先日、『彼女が酒と煙草が好きだという話を書こうと思ったけど、
終わらなくなりそうなので、又次回に。』ということで終わったので、
今日はその話を。
【過去記事】
我輩はシャム&偽シャムなり
続・我輩はシャム&偽シャムなり
彼女が犬のようにリードで散歩し、ドライブ好きという他に、
特異な性質はまだまだある。
ある時、友人と、粕漬けでイッパイ呑んでいた。
その頃私はまだ煙草を吸っていて(今はもう止めましたが)、
友人と二人煙草を吸いながら、粕漬けをツマミに(シブイでしょ)
ビールを飲みながら世間話に花を咲かせていた。
ふと見ると、彼女、粕漬けを舐めているではないか。
不味ければ止めるだろうと様子を見ていたのだが一向にやめる気配がなく、
いくらなんでもやばいでしょと止めさせたら、足がふらつき酔っ払っていた。
おまけに煙草の煙を、鼻の穴を広げて吸っている…。
鼻の穴を大きく開き、空中に漂う煙を追うように上向きに首を伸ばして、
くんくんと何度も嗅ぎうっとりとしている姿はちょっと引く。
煙草に火を点けるとすぐさま寄ってきて傍に座り、この仕草をする。
時にコップに入っているビールを舐めることもあり、
何とも頼もしい人間臭い猫だった。
また、普通猫は歩く時に物を落とさぬように歩くものだが、
彼女は自分の進路が塞がれるのをとても嫌い、
前に塞がるものを決して避けず、尽く蹴散らし進むのだった。
だから仕事から帰ってくると部屋の中は凄まじく荒れて、
棚の上の飾りや小物が散乱していることがしょっちゅうだった。
ティッシュは箱から全部引き出され、鉛筆などは穴だらけ、
うっかり彼女の手の届く所に煙草を置こうものなら、
1本残らず引き出され牙の穴が…。
当然その煙草は最早スカスカで吸えません…。
冬はコタツの真ん中で堂々と身体を伸ばして陣取っているのだが、
下手に足を伸ばすと噛み付かれるので(特に男性)、
遊びに来る友人達は皆この子を怖がっていた。
なかなかの『ボディガード』兼『用心棒』振りを発揮していた。
しかし彼女もお年頃になり、ある時ついに発情。
私はその頃、雀の涙ほどの給料で生活するのにメイッパイで、
避妊手術をしてやるだけの余裕もなかったので、
彼女は本能の、それも積極的なシャムの血の騒ぐがままに吼える声に
私は毎晩のように悩まされた。
私も沢山の猫の盛り声は聞いて慣れているつもりだったが、
彼女の毎夜繰り返される吼声の凄まじさは想像を絶するものだった。
(いや~、ほんと、サファリパークの猛獣です。)
結局彼女を狭いアパートに閉じ込めておくのは無理だと悟り、
彼女を実家(田舎のそれなりに大きい農家)で生活させることにした。
勿論、あれほど同居人のように生活を共にしていたので
離れるのは辛かったし寂しかったです。
↓実家の庭を探索する彼女
しかし彼女はすぐに家族に馴染み、田舎でも沢山の武勇伝を繰り広げ、
家の近所だけでなく、まさかと思うような遠方まで名前を知れ渡らせたようだ。
道の真ん中を堂々と歩き、車が来ても退かないので仕方なく車の方が退く。
実に危なっかしいと言う、苦情に等しい笑い話で名前が知れていた。
田舎は車の往来が少ないから笑い話で済むのだけれど。
またあるときは道の真ん中で自分の何倍も大きな犬と睨み合い、
犬の方が尻尾を巻いて逃げたという。
犬にでも喧嘩を売られたら買うという根性だ。
近所の犬も彼女には一目おいていたらしく、犬より強い猫という評判だった。
その行動範囲は10キロも離れた村で見かけたとか、
隣村の田圃道を歩いていたとか、オス猫並のテリトリーだったようだ。
彼女が車好きというのも有名だった。
父が車で出かけようとするとドアを開けた途端、
父より先に乗り込み当たり前のように待っているという話だった。
これが自家用車に限るならまだしも、来客の車でも同様で、
お客さんが用件を済ませ帰ろうと車のドアを開けると、
いつの間にかひょいと乗り込むので、
気付かないで発進しそうだと、しばしば来訪者を驚かせていたようだ。
カリカリキャットフードで育ったせいかは分からないが、
彼女もまた実家のお米の猫飯を食べるのが下手で、
必ず鼻の頭にご飯粒が1個ついていると、母が笑って話してくれた。
勿論、この子も爪を出したままカツカツ歩くので、そのことも笑話だった。
でも肝心の鼠は捕らなかったらしい。(田舎では一番、猫に望む仕事?)
彼女の性格だと、「小物には興味ない」といった感じなんだろうか?
田舎の家族はとても不思議がっていた。
彼女が田舎で産んだ子供たちもとても賢く、彼女以上に父母に可愛がられた。
見ると思いっきり普通の雑種だが、食事時には子供のように父母と一緒に、
膝の上、或いは肩の上に乗って(左の子)食卓についていたらしい。
(父が付けた名前が可愛い。はなこ&たまこ。)
大きくなってもこんな風に上手に肩に乗って、
人が口に運ぼうとする食べ物を催促していたらしい。
こんな個性的な彼女との別れは突然だったけど、実に不思議な別れだった。
何年ぶりだったか忘れたが、それは雪の冬に実家に帰った時だった。
私が家にいる時に、近所の人が笑いながらやってきた。
「○○さんとこの猫が車が来ても道の真ん中からちっともどかないから、
さっぱり車が進まない。堂々と歩いてるねえ。」
そんな話しを耳にしたのは雪の轍がくっきりと2本残る晴れた午前中だった。
午後になって外で近所の誰かが母と話す声がした。
「そこで猫が轢かれて死んでるけど、お宅のとこのじゃないかい?」
私は不安を押さえ付けて平常心を装って家の前の道へ出た。
雪に埋もれ更に幅の狭まった、真っ白な道の真ん中に、
出血した様子もなく彼女が既に息絶えて冷たくなっていた。
私が何年ぶりに帰省し、翌日に帰るというその前日だった。
まさか自分が実家にいる、とても限定された時間に、
彼女を天国に送ることになるなんて思いも寄らないことだった。
父母も私も悲しいと言うより、どこか安堵の気持ちだった。
一緒に生活した懐かしい場所へ、
あの頃のように一緒に車に乗り込んで帰りたかったのかな…って。
みんなそう思ったのだった。
今でも私の中では彼女はとても思い入れの強い1匹である。
そして、もしも叶うなら広々とした自然に囲まれた場所で、
またいつかシャムを飼いたいものだと思う。
で、今一緒にくらしているのがこやつです。
違う意味で非情に猫ばなれした人間臭い猫です。
この状態で静止、、、何を見ているのか、、、
ぼ~~~っとしている……ゾンビのポーズ
もしも銀ちゃんにシャムの要素があるというなら、
目つきの悪い三角の顔と、やかましくておしゃべりというところかな。
銀はとにかく男の癖によく喋る(啼く)のだ
(「ぎゃんた、うるさい!」と言われることがしょっちゅうです。)
銀ちゃん、元気でいてくれよ~
そして天然おとぼけキャラでこれからも癒しておくれ~
長い時間お付合い頂きありがとうございます。
皆様のペットに愛と幸せが降り注ぎますように。