時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮への独自制裁は意味がない

2016-02-24 00:25:04 | 北朝鮮
先日、2月20日土曜に日本の北朝鮮に対する独自制裁の内容が発表された。
この制裁は、実際には北朝鮮ではなく、在日コリアンの行動を制限する内容になっている。

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今回の「独自制裁」は、在日朝鮮人の海外渡航の自由を大幅に制約している
端的にいうと、日本を出ると戻ってこられない、再入国できないという措置だ。

1965年、朝鮮創建20周年祝賀在日朝鮮人代表団の訪朝にあたって、
日本政府が再入国不許可処分としたことで訴訟が起きた。
そのとき東京高裁は海外渡航の自由は基本的人権だとし、国の再入国不許可処分を違法だとした。

この判決は、外交というのは一つの政策ではあるが、
その政策が常に公共の福祉に合致しているとは限らないとした。今回の制裁は、
当時の「かごの鳥」状態を彷彿させるとともに、同じことを繰り返そうとしているのに等しい。

今回の「独自制裁」は、「在日北朝鮮当局職員およびその活動を補佐する立場にある者の
北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止」としながら、「対象を従来より拡大する」としている。

このように曖昧な表現の措置は、在日朝鮮人の祖国往来の権利を無限定に制約し、
誰に対しても制約する可能性につながる。在日朝鮮人が本国にいる親族と会う権利に
ふたをしてしまう
うえ、その対象者をどこまでも広げられるからだ。

そもそも、今回の「独自制裁」は政府が勝手に行うことはできない。
国会が法律できちんと対処しなければならない。
そういった意味で、政府に対する国会の監視機能が弱まっているとも捉えられる。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/02/il-862/
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2000年代から、日本は「制裁」と称して北朝鮮との人的・物的交流を断ってきた。

北朝鮮は国を閉ざしていると私たちは教えられているが、
実際は日本が一方的につながりを断ち切ってきたのである。

国を閉ざしているのは日本であって、北朝鮮ではない。


その証拠に現在、北朝鮮は、東は中国・ロシア、西はイラン、エチオピア、ナミビアなど、
全世界で162カ国の国家と国交を結んでいる主要国で国交が正常化されていない国は米仏日のみ
                     ※日仏→米仏日に訂正

第4回いける本大賞、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞し、
多くの左翼にも絶賛され、2010年代前半のヒット作となった白井聡氏の『永続敗戦論』には

「かの国と正常な国交を結んでいる国はほぼ皆無と言って良い状態となった。」

と書かれている(同書110頁)が、これは事実に反する記述だ。


日本の右傾化は左翼の右傾化。戦後の民主主義を問う本でさえ、この体たらくである。
呼吸をするように北朝鮮は嫌われ者なのだという意識が刷り込まれていく。


民主主義者の手によって


制裁

法律や規則、また慣習・伝統などの社会的規範に背いた者に対して加えられるこらしめ
また、そうした懲罰を加えること。(大辞泉より)


「制裁」というのは、懲らしめる、つまり正義は我にありという意識を前提にした言葉である
 向こうが悪い。俺が正しい。こういう認識でないと使えない。


162カ国との国交が見えず、あるいは見えても過小評価しようと奮起するのは白井氏だけではあるまい。
あくまで印象論だが、白井氏は自分の意見というより一般の評価をただ書いただけのように見える。

先日、偶然視聴したニュース番組では、
北朝鮮のナミビアへの労働者派遣が、さも不気味なことであるかのように報じられていた。

番組に呼ばれた専門家は「外貨の獲得のために国民を搾取しているのです」と語っていた。
仮に搾取しているとしても、その主体はナミビアの企業であり、北朝鮮本国とは関係がない。

ベトナムや中国、フィリピンなどのアジア出身の出稼ぎ労働者の中にも、
日本の悪徳企業に搾取されている人間は少なくないが、これを異常視する声はあまりない。

その搾取をもって、日本の自民党政権を崩壊させるために軍事手段に訴えよと叫ぶ
政治家や学者、ジャーナリストがいたら、正真正銘の暴力主義者(テロリスト)と呼ばれるだろう。

だが、これが中国や北朝鮮が対象になると、途端に彼らは「民主化運動家」になってしまう。
こういう理不尽さに対して怒りを露にする人間が発言権を奪われているのが今の日本だ。

先日、朝鮮新報で人工衛星打ち上げに関する報道姿勢を批判した浅野健一氏は、その好例だろう。

では、このような真似をしてまで貫徹せんと
政府やメディア、知識人が躍起になっている「制裁」と称する事実上の鎖国政策に意味はあるのか?

ない


先述したように、これまで日本は徹底して北朝鮮と国交を断絶してきた。
元々、経済的につながりのある国が一方的にラインを断ち切るなら効果はあるだろう。

だが、もともと経済交流など無いに等しい日本が「制裁」をしたところで何の意味があるのか?
食料や衣料といった人道支援のための物資すら送っていない国に出来ることなどはない。

そのため、北朝鮮ではなく、朝鮮半島にルーツがある組織や外国人の自由を剥奪しているのである。
これは、客観的にみれば「経済制裁」ではなく、「人権侵害」「嫌がらせ」という類のものだ。


ただ、一応、フォローすると、この種の事実上の「人権侵害」は日本特有のものではない。
同じくアメリカに媚を売り、自国の領土を基地として謙譲している韓国も同様である。


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「北の食堂」禁止令 

南当局が「海外にある北の食堂」を利用してはならないと「禁止令」を出した。
支払われる外貨が「北の核・ミサイル開発に使われる」というのが理由だ。

∇嘘の上塗りとはこのことだ。
 南当局は、北に対する「独自制裁」として開城工業地区を全面中断した。統一部長官は
「北の労働者に支払われる賃金の70%が核・ミサイル開発の資金になっている」と説明した。
 それが事実なら、南当局は国連安保理決議に違反したことになる。
 北に制裁をかけるどころか、軍事力強化の財政支援を続けてきたということだ。

∇この矛盾点を突かれ、国会で野党の集中砲火を浴びた
 統一部長官は「資金流用の証拠はない」とトーンダウンせざるを得なかった。

 ところが、その後の国会演説で大統領が資金流用を既成事実化した。

 今の南では、辻褄の合わないデタラメでも、
 独裁者の発言はすべて絶対視され、官僚組織がそれを金科玉条のごとく守るようになっている。


 北に支払われる外貨が核ミサイル開発の資金となるという妄想は、
 平壌冷麺や大同江ビールを提供する食堂の金庫にまで広がった。

∇12カ国に130店舗以上あるという朝鮮食堂。
 歌と踊りの公演を行う店舗もあり、気軽に朝鮮を体験できる。
 様々な国の人が利用しているのに、同じ民族が立ち入れないなんて、こんな滑稽なことはない。
 南の旅行者が外国人に「北の核開発を止めるために平壌冷麺を我慢する」と言ったら、
 それこそ世界の笑いものになってしまう。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/02/skst-81/
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これもよく読めば、北朝鮮ではなく自国の人間の自由が剥奪されていることに気がつくだろう。


こういう類の自国の民への嫌がらせを日本や韓国の主流左翼は「経済制裁」と呼んでいる。
右翼がそう呼ぶのはわかるが、仮にも不戦を誓う左翼がそれで良いのだろうか?


もはや北朝鮮の核実験を中止させるための実効的な制裁を行っているというよりも、
単に北朝鮮の印象を悪化させることを目的としたプロパガンダに専念しているように見える。
(あるいは内側に向けられた暴力が外側を向いているかのように国民を騙していると言うべきか?)

これは私が勝手に思っていることではない。
当の日本や韓国、アメリカも独自制裁が有効的ではないと考え、中国に応援を命じている。

頼んでいるのではなく、命令をしている。我々に従えと叫んでいる。
これについては御用新聞Aが社説で政府の代弁をしているので以下にリンクを貼っておく。

[朝日新聞] 対北朝鮮 「日米韓」連携を糸口に (2016年02月17日)

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北朝鮮の核・ミサイルによる挑発にどう向き合うべきか。
カギを握る中国は、北朝鮮を崩壊させるような混乱を恐れ、制裁の徹底には腰が重い。

まずは日本、米国、韓国の協力を再構築し、
それを土台として、中国を連携に巻き込まなければならない。

将来的には、ロシアも含む6者協議の再開につなげることが望ましい。

(同社説より)

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一応、対話の必要性も申し訳程度に書いているが、対話をする役目はアメリカに投げている。
また、後半部にも慰安婦問題の妥結を肯定的に書いた箇所があるが、これは注目に値しよう。


なぜならば、最近の北朝鮮制裁・慰安婦問題妥結・南シナ海の領土問題における
日米韓の動きは全て根っこの部分でつながっているからである。


すなわち日米韓+アルファ(比・台・越)による中国包囲網の形成を狙う動きだ。
日本では中国が軍事拡張をしているといわれているが、実際には逆である。

地図を眺めるだけでも米軍の力によって
中国が南シナ海よりも内側の地域に封じ込められているのがわかるだろう。

この点は、最近の北朝鮮問題や慰安婦問題を考える上でも大変重要なものなので、
後日、改めて、アメリカと同盟国による中国封じ込め体制について説明をしたいと思う。


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