時事解説「ディストピア」

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アパルトヘイトは、なぜ栄えたのか

2015-03-06 00:42:17 | リビア・ウクライナ・南米・中東
1.

前回、冷戦期にアパルトヘイトを全面的に支持する不届き者が
日本で大学教授をやっていたことに触れたが、彼の著書を改めて読み直すと、
ネルソン・マンデラを共産党ゲリラの親玉とみなし、彼の入獄を当然視する記述がみられた。


今でこそ黒人差別運動の英雄として世界中から愛されているマンデラだが、
この時期はテロリストのボス、監獄にぶち込むのは当然の報いと言う人間もいたわけだ。


反共とは、ここまで人を堕落させるのかと、学問の威厳を傷つけるのかと改めて思い知らされるが、
これは梅津教授個人の問題ではなく、まさにこの反共主義こそアパルトヘイトを存続させてきたのである。



あまり知られていないが、南アフリカ共和国は人種主義と反共主義を国是とした国家だった。


韓国のパク・チョンヒ、インドネシアのスハルトが有名だが、
アメリカが支援する国家は、いずれも強烈な反共主義のもと民衆弾圧を行ってきた。

南アフリカ共和国も例外ではなく、反共の砦として国内の弾圧と近隣国への侵攻を行ってきた。


世界史の教科書や入門書には、いかにも世界各国が南アフリカの人種隔離政策を非難し、
制裁を加えたかのように書かれているが、実際にはその後もビジネス上の付き合いは続いており、
また先のアンゴラ内戦でもアンゴラに軍を侵攻させたのは、南アフリカとアメリカなのである。


要するに、南アフリカ共和国は、アフリカを共産主義化させないために生かされた。

アフリカで社会主義国が誕生させないこと、
万が一誕生した場合、その国を攻撃し、速やかに政権を転覆させること。

これを条件に国内で行われているあらゆる弾圧にアメリカ発の免罪符が与えられたのである。



2.

一般的に「アパルトヘイト」は「引き離す」という意味のアフリカーンス語だと説明される。

ヘイトは接尾語で、英語のnessのようなものである。

しかしながら、偶然にして、この言葉はアパートヘイト、
すなわち「apart(別々に)」「hate(憎む)」と解釈することもできる。


アパルトヘイトとは、単に白人と黒人を分離させることではない。
より正確に言えば、部族ごとに居住区を定め、引き離す政策であり、
これは部族主義を助長させ、各部族の団結を防ぎ、また黒人同士を衝突させるものである。


南アフリカ国内では、ズールー地区が白人政権の傀儡役を背負った。
アパルトヘイトの撤廃なしの市民権の付与。これを要求したのである。


梅津教授は、これを得意げに利用して
「ANC(マンデラが率いた組織)に反対している部族もいる!
 黒人に市民権を与えれば、自ずとアパルトヘイトは形骸化するだろう。
 そのようなゆるやかな変革を望む人間が対話の相手としてふさわしい」と主張する。



梅津和郎教授が『新現代アフリカ史』で述べていることは、
白人政権にとってコントロールしやすい部族を祭りたてることが望ましいということだ。


これは言ってみれば、鳩山由紀夫ではなく安倍晋三と対話せよ、
基地は撤廃しなくても、沖縄の開発援助をすれば、長い目で見れば、
県への負担はなくなっていくだろうという言説と全く同じものだ。



そして、こういう言説がさも正しいかのように宗主国や属国、
すなわち民主主義国の学者やジャーナリストを動員して……というよりも、
その国の保守派に共鳴する人間たちが自発的に協力してプロパガンダを作っていく。


3.

民主主義国の恐ろしいところは、
プロパガンダが政府の強制ではなく、
個人の協力によって成り立っているということだ。


そのため、その工作活動には、一定の正当性がある。

アメリカやフランス、イギリスで未だに人種差別や宗教差別があるのも、
民主的に、保守的な思想や言説がばら撒かれているということが背景にある。


それどころか、一国の元首が、そのようなカルト集団のメンバーだったり、
あるいは彼らに支援されていたりするところも少なくない。

この場合、首相や大統領は自発的にプロパガンダを流すように呼びかけるのだが、
仮に共産主義国がそれをすると、「自由の侵害だ!」と騒ぎ立てるわけだが、
これが民主主義国になると、「我々に意見するのは言論の自由の侵害だ!」となるわけである。


このように、強制なら悪で協力なら善だという強烈な思い込みは左翼もまた共有するものだ。

強制だろうと非強制だろうと、肝心かなめの言説の内容に則って考えるべきなのに……だ。



4.

梅津和郎教授を見て思うのは、
日本の学者が現在進行形で政治や経済に悪い意味でコミットしているということだ。


実際、この手の悪党は北岡伸一(政治学者)や浜田 宏一(経済学者)のような
政府お抱えの学者だけでなく、民間の大学にもいくらでも存在する。


何だかんだでドイツ近現代史や日本近現代史の研究者が、
この70年間で目覚ましい活躍と発展を遂げたのも、保守派とは一歩おいたためだと思われる。
(そのために、マルクス的だと、容共的だと同業の反共左翼から攻撃されたわけだが……)


私は何も、学者は皆共産化しろーと言っているのではない。

コミュニストならすべて悪だという偏見に則った学者は、
その思想的差別主義のために、悪政に関与する疑いがあるし、実際にそうなっている
と言いたいのだ。


容共はあくまで共産主義者の言うことにも耳を貸す程度のもので、主義者になることではない。

私が言いたいのは、学者である以上、その人物の思想的立場ではなく、
その主張の内容を客観的に判断した上で、批判してみせろということなのである。

手紙を読む前に差出人がコミュニストだと知って、封すら開けずにゴミ箱に捨てる。
そういう行為は事実の守り手であるはずの学者がすることではないと言いたいのである。


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