時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

金正恩の髪型に関する報道

2015-12-21 21:22:22 | 北朝鮮
冷静に考えればデマだとわかるものでも、北朝鮮が絡むと簡単に信じられるのは、
結局のところ、北朝鮮と言う国に対する偏見や蔑視が蔓延しているからなのだろう。

北朝鮮が若者に金正恩氏と同じ髪型を強制?
英メディア報道に「米国が北朝鮮を悪の枢軸国というのもよく分かる」―中国ネット


金正恩の髪型(覇気ヘア)を若者に強制させているということだが、
実のところ、このデマは去年の春にもまことしやかに囁かれたものだった


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 北朝鮮当局が、国内の男子大学生に対し、
 最高指導者である金正恩第1書記と同じ髪形にするよう発令したと、
 欧米メディアが28日までに一斉に伝えた。

 独裁国家の北朝鮮では髪形にも厳しい規定が存在し、
 かつて「長髪禁止令」が出されたこともある。

 ただ、金第1書記のトレードマークでもある側頭部を大胆に刈り上げた
 独特の髪形への「統一令」に対しては、国内でも不評の声が上がっているという。

 髪形の自由すら認められない北朝鮮。その“異質さ”が改めて浮き彫りなった。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140329/kor14032911370001-n1.htm
(産経新聞より)


「Radio Free Asia」の報道によると、北朝鮮の男子大学生たちは現在、
金正恩最高指導者と同じ髪型にすることが「推奨」されているという。

女子学生には、李雪主夫人の短い髪型が推奨されている。

この記事の情報筋によると、髪型に関するこの指針は、
法的な命令ではないが、かなり強制力をもつものだという。

首都平壌市で3月はじめに導入され、今後は北朝鮮全土で
段階的に導入されていくと見られるが、この髪型にためらいを感じている人たちもいる。

「我々の指導者は、非常に特殊な髪型をしています」と、Radio Free Asiaに匿名で述べる人もいた。
「顔や頭の形は人それぞれですので、あの髪型がすべての人に似合うとは限りません」

北朝鮮では以前から、市民の髪型についての規定があり、
女性は18種類、男性は10種類の中からしか、自分の髪型を選ぶことができなかったという。

http://www.huffingtonpost.jp/2014/03/28/north-korea-kim-jong-un-hair_n_5047003.html
(ハフィントン・ポストより)

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上の写真は2014年5月時点の平壌科学技術大学の学生たちを写したものだが、
見て分かるように、髪形は統一されていない。




(http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/20140604riyo/)

ダメ押しで同じ時期に同じ記者が撮影した写真を提示しておく。
産経が語るように頭髪の長さには規定があるかもしれないが、
少なくとも、金正恩と同じ髪型にせよというお達しはないようだ。





(http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/20140409riyo-2/)

この写真は、2014年4月に平壌で撮影されたものだ。
金正恩と同じ髪型をしている子どもは見当たらない。



(http://www.huffingtonpost.jp/erick-tseng/8-days-in-north-korea_b_8519636.html)

では、現在はどうなっているのか。上の写真は、今年の9月に北朝鮮を訪れ、同国を
「奇妙で嘘くさく、プロパガンダだらけで不安定な国だった」と酷評した人物が撮影したものだ。

見ての通り、金正恩の髪型をしている子どもなど一人もいない。





同じ人物が平壌市内の公園で撮影したもの。
どうでもいいが、上の記事、「北朝鮮の国民は忠実な奴隷」と評価する一方で、
自分を無視しないで好意的に接してくれた人々は褒め称えるというナイスなものだったりする。

逆を言えば、アメリカのザ・右翼のような人物が撮影した写真だからこそ、
北朝鮮の良いイメージを植えつけようとする意思は一切ないと断言できよう。



(同じく、2015年9月に平壌で撮影されたもの。
 若者はもちろんのこと、年配の男性も髪型は統一されていない)

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思春期を迎える青少年にとって
「ヘア・スタイル」は、もっとも最初に気を遣う身だしなみの一つだろう。

ところが、北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。
もし、当局の言うことを聞かない場合は、無理矢理バリカンで刈られるという。


デイリーNKは、昨年10月に脱北したリ・チョルフン君(10代仮名)から
「北朝鮮の最新青少年事情」について話を聞くことができた。

チョルフン君は「ヘア・スタイルに関しては、特に取り締まりが厳しい」と語る。
では、どのようなヘア・スタイルにしなければならないのか?

男子は、無条件に『覇気ヘア』にしなければなりません

「覇気ヘア(ペギモリ)」とは、金正恩氏のあの特徴的なヘア・スタイルだ。
 庶民の間では「あの方(正恩氏)のヘアスタイル」とも言われている。

北朝鮮では理髪店に行くと、何も言わなくても勝手に覇気ヘアにされる。
チョルフン君によると、ささやかな抵抗を試みる青少年もいるらしいが・・・。

「後ろを刈り上げず、前髪を伸ばしているのが青年指導員(風紀委員のような役割)
 に見つかったら警告を受けます」

もし、警告を受けても切らなければ、どうなるのだろうか。

「バリカンで虎刈りにされてしまいます。仕方なしに散髪に行くけど、
 髪が生えそろうまでは恥ずかしく帽子をかぶらなければなりません」

北朝鮮メディアは「覇気ヘアが若者の間で大流行! !」と宣伝しているが、
やはり北朝鮮のイマドキの若者からすれば「ダサい覇気ヘア」というイメージがあるようだ。

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上の文章は、今年の3月にデイリーNKというメディアが発信した記事から引用したものである。
男子は無条件に覇気ヘアをしないといけないそうだが、実際はご覧の通りだ。

脱北者がウソをついているのか、そもそも脱北者に取材してすらいないのか。
そんなデイリーNKだが、今年の9月末になると次のように真逆の内容の記事を掲載した。



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北朝鮮メディアは、
金正恩第1書記の特徴的な刈り上げヘア・スタイルを「覇気ヘア」と褒め称える。

一般住民は、そんな呼び方はしないらしいが、
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、
金正恩氏は「俺のヘア・スタイルやファッションを真似するな」という指示を下したという。


RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、
「わが国の幹部たちは、長年、最高指導者の服装やヘアスタイルを慣行として真似てきた」という。

実際、故金正日総書記も、愛用していた綿入りのジャケットと同じものを
中央党幹部にプレゼントするなど、自らのファッションを真似ることを薦めてきた。

それだけではなく「私の筆跡も真似しなさい」と言い出したことから、
幹部たちは先を争って金正日氏の真似をした。忠誠心を見せる意味合いもあったが、
嫌々ではなくそれなりに楽しんでいたようだ。

ところが、金正恩氏は「自分の真似」をされることが、お嫌いなようだ。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、幹部らの間で
最高指導者のズボンにまつわる次のようなエピソードが広まっている。

「ある現地指導に同行した崔龍海(チェ・リョンヘ)氏が、金正恩氏と同じズボンを
 履いていったところ、公衆の面前で激しく叱責され、ズボンを履き替えさせられた」


ズボンにブチ切れた金正恩氏の言動は、「俺の真似をするヤツは、絶対に許さない」
という意味で受け取られ幹部たちは、服屋に注文していた「金正恩ルック」を次々にキャンセルした。

朝鮮では、高級幹部の粛清、公開処刑が相次いでおり、金正恩氏の
気に入らないことをすれば、どんな目に遭わされるかわからないという恐怖心があるからだ。

ある情報筋は「元帥様(金正恩氏)も、部下たちの行き過ぎたおべっかを
やめさせるという意図があったのだろう」と分析したが、その一方で
「単に自分を神格化させたいだけだ」と金正恩氏を批判する幹部の声を伝えた。

http://dailynk.jp/archives/52701
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これまでに紹介した各記事をかなり好意的に評価すると、
2014年3月「髪型統一令」→2015年9月「髪型禁止令」→2015年11月「統一令」
と変化したことになるだろうが、常識的に考えれば頻繁に指示が変わるわけがないし、
以下に述べるように、デイリーNKやラジオ・フリーアジアの主張が二転三転しているので、
その線はないと断言して良いと思う。


デイリーNKの編集長である高英起氏は今月(12月1日)に以下の記事を載せた。



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金正恩「オレのマネ禁止令」の痛すぎる勘違い

北朝鮮ではかつて、時の最高指導者が「ファッションリーダー」的な存在でもあった。
しかし金正恩氏の代になってから、その評判はダダ下がりのようだ。

~中略~

金正恩氏は白いコート、ゆったりしたズボン、腹が出て見える袖の短いシャツを着るなど、
上述の事情から「ビシッ」と決めるのを好む北朝鮮男性のトレンドと真逆を行っており、
「ダサい」とのイメージがすっかり固まってしまったのだ。

売れると見込んで「元帥様(正恩氏)の服」を作った服屋は、
あまりの売れ行き不振に頭を抱えているという


さらに金正恩氏は「俺のヘア・スタイルやファッションを真似するな」という指示を下し、
ファッションでも忠誠心を低下させる結果を自ら招いてしまった。

そもそも、あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが
彼が「若者のために」と思ってデザインさせた学校制服もまた、情け容赦ない酷評を受けている。

デイリーNKは北朝鮮における「イマドキ10代おしゃれ事情」を知るため、
昨年10月に脱北したリ・チョルフン君(仮名)にインタビューした。


彼の金正恩デザインに対する評価は、
「あんなダサい制服を着たら人間の価値が下がります」と何とも無慈悲なものであった。


ちなみに、北朝鮮のファッション・シーンで「イケてる男」の代名詞となっているのは、
どうやらロシアのプーチン大統領であるようだ。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kohyoungki/20151201-00052019/
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お分かりだろうか?

1回目の記事では、デイリーNKは
「北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。
 もし、当局の言うことを聞かない場合は、無理矢理バリカンで刈られる」と報じたのだが、
2回目の記事では、
あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが
と髪型の強制などないかのような書き方に変化しているのだ。


問題の脱北者も、
男子は、無条件に『覇気ヘア』にしなければなりません
と答えたはずなのに、
「あんなダサい制服を着たら人間の価値が下がります」と別の言葉に変えられている。

髪型は強制、服装は非強制という解釈をしようにも、
金正恩が自分の髪型と服装を真似しないようにとの指令を出したと明記される以上、
そのような好意的な受け取り方も出来そうにない。

インタビューの日時が明記されていないので、高氏がその脱北者に再び取材したのか、
それとも今年3月のインタビューを参照しているのか、いまいちハッキリしないが、
いずれにせよ、1回目の報道と2回目の報道では、内容が全く異なっている。

前者の報道では強制的に髪型が変えられているように語っているが、
後者の報道では強制ではなく、党主導のブームが不発に終わったかのように書かれている。


仮に2014年3月「髪型統一令」→2015年9月「髪型禁止令」となったのならば、
それこそ、最高の北朝鮮バッシングのネタになるだろうし、その経緯も含めて
報道するのが自然であり、初めから統一令がなかったかのような書き方はしないだろう


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「覇気ヘア」を真似よ!? 金正恩氏の「髪型」考察〈週刊新潮〉

デイリー新潮 12月8日(火)8時1分配信

“アシメ”に“ロブ”に“ボブディ”……
何の暗号かと思えばいずれも今年、日本の若者に流行(はや)った髪型の呼称。

それぞれアシンメトリー=左右非対称、ロング・ボブ、ボブとミディアムの中間の意だそうだが、
北朝鮮が誇るファッション・リーダー、金正恩氏が今年、全国に流行らせた髪型こそ“覇気ヘア”である。

「デイリーNKジャパン」編集長の高英起氏は言う。

後ろと横を刈り上げるスタイルで、青少年に流行していると言われています

氏が以前に流行らせたのはサイドを高々と刈り上げた“野心ヘア”だったが、これが進化し、
何とも覇気横溢、黒電話の受話器にしか見えぬ、すこぶるいなせな髪型となったのである。

ただ、流行とは言っても、実態は当局のチェック下にあり、
 髪を刈り上げていない男子が無条件で虎刈りにされているのです
」(同)

虎刈り男子の悲嘆たるや思うに余りあるが、なにせ髪型と服装に関する規定が存在し、
髪が伸びれば栄養が奪われ、長髪は知能に影響を及ぼすとするお国柄。

英紙も11月26日、男子の髪は最長2センチまでと定められ、
「はさみを持った監視官が男子学生の髪を切って歩いている」「粛清が始まった」と報じた。
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3月→「北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。」

12月1日→「あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが」

12月10日→「ただ、流行とは言っても、実態は当局のチェック下にあり、
      髪を刈り上げていない男子が無条件で虎刈りにされているのです」

わずか9日後に真逆のコメントが掲載されている。

強制なのか非強制なのか。いったい、どちらなのだろうか?
デイリー新潮の記事を読む限り、髪型統一令は現在進行形であるかのような印象を受ける。
というより、それ以外に受け取りようがない気がする。

「ただ、流行とは言っても~無条件で虎刈りにされているのです」というコメントは
 3月の記事の内容そのものだが、そうなると、仮に真実だとしても、去年の10月以前の状況を
 あたかも今年の状況であるかのように語っているわけで、それはそれで問題である。


そもそも、髪型禁止令が出たという情報は、ラジオ・フリー・アジアを初めとする
海外機関の伝聞情報であり、デイリーNKも高英起氏も現場の写真を取っていない。

北朝鮮で「覇気ヘア」が多すぎ 脱走兵の見分けがつかず

恐らく、覇気ヘアに関するデイリーNKの記事の中では最も古いものだと思われるが、
この記事に掲載された写真でも、肝心の兵士はヘルメットを被っており、髪型がわからない。

そこまで流行しているのならば、いくらでも証拠の写真を入手することができるはずである。
先に挙げたアメリカ人のように観光客として平壌に入って大学生たちと写真を撮れば良い。

ところが、これだけ覇気ヘアが流行していると言いながら、
肝心の覇気ヘアをした若者が一切、登場しない。全て文字媒体。しかも伝聞。不思議なことである。

情報自体も、対象が大学生に限定されるのか、それとも10代全般なのかが曖昧模糊としている。
去年8月の中国紙の報道では男性全体に強制されていると書かれている。

初めの報道では存在していた李雪主の髪型を強制されるという情報も、
いつのまにかなかったことにされている
。素直に考えてデマとしか言いようがない。


以上、長々と語ってきたが、これは本当に、
この髪型に関するデマが去年から何度も繰り返されているためであり、
どこかで誰かがハッキリと「これは嘘だ」という必要があるのではないかと感じたからである。

そのうち、本当にこういうアホな指令が発せられるかもしれないが、
現段階では、恐らく短髪にせよという党の指示が曲解されて伝わっているような気がする。
(衛生問題を考えれば、短髪にしろという指令は十分考えられる)

いずれにしてもデイリーNKは、せめて自分たちの過去の主張が誤報だったのか否か
ぐらいは、もう少しハッキリさせても良いだろう。現段階では単なるプロパガンダに見える。


・追記
9月29日付けの高英起氏の記事には、
「覇気ヘアはマネどころか、一部では半強制化されており、
 「床屋へ行くと無条件で覇気ヘアにされる」という証言もある。」と書かれている。
(http://bylines.news.yahoo.co.jp/kohyoungki/20150929-00049972/)

この書き方は極めて不誠実かつアンフェアだと思う。
「無条件で覇気ヘアにされる」と「一部では無条件で覇気ヘアにされる」では意味が大分違う。

仮に「一部」と修正するならば、
北朝鮮のどの地域、どのケース・どの団体で強制されているかを明記しなければならないし、
その後の報道においても「一部では」のフレーズを挟み続けなければなるまい。

ところが、実際には高氏は数ヵ月後には元の表現、つまり「一部では」のフレーズを削って
北朝鮮全域で髪型が強制されているかのような印象を受ける表現に戻している。一体どちらなのか?

また「半強制」という表現があるが、無条件で覇気ヘアにされ、断れないのだから、
これは常識的に考えて、高氏は「強制」と書くべきだろう。

どうも後々、反証されることを恐れて
「一部では」「半強制」という言葉を付け足し、逃げ道を用意したように見える。

あるいは「強制」としてしまうと金正恩がファッション・リーダーを目指そうとしたが、
無様に失敗したという別の記事と矛盾してしまうからか。いずれにせよ根拠を提示すべきだ。

同氏の主張が根拠薄弱で曖昧であること、その主張が短期間の内にコロコロと変わるのは、
ラジオ・フリーアジアの報道内容をそのまま語っているだけだからだと思う。

自分で調べていないから、詳しい内容が書けないのである。

唯一、独自に取材したものと思われる「床屋へ行くと無条件で覇気ヘアにされる」という証言も
例の脱北者1人のものしかなく、情報筋()に同様の証言をさせることもなく、使い回しをしている。

それが悪いとまでは言わないが、せめてインタビューの全内容を公表してもらわないと
「一部」と断定するだけの根拠がどこにあるのか(あるいは無いのか)はっきりしない。

金正恩の機嫌を損ねれば処刑されるはずなのに、
なぜ、金正恩にケンカを売るような真似が強制されているのか?
そのリスクを背負う理由はどこにあるのか?その点を明らかにすることが今後の彼の仕事だろう。

北朝鮮コーラス・グループ北京コンサート中止事件の真相2

2015-12-21 00:21:42 | 北朝鮮
前回の記事で、歌詞が反米的だということで検閲を通らなかったことが
北朝鮮のコーラスグループが中国での公演をキャンセルした原因だったと話した。

その上で、勝手な憶測で自国の右派系新聞と大差ない意見を述べた韓国の左派系新聞、
ハンギョレについて批判したが、では日本はどうかと言うと更に非道い状況にある。

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聯合ニュースによると、韓国の情報機関・国家情報院は、
北朝鮮の牡丹峰(モランボン)楽団が北京公演を中止して帰国した理由を、
公演内容が金正恩(キムジョンウン)第一書記の崇拝一色だったためと推定した。
国情院が十四日、韓国国会の情報委員長に報告したという。

公演のリハーサルの際に演目が判明し、中国側が観覧する
共産党指導部メンバーの格を下げたため北朝鮮側が反発、公演を中止したという。
一方で、金第一書記の水素爆弾への言及が公演中止の理由である可能性も排除できないとした。

一方、十四日に開かれた韓国国防省の会合では、
北朝鮮による核実験や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を含む
ミサイル発射実験が続く可能性が高いと、関係者に注意を促した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201512/CK2015121502000107.html
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上の文章は、12月15日の東京新聞の記事を引用したものだが、
何度も言っているように、国家情報院(国情院)という機関は韓国の秘密警察であり、
軍事政権時代から何度も無実の罪で国民を逮捕・拘禁・拷問をかけたり、
最近で言えば大統領選の際にパク・クネの政敵を中傷するコメントをツィッターで大量発信したり、
統合進歩党の議員がクーデターを企んだと言う偽の証拠をでっち上げたり、
北朝鮮に関してもデマばかり飛ばしている機関なのだが、そこの意見を
さも傾聴の価値があるかのように伝えるのは一体どういうことなのだろうか。

そして、案の定、今回も誤報だったわけだが、訂正もせず、
東京新聞は本当は歌詞を巡ってのトラブルだったことに一言も触れていない。

「まだ確定された事実ではない」として報道しないとするのであれば、
 なぜ同じく憶測レベルだった水爆を巡るトラブルだという説を記事に書いたのか。

先月、東京新聞は90年代以降も拉致を続行していたと証明する文書が発見されたと報じたが、
北朝鮮について長年、取材を行っている成田俊一氏は偽書である可能性が極めて高いと見ている。

例えば、拉致という言葉は北朝鮮では「ラプチ」と書くのだが、韓国式の「ナプチ」になっている。
問題の文書は「金正日主義対外情報学」と言うらしいが、「金正日主義」という言葉は存在しない。
「金日成-金正日主義」「金正日愛国主義」という言葉ならあるが、2012年以前には使われていない。
他にも北朝鮮で使われていないフォントが使われているなど、改竄の疑いが深い。


そもそも、日本で言えば慰安婦が軍主導のものだったと証明する文書が
発見されたというレベルの大ニュースであるはずなのに、騒いでいるのはなぜか東京新聞のみ。

それも、続報といったものは未だに一切伝わってこない。
アメリカや中国、韓国などの他国メディアも関心を持たない。

私に至ってみれば、今週の週刊金曜日を読むまでスクープ自体知らなかった。
こんなガセに反応しているのは、北朝鮮バッシングの権威()である高英起ぐらいだ。

ちなみに、その高氏は黙っていれば良いものを公演中止事件について、こう書いている。

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本欄では、金正恩第1書記の「水爆保有」発言に
中国側が不快感を示し、公演を観覧する幹部を大幅に格下げ。
これに激怒した金正恩氏が「報復」に出たとする見方を紹介した。

そんななか、韓国の情報機関は、モランボン楽団が予定していた
公演内容に問題があったと指摘する。では、何が問題だったのか。

モランボン楽団に限らず、北朝鮮の文化芸術の柱は、
故金日成主席、金正日総書記、そして金正恩氏の偶像化がバックボーンだ。
公演から金正恩氏偶像化の演目を除外したら、そもそもモランボン楽団の公演自体が成り立たず、
そのことは、中国も公演前からわかりきっていたはずだ。

ということは、金正恩氏の偶像化が問題視されたとは思えない。

それよりも筆者は、公演のなかで、核や長距離弾道ミサイルを賞賛する演出が
中国側を刺激し、それに北朝鮮が反発したという見方に注目する。

http://blogos.com/article/150309/
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高氏はロイター通信の記事が出た後も訂正も反論もしていない。
こういう下手な鉄砲数うちゃ当たる戦法は、盟友である東京新聞とそっくりだと思える。

とはいえ、北朝鮮を非難する専門家()のレベルがハッキリしたわけであり、
そういう意味では良いリトマス試験紙になったかと思う。


いずれにしても、国情院のような機関の言い分を垂れ流して
報道したつもりになっているのが我が国の大手メディアの現状であって、
これを看破するにはやはり、海外メディアの記事をよく読まなければならないだろう。