攻めさせないためにはどうするの?」としなければいけないと
 はっきり言えないあたりが本当に問題だなと思わずにはいられない。


 よその国が攻めてくるならば、軍備の拡張と軍事同盟の強化以外に
 考えれないだろう。だが、攻めさせないならば、外交による
 友好関係の構築とか、日本の経済力を活性化させて国際経済上
 混乱を起こさせてはならない場所にさせるとか色々考えられるわけだ。

 その点で考えれば、安倍の靖国外交や麻生のナチス発言など、
 他国に脅しをかける以外の何物でもなく、そういう日ごろの行いを
 改めさせるのが一番基本的かつ確実な安全保障になるのである。

 私は軍事問題を「安全保障」と言い換える詐欺的レトリックに対して
 本当に辟易しているのだが、何も安全を守るために武器だけが必要な
 わけじゃないんだよということを知っておいてほしいものである。

 最後になるが、私としては安全を本気で構築するのならば
 向こうの安全も保障しなければならないと考えている。

 すなわち東アジア全国加盟の不戦・軍縮同盟の設立が
 究極的には必要となるだろうと思う。

 また、今の日本の情報力は脆弱極まりなくて、
 韓国や米国に頼りっぱなしであり、確かな情報機関、
 CIAのような陰謀機関ではなく、市民に向けた情報公開を前提にした
 情報機関を構築しなければならない。そう思うのである。