時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

パリ同時多発テロ事件の背景4

2015-11-19 23:58:06 | 中東
モスクワ国際関係大学国際調査研究所上級研究員、アンドレイ・イヴァノフ氏の論説。

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テロと効果的に闘うためには、あらゆる諸国の尽力を結集し、
本当の意味での反テロ国際連合軍の創設が欠かせないことは明白だ。
トルコのG20サミットでプーチン大統領とラヴロフ外相はまさにこれを呼びかけたのだ。
こうした連合軍の創設がこんなにも待たれているにもかかわらず、その実現は未だに実っていない。

そうした原因のひとつを先日シリアのアサド大統領は述べている。
アサド大統領は仏国民に対し、パリの血塗られたテロに関して哀悼の意を述べながらも、
まさにこれと同じ悲劇がシリアではもう5年にわたって
ほぼ毎日のように繰り返されてきていることに西側は気づこうとしていないと不平をもらした。


シリアで起きる「反体制派」によるテロは、西側はテロとは捉えておらず、
権威主義的なアサド体制に対する人民の闘いと考えている。


まして今、ISと闘うために国際社会の尽力を結束する必要性を認めながらも、
ケリー米国務長官の口を代表すると米国民は依然として、シリアの悲劇を生んだ張本人は
アサド氏だと名指しで非難しており、アサド氏は「テロリストを集めている」とまで語っている。
ケリー国務長官の出した帰結はアサド氏は退陣すべきというもので、
シリアの移行期の連立政府形成および大統領選挙の準備にアサド氏を参加させることすら拒んでいる。

これはつまり、米国にとってはシリア政策、いや、シリアに限らず、
中東のほかの諸国においてもその主たる目的は依然として、まず米国にとって
都合のよい人間を政権に送り込むための、現地の体制転換でありつづけている
ことを示している。


このなかでは、その政治体制の国の国民の利益や権利は
平和的発展や安全保障の権利を含め、全く考慮されていないのだ。
これが不服をもつ人を大量に生み出し、そしてテロに加わる人の列が増えていく。

こうした米国の政策の囚われの身となりつつあるのがその連合国だ。
これを目に見える形で示したのがパリでの連続テロだった。しかもそれは初めてのテロではない。
テロは英国でもスペインでも起きている。
このほかテロの犠牲には中東で働く日本人も巻き込まれるようになってきた。

ここで重要なのは
これらの諸国はみな、米国の行なう中東諸国に政権交代政策を支持していた
ということだ。
だが、英国人、スペイン人、仏人、日本人もみな、
米国がかつて中東の政権交代に利用したテロリストらの手で殺されていった。

この事実は本来であれば政府を、それが米国政府でなかろうとも、せめて欧州諸国、
日本の政府を揺り動かし、政治的目的のためにテロリストを利用してはならないと悟らせるはずだ。
なぜならばテロリストには「中道」もなければ、「善い」テロリストもないからだ。
いかなるイデアでそれを正当化しようとも、丸腰の人間を殺害する人間に「善人」はありえない。

ところでイデアといえば、米国はたとえば主権国家の政権転覆を行い、
これは専制と闘い、民主主義を普及させるためと正当化している。

だがISのほうがよっぽどあからさまだ。ISはユーラシア領域に
イスラム国家を建国するという目的をはっきり公言し、将来はこの権力を
世界中に広めるつもりだと豪語している。ISがイスラムの規則に反し、多くの血を流し、
無慈悲な方法で奪った領域に権力を打ち立ててによいと考えていることは何ら驚くことではない。

米国はユーゴスラビア、イラク、アフガニスタンを空爆し、
リビアで転覆を起こし、アサド氏に歯向かう者を奨励し、
ウクライナ政権がドンバス住民を相手に戦争を行なうのを支援するなかで、
おびただしい数の罪もない市民が犠牲になっても、
それは悲しむべきこととは捉えられていないからだ。


これを「文明」国の欧州も悲しむべきこととは思ってこなかった。


進行する事のおぞましさが欧州の意識に到達したのは
たった今、その心臓部であるパリがテロでやられた後のことだ。


だがテロ根絶への正しい道を見つけるには、
生きる権利を持っているのは仏、英国、米国市民だけではなく、
シリア人もアフガン人もイラク、ドンバスの住民も
同じように有していることをどうしても理解せねばならない。
なぜなら人間には一級、二級の違いはないからだ。
それはテロリストに「善い」者がいないのと同じなのだ。


続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151118/1181858.html#ixzz3rwxypkca
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思わず大文字にしたくなるほど、良いことを言っている。
パリの事件が起きる前日にレバノンの都市ベイルートで自爆テロ事件が発生した。
この事件の犠牲者も相当な数だったが、パリと比べて扱いの比重はかなり軽いように思える。


アサド大統領はパリのテロはレバノンやシリアのテロと同じものだと述べているが、
これは言外にはヨーロッパのテロばかり重大視するメディアへの非難がこめられていよう。


テロもしかり、北朝鮮問題もしかり、アンドレイ・イワノフ氏の意見は大いに参考になるものだ。
日本の左翼がロシア嫌いでなければ、イワノフ氏の文章がもっと読めただろうにと思う。

テロを口実にした難民(移民)の締め出しについて

2015-11-19 20:38:34 | 中東
ここぞとばかりにオランド政権はシリアへの軍事干渉・移民排斥の正当化に着手し始めた。

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オランド氏は演説で、欧州連合(EU)条約42条7項にもとづき、
加盟国による集団的自衛権の発動を求める可能性を示唆。

ただシリアやイラクへの地上軍の派遣や、
北大西洋条約機構(NATO)による集団的自衛権の発動には言及しませんでした。

内政面では、
テロを起こす可能性のある二重国籍者のフランス国籍はく奪や入国禁止

危険とみられる外国人の早急な国外退去

情報機関と捜査当局の連携強化―などに向けた憲法や法改正を要求。
 治安維持と国境管理のため、警察官、軍人、税関職員を中心に計1万人規模の増員を求めました。

オランド氏が求めていた「非常事態宣言」の3カ月延長は、週内にも議会で承認される見通しです。

「テロでフランスを破壊することはできない。フランスがテロを根絶するからだ」と
演説を締めくくったオランド氏に、議員は総立ちで拍手を送り、国歌を斉唱しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-18/2015111807_01_1.html
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フランスに限らず、各地で移民排斥に拍車を掛け始めた。
これに対して、トルコが抗議している。



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トルコのエルドアン大統領は、EU諸国は難民たちにドアを閉ざしているとして、EU諸国を非難した。

EUの国境情勢を監視している「フロンテクス」通信の最新情報では、
今年最初の10か月でEUには120万人の移民が押し寄せた。
欧州委員会は、今次の移民危機は戦後最大のものだとしている。

「トルコよりはるかにGDPの多い国々が難民にドアを閉ざしている。
 彼らは言う。『エーゲ海や地中海に沈んでくれ』と。
 220万人の難民たち(編集部注・現在トルコにいる難民の数)が欧州に移動したらどうするのか」。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151113/1162430.html#ixzz3rvuGbHub
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赤旗は、何も言及していないが、危険人物か否かを正しく判断できる保障はない。
実際、あるクルド系デンマーク人である女性が中東でISISを相手に戦った後に帰郷したところ、
当局にパスポートを没収され、危険人物のリストに記名されている。



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パラニさんは、通信社「スプートニク」のインタビューで、なぜISと戦うのかについて語った。
パラニさんは、次のように述べている‐


 私はISがコバニとシンジャルを占拠した時に戦に加わることを決めました。
 なぜならそこでは一般の人たちが襲撃されたからです。私がまだデンマークにいた時、
 仲間のクルド人たちが殺され、誰もどうすることもできませんでした。

 私はとても辛く、穏やかに暮らすことができませんでした。
 そのため私は、戦うために学校、友人、趣味を置いて出かけたのです


パラニさんは、イラクのクルド人武装部隊「ペシュメルガ」に入隊した。

「ペシュメルガ」はすでに1年以上前からISと戦っていた。
「ペシュメルガ」は、ISとの戦いで成果を出していた地域で唯一の部隊だった。

なおパラニさんによると、「ペシュメルガ」は外国からの支援をほぼ受けていないという。
パラニさんは、次のように語っている‐

 私たちが毎回、ISあるいはアルカイダと戦いを開始する時、
 私たちにはよい軍装品がありませんでした。でもISの装備は新しく、それは米国製でした。
 なぜならイラク軍がISから逃げた時、彼らは自分たちの武器を置いていったからです


帰国したパラニさんを待っていたのは、予期せぬお出迎えだった。
パラニさんは、当時の様子を振り返り、次のように語っている‐

 私は休暇を取っていたので、家で15日間過ごそうと思っていました。
 ですが警察は、私のパスポートを没収し、私にはデンマークから出国する権利はない
 という書簡を書きました。それは、私が『国にとって危険』だからだということでした。

 そこには何の根拠もありません。なぜならデンマークはISと戦っている
 国々の連合に加わっているからです。弁護士と一緒に、この処置の取り消しを求めるつもりです。


続きを読む http://jp.sputniknews.com/life/20151119/1187694.html#ixzz3rw0Ts9vH

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現実に起きているのは明確な移民・難民、要するに外国人に対する差別である

よく難民を装ってテロがやってくるという意見を聞くが、
今回の事件にしても首謀者は昨年1月にシリアに渡航したベルギー人であり、難民ではない。

これについては国連難民高等弁務官事務所のメリッサ・フレミンング広報官も
「IS(イスラム国)の人間が難民を装って欧州に向かっているというデータはない。
 我々が握っている情報では、他の諸国からの人間がISに合流している。 
 欧州でテロを行っているのはここに住んでいる人間、
 つまり武装戦闘員が雇った社会のアウトサイダーたちのことだ」
と認めている。つまり、自国の人間もテロを起こすことがある。

フレミング広報官はテロが難民を装うことは100%否定はできないが、
ISに合流しようとシリアに向かった外国人の数がおよそ3万人に達していることに触れた上で、

テロリストには資金がある。彼らは自分の命の危険を冒し、
 欧州に入るための地中海をボートで渡る必要性はない。
」と答える。

私もパリで店を経営していた男性がテロの一員だったというニュースを踏まえた上で、
難民よりもごく普通に暮らしている人間のほうがテロになる可能性が高いと考えている。

外国人がテロを起こすと言うのであれば、
現在、国内に在住する全ての外国人を追い出すしかない。



新宿や渋谷、池袋を見れば、当たり前のように外国人がいるし、
ネームプレートを見なければ外国人だとわからないアジア系の店員もザラにいる。

また、外国人の観光客など腐るほどいるが、
この中にテロリストがいないという保障はない。



テロなどその気になれば誰でもできるのであって、観光で訪れた
アラブ系の観光客がいきなり都心で自爆テロを起こすというのも不可能ではない。

そして、今、問題になっているのは、外国にいる間にテロリストになって
帰ってくるケース(ホームバック型)であり、これは移民排斥では対処できない。


つまり、完全鎖国(外国人を入れさせない、国民を外国へと行かせない)しか
テロを防ぐことは出来ないが、これを主張する人間は何故かいない。


結局、最近の難民に対する姿勢の硬化は、テロを口実にして
排斥主義者が前々からやりたかったことを実行しているに過ぎないのではないだろうか?