今の新聞記者のレベルの低さを知るにはうってつけの一冊。
これは理系・文系どちらの学者・ジャーナリストにも言える事だが、
あるテーマを研究する際には、とりあえず先行研究の読み込みから始めるのが定石である。
つまり、いきなり実験や現地調査を始めるのではなく、
ある程度、下調べをして基本知識を得てから、既存の研究の検討をするのである。
(その作業の中で自分の研究のオリジナリティを確立させていく)
国際問題の場合には、例えば、朝日や読売等の国内の新聞は言うまでもなく、
スクープトニクや人民網、イランラジオ、他にもル・モンドやアルジャジーラなど、
他のメディアでシリアがどのように伝えられているかをチェックしてから取材に当たる。
それが常識だと思っていたのだが、どうもこの本を読むと、そうでもないらしいことがわかってきた。
津村記者は実際にシリアに来て取材を行う中で、初めから悪と決め付けた自分の態度を反省する。
言い換えれば、彼はそれまで少しもイランやロシアのメディアに触れようともせず、
イギリス・フランス等の反アサド国側から発信する情報を鵜呑みにしていたわけだ。
実際、彼は英米仏等の西側国家がシリア国内の「反体制派」に武器を支援した結果、
その武器がダーイシュ(IS、イスラム国)に使われていることを知り愕然とするのだが、
そんなことはロシアやイランがずっと前から言っていたことである。
何しにシリアに言ったんだよと悪態をつきたくなる。
日本国内、それも海外メディアから取得できる情報を再掲されても困る。
イランやロシアの言い分には正しいものもあると言うのであればまだわかるが……
同じ本ではシリアを支援するロシアに理解を示す一方で、ロシアがウクライナで
「親ロシア派」に武器を支援していることを非難する頓珍漢なことが書かれている。
客観的に観て、ウクライナに、より露骨に干渉しているのは欧米列強であり、
彼らはシリア同様、自国に都合の良い集団に武器を支援し、軍事訓練を施した。
彼ら「反対派」(多くがネオナチ)がマイダンで暴動を起こし、
IMFの条件を呑むことを拒絶したヤコヌヴィチ大統領が追放された。
イギリスやドイツの石炭産業を活性化させるために自国の炭坑を閉山させること、
国営企業を民営化させること、公共料金を引き上げること、年金の額を引き下げること、
いわゆる新自由主義の受け入れがなされ、アメリカ人が政府の要職に就いたりさえした。
結果、緊縮策を受け入れられない地方の州(特に炭坑が多く存在する南東部)が反発し、
住民投票が実施され、極めて民主的な手段でドネツク・ルガンスク州の独立が決定された。
------------------------------------------------------------
ドンバス炭鉱の労働者達は、
ドネツク州からのウクライナ軍部隊撤退を要求し、無期限ストライキに入ると発表した。
タス通信記者に、ウクライナからの離脱を求め独立を宣言した
ドネツク人民共和国石炭産業省のコンスタンチン・クズィミン第一副大臣が伝えた。
現時点では、ドネツク上空をウクライナ軍の戦闘機が飛行している。
市の中心部は比較的平穏だが、多くの商店、銀行、カフェなどは営業していない。
公共交通機関は、状況により運行したりしなかったりの状態だ。
手元にある情報によれば、ドネツク市民に対し、3時間以内に
希望者はすべて町を離れるよう警告が出された。しかし現在のところ、
市民が積極的に町を離れる様子はない。ドネツク人民共和国スポークスマンは、
近くウクライナ軍によるドネツク急襲作戦が開始されると見ている。
------------------------------------------------------------
日本の記者は「親ロシア派」と称するが、元々は地方議会と連携して発生したものである。
ルガンスク州の州議会幹部会は、住民投票の支持を表明していた。
その表明は、次のように書かれている。
「ウクライナでは現キエフ政権とその保護者たちが扇動した内戦が起こっている。
数十人の人々が命を落とし、数百の家庭が喪に服し、
数百万人の人々の心に憎悪が生まれたのは彼らの責任だ。
ウクライナ国民の半分が、犯罪者やテロリストとみなされた。
それは、彼らが考えるウクライナの未来と、
キエフで政権に就いた政治家たちが考えるウクライナの未来が異なっているからだ。
キエフ政権は彼らと対話するかわりに、数百万人の市民に対して、
対テロではなく、まさにテロ作戦を展開した。
これは欧州現代史における自国民に対する最初の軍事作戦であり、
市民に対する公のテロだ」
こうして、病院や教会、学校、家屋が独立を認めない政府軍によって爆撃された。
重要なのは、キエフはドネツク・ルガンスクのインフラを破壊し市民を殺害したが、
「親ロシア派」はキエフまで行って、同様の破壊行為は行っていないということである。
これはシリア全土を手中に収めようとするシリアの「反体制派」と大分違う。
彼らは単に、自分たちの経済と生活を守りたいだけで、ウクライナ全土をロシア化する意図はない。
(逆にマイダンで暴動を起こした連中は文字通りウクライナをアメリカ化させているわけだが。
アメリカに亡命中のグルジア元大統領がなぜかウクライナの州知事に任命されたのはその好例だ)
こういうことは、ちょっと調べればすぐにわかることなのに、
その程度の努力も怠る記者が一丁前にウクライナ問題について語るのは如何なものか?
これに限らず、ウクライナしかり、シリアしかり、
いかに周囲の言葉を鵜呑みにしていたかがよくわかる本になっており、
本人は「そんなオレだが現地に飛んで生まれ変わった!」と強調したいようだが、
私に言わせれば「こんなのでも体力と話術があれば記者になれるんだな」とあきれた次第である。
橋下徹に最後まで転がされ、尻尾をふり続けた大阪の新聞とテレビ局
…退任会見の醜態をあらためて振り返る!
↑
国内でもこのザマだ。
どうも駄目な記者ほど現地に行けば何かわかるという信仰を持っているような気がするが、
実際は、現地に行っても理解できない人間は山ほどいるのである。大阪のそれは好例だろう。
記者に必要なのは現場に行くことではなく、いかに柔軟な考えができるかということ。
正確に言えば、日本政府の公式見解に対して一度は疑うことができるかということだ。
ウクライナにせよ、シリアにせよ、日本政府と全く同じ歩調を取るようではいけないだろう。
これは理系・文系どちらの学者・ジャーナリストにも言える事だが、
あるテーマを研究する際には、とりあえず先行研究の読み込みから始めるのが定石である。
つまり、いきなり実験や現地調査を始めるのではなく、
ある程度、下調べをして基本知識を得てから、既存の研究の検討をするのである。
(その作業の中で自分の研究のオリジナリティを確立させていく)
国際問題の場合には、例えば、朝日や読売等の国内の新聞は言うまでもなく、
スクープトニクや人民網、イランラジオ、他にもル・モンドやアルジャジーラなど、
他のメディアでシリアがどのように伝えられているかをチェックしてから取材に当たる。
それが常識だと思っていたのだが、どうもこの本を読むと、そうでもないらしいことがわかってきた。
津村記者は実際にシリアに来て取材を行う中で、初めから悪と決め付けた自分の態度を反省する。
言い換えれば、彼はそれまで少しもイランやロシアのメディアに触れようともせず、
イギリス・フランス等の反アサド国側から発信する情報を鵜呑みにしていたわけだ。
実際、彼は英米仏等の西側国家がシリア国内の「反体制派」に武器を支援した結果、
その武器がダーイシュ(IS、イスラム国)に使われていることを知り愕然とするのだが、
そんなことはロシアやイランがずっと前から言っていたことである。
何しにシリアに言ったんだよと悪態をつきたくなる。
日本国内、それも海外メディアから取得できる情報を再掲されても困る。
イランやロシアの言い分には正しいものもあると言うのであればまだわかるが……
同じ本ではシリアを支援するロシアに理解を示す一方で、ロシアがウクライナで
「親ロシア派」に武器を支援していることを非難する頓珍漢なことが書かれている。
客観的に観て、ウクライナに、より露骨に干渉しているのは欧米列強であり、
彼らはシリア同様、自国に都合の良い集団に武器を支援し、軍事訓練を施した。
彼ら「反対派」(多くがネオナチ)がマイダンで暴動を起こし、
IMFの条件を呑むことを拒絶したヤコヌヴィチ大統領が追放された。
イギリスやドイツの石炭産業を活性化させるために自国の炭坑を閉山させること、
国営企業を民営化させること、公共料金を引き上げること、年金の額を引き下げること、
いわゆる新自由主義の受け入れがなされ、アメリカ人が政府の要職に就いたりさえした。
結果、緊縮策を受け入れられない地方の州(特に炭坑が多く存在する南東部)が反発し、
住民投票が実施され、極めて民主的な手段でドネツク・ルガンスク州の独立が決定された。
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ドンバス炭鉱の労働者達は、
ドネツク州からのウクライナ軍部隊撤退を要求し、無期限ストライキに入ると発表した。
タス通信記者に、ウクライナからの離脱を求め独立を宣言した
ドネツク人民共和国石炭産業省のコンスタンチン・クズィミン第一副大臣が伝えた。
現時点では、ドネツク上空をウクライナ軍の戦闘機が飛行している。
市の中心部は比較的平穏だが、多くの商店、銀行、カフェなどは営業していない。
公共交通機関は、状況により運行したりしなかったりの状態だ。
手元にある情報によれば、ドネツク市民に対し、3時間以内に
希望者はすべて町を離れるよう警告が出された。しかし現在のところ、
市民が積極的に町を離れる様子はない。ドネツク人民共和国スポークスマンは、
近くウクライナ軍によるドネツク急襲作戦が開始されると見ている。
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日本の記者は「親ロシア派」と称するが、元々は地方議会と連携して発生したものである。
ルガンスク州の州議会幹部会は、住民投票の支持を表明していた。
その表明は、次のように書かれている。
「ウクライナでは現キエフ政権とその保護者たちが扇動した内戦が起こっている。
数十人の人々が命を落とし、数百の家庭が喪に服し、
数百万人の人々の心に憎悪が生まれたのは彼らの責任だ。
ウクライナ国民の半分が、犯罪者やテロリストとみなされた。
それは、彼らが考えるウクライナの未来と、
キエフで政権に就いた政治家たちが考えるウクライナの未来が異なっているからだ。
キエフ政権は彼らと対話するかわりに、数百万人の市民に対して、
対テロではなく、まさにテロ作戦を展開した。
これは欧州現代史における自国民に対する最初の軍事作戦であり、
市民に対する公のテロだ」
こうして、病院や教会、学校、家屋が独立を認めない政府軍によって爆撃された。
重要なのは、キエフはドネツク・ルガンスクのインフラを破壊し市民を殺害したが、
「親ロシア派」はキエフまで行って、同様の破壊行為は行っていないということである。
これはシリア全土を手中に収めようとするシリアの「反体制派」と大分違う。
彼らは単に、自分たちの経済と生活を守りたいだけで、ウクライナ全土をロシア化する意図はない。
(逆にマイダンで暴動を起こした連中は文字通りウクライナをアメリカ化させているわけだが。
アメリカに亡命中のグルジア元大統領がなぜかウクライナの州知事に任命されたのはその好例だ)
こういうことは、ちょっと調べればすぐにわかることなのに、
その程度の努力も怠る記者が一丁前にウクライナ問題について語るのは如何なものか?
これに限らず、ウクライナしかり、シリアしかり、
いかに周囲の言葉を鵜呑みにしていたかがよくわかる本になっており、
本人は「そんなオレだが現地に飛んで生まれ変わった!」と強調したいようだが、
私に言わせれば「こんなのでも体力と話術があれば記者になれるんだな」とあきれた次第である。
橋下徹に最後まで転がされ、尻尾をふり続けた大阪の新聞とテレビ局
…退任会見の醜態をあらためて振り返る!
↑
国内でもこのザマだ。
どうも駄目な記者ほど現地に行けば何かわかるという信仰を持っているような気がするが、
実際は、現地に行っても理解できない人間は山ほどいるのである。大阪のそれは好例だろう。
記者に必要なのは現場に行くことではなく、いかに柔軟な考えができるかということ。
正確に言えば、日本政府の公式見解に対して一度は疑うことができるかということだ。
ウクライナにせよ、シリアにせよ、日本政府と全く同じ歩調を取るようではいけないだろう。