時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

セレブレニツァのムスリム虐殺事件

2015-07-13 00:18:16 | ロシア・ウクライナ
20年前に起きたボスニア・ヘルツェゴビナでのムスリム虐殺事件。



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ボスニア・ヘルツェゴビナで、数万人の人々がヨーロッパ最大規模の虐殺、
スレブレニツァ大虐殺の20周年の式典に参加し、新たに遺体で発見された
犠牲者136人の葬儀を行うと共に、この大犯罪の犠牲者を哀悼しました。


この式典には、イランをはじめとする各国の高等使節団が参加しました。

1995年7月11日、ラトコ・ムラディッチが司令官を務めるセルビア人武装勢力は、
スレブレニツァを数日間包囲したあと、国連により安全地域に指定されたこの町に進軍し、
ボスニア人のイスラム教徒の男性や少年8000人以上を家族から引き離し、
殺害、集団墓地に埋めました。この犯罪は、国連のオランダ平和維持部隊の目の前で発生しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/56276
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この事件を巡って、最近、ロシアが槍玉に挙げられている。



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旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナで20年前、
セルビア人武装勢力がイスラム教徒の住民8000人を殺害した事件について、
国連の安全保障理事会で、事件を「大量虐殺」として非難する決議案の採決が行われましたが、
セルビアを擁護するロシアと欧米が対立し、ロシアによる拒否権の行使で否決されました。



この事件は1995年にボスニア・ヘルツェゴビナ東部のスレブレニッツァで
セルビア人武装勢力にイスラム教徒の男性8000人が殺害されたもので、
第2次世界大戦後のヨーロッパで起きた最悪の虐殺事件とされています。


事件から20年となるのに合わせて8日、国連の安全保障理事会で、
事件を「大量虐殺」と非難するアメリカやイギリスなどが提出した決議案の採決が行われました。


しかし、セルビアを擁護するロシアのチュルキン国連大使は
「今なお続く現地の対立をあおるものだ」として拒否権を行使し、
中国など4か国も棄権して決議案は否決されました。



これに対して欧米各国から厳しい批判の声が上がり、アメリカのパワー国連大使は
「拒否権の行使は多くの肉親を失った遺族たちの思いを踏みにじるものだ」とロシアを非難しました。



安保理ではシリアやウクライナを巡って欧米とロシアが鋭く対立してきましたが、
20年前のボスニア紛争を巡っても対立が解けない現状が浮き彫りになりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150709/k10010144291000.html
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NHKの報道だけを読むと、欧米列強のほうがマトモに見えるが、
実際に、彼らが何に対して反対していたかを知ると、評価が逆転する。



Srebrenica’s legacy should be one of peace, not war

All Srebrenica massacre culprits must be punished – Moscow


実は、ムスリムを虐殺したのはスルプスカ共和国軍であり、セルビア共和国軍ではない。

実際、殺害の責任者であるラトコ・ムラディッチ参謀総長はスルプスカ共和国軍の軍人であり、、
現在、彼はオランダのハーグに移送され、旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷で罪を問われている。



つまり、今回の決議案は、
スルプスカ共和国軍の犯罪の責任をセルビア共和国に求めるもので、
これに対してセルビア共和国やロシア、アンゴラ、ベネズエラらが抗議しているのである。




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The UN International Court of Justice in its ruling on February 27, 2007,
referred to the tragedy as genocide, but found that Serbia has neither incited,
committed, or conspired to commit genocide.


The court however said Serbia failed to take all measures
within its power to prevent it thus violating its obligations
under the Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide.


(http://rt.com/news/273037-srebrenica-massacre-anniversary-justice/)
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2007年の国際司法裁判所では、
セルビア共和国が虐殺を誘発・加担・共謀していないことが確認された。


にも関わらず、事件を未然に防げなかったことから義務を怠ったと叱責されている。


紛争の生存者でありロシア・トゥデイのジャーナリストでもあるネボジャ・マリックは
次のようなコメントを残している。

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“Tens of thousands of Muslims in the Middle East and North Africa
were killed in US 'humanitarian' wars since,
conducted under the slogan of 'no more Srebrenicas'.

(中東や北アフリカにいる何万ものイスラム教徒が「ノー・モア・セレブレニツァ」
 のスローガンの下、アメリカの「人道的」戦争によって殺された。)

Nobody in the West counted or mourned them.
This isn’t about concern for the Muslim dead, but about justifying wars worldwide.”


(西側の中で彼らを勘定に入れたり、追悼したりする国はない。
 これはムスリムの死を心配しているのではなくて、世界中の戦争を正当化しようとしているのだ)

(http://rt.com/news/273037-srebrenica-massacre-anniversary-justice/)
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極力、直訳に努めた。意訳するならば、

 「中東や北アフリカに住む何万ものムスリムが『セレブレニツァはもうたくさんだ』
  という名の下、アメリカの「人道的戦争」のために殺された。

  西側諸国で彼らの死を考えに入れたり、追悼する国は一国もない。

  彼らはムスリムが死ぬことを心配などしていない。
  世界中の戦争を正当化することに関心があるのだ。」

という意味だと思うが、断言できないので、悪しからず。


いずれにせよ、セレブレニツァの悲劇が現在進行形の中東・北アフリカへの
欧米の軍事介入の格好の口実にされていることだけは確かである。


ジャーナリストのニール・クラークは、この件について以下のコメントをしている。


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Srebrenica, along with the genocide in Rwanda,
is regularly cited by 'liberal interventionists'
in the West as an example of what happens when the US and
its closest allies don’t ‘intervene’.

It has been used not to promote peaceful solutions to disputes,
but to strengthen the neocon/faux-left case for wars (aka, 'humanitarian interventions')
against independent, resource rich countries that don’t
run their economies to the benefit of the Western elites or have
the ‘right’ i.e. pro-Western foreign policy orientation.


We saw a classic example in 2011, during the build up to the NATO war against Libya.

(http://rt.com/op-edge/273142-srebrenica-massacre-anniversary-balkans/)
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セレブレニツァはアメリカや同盟国が軍事干渉しなかったために
起きた悲劇として介入主義者たちによく引用されている。

それは、紛争の平和的解決を推進するためではなく、
ネオコンとニセ左翼が他国の独立に反対するための戦争を正当化する時に使われる。

自国の富を西側のために使わない反米・反欧国を更正させるために使われる。

その典型的な例がリビアへのNATOの軍事介入だった。


こういう事情を鑑みれば、今回の決議案は北朝鮮の「人権」問題と同一のもので、
欧米が特定の国家を攻撃・支配するために作られたものだとみなしても良いだろう。



未だに継続する列強国の植民地主義・帝国主義に着目して、
ロシアやアンゴラ、ベネズエラ、ナイジェリア、中国の抗議を見る必要がある。



セルビア共和国は事件の存在とその被害の大きさは認めている。
この点は、「証拠が無い」とか「すでに解決済み」とうそぶいている某国とは大違いである。


ユーゴスラビア一体の国々もまた、朝鮮半島のようなもので、未だに諸国の間で軋轢があるらしい。
NATOの利益を抜きにした戦後処理が進むことを望むばかりである。


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