「佳奈ちゃん、新しく入った原田なんとかとかいう女はもしかしたら加賀美屋を
乗っ取るつもりだよ。」
最近よく私に電話をかけてくる小禄が電話口で言う。
私は、現在、南西諸島の徳之島にある加賀美屋という老舗旅館に勤めている。
腰掛けで、在る程度お金を稼げればいいと思って、女将に釣られて働くことになった。
しかし、なんというのか、私は加賀美屋の若女将か仲居頭になれと女将に言われて
しまい、周囲にもそう思われている。
指揮官になるならば指揮官になるならばいいけれども、こんな離島の旅館の指揮官は
嫌だったのだが、周囲は許して貰えなかった。
現在、調理を担当している女将の下の息子が、高校の同窓としての原田とかいう女性を
女将候補として推挙した。
私の同僚の仲居は、立ち振る舞い、琉球舞踊その他諸々女将に相応しい態度が
気に入っていたようである。
彼女は高校は鹿児島市内だったものの、沖縄で生まれ育ちその上貴族の末裔らしい。
私も彼女で良いと思って居るので、
「私も女将は原田さんが良いと思います。」
と言った。実に面倒くさいのだ。
「やっぱり佳奈ちゃんもそう思うんだ。」
同僚の仲居の一人は言う。
「ああ。」
私は素っ気ない言葉を言う。
女将は、自分の考えに曇ったようだった。
原田の紹介が終わった跡、私は女将に呼び出された。
「あんな女に、加賀美屋をとられてもいいのですか?」
すごい剣幕で怒鳴られた。
「私は、加賀美屋はカネ稼ぎでここに来ているって、ここに来た当初に言った筈じゃないですか
そんなに、私にこだわらなけれくても。」
私は反論した。
「佳奈さん、お金稼ぎという言葉は使いなさんな。」
いつもこの調子で、私を此處に縛り付ける。
「あの原田さんの事はどうですか?」
女将に私は聞いてみる。
「あの女性は信用していません。」
女将の冷たい表情は変わらなかった。
つい先日横濱から、女将の甥っ子の婚約者である朝倉夏美という女性が
「加賀美屋の女将になります」
とかいって、数ヶ月やってきたけれども、旅館を引っかき回したあげく、追放という
事件があった。
また、其れの二ノ舞になると女将は言いたいのだろうか。
「あのー,原田は先日の朝倉夏美な奴だと女将は言いたいのですか?」
私の質問に女将は頷いた。
「まあ、やってみないと分かりませんぜ。私のような野卑な女よりは
加賀美屋の為になると私は思っていますが。」
私は黙っている女将にそう答えた。
「そのことは、跡で分かるはずです。」
といって、
「佳奈ちゃんも客室の仕事があるんじゃないの。」
と同僚に合流することを勧めた。
つづく
乗っ取るつもりだよ。」
最近よく私に電話をかけてくる小禄が電話口で言う。
私は、現在、南西諸島の徳之島にある加賀美屋という老舗旅館に勤めている。
腰掛けで、在る程度お金を稼げればいいと思って、女将に釣られて働くことになった。
しかし、なんというのか、私は加賀美屋の若女将か仲居頭になれと女将に言われて
しまい、周囲にもそう思われている。
指揮官になるならば指揮官になるならばいいけれども、こんな離島の旅館の指揮官は
嫌だったのだが、周囲は許して貰えなかった。
現在、調理を担当している女将の下の息子が、高校の同窓としての原田とかいう女性を
女将候補として推挙した。
私の同僚の仲居は、立ち振る舞い、琉球舞踊その他諸々女将に相応しい態度が
気に入っていたようである。
彼女は高校は鹿児島市内だったものの、沖縄で生まれ育ちその上貴族の末裔らしい。
私も彼女で良いと思って居るので、
「私も女将は原田さんが良いと思います。」
と言った。実に面倒くさいのだ。
「やっぱり佳奈ちゃんもそう思うんだ。」
同僚の仲居の一人は言う。
「ああ。」
私は素っ気ない言葉を言う。
女将は、自分の考えに曇ったようだった。
原田の紹介が終わった跡、私は女将に呼び出された。
「あんな女に、加賀美屋をとられてもいいのですか?」
すごい剣幕で怒鳴られた。
「私は、加賀美屋はカネ稼ぎでここに来ているって、ここに来た当初に言った筈じゃないですか
そんなに、私にこだわらなけれくても。」
私は反論した。
「佳奈さん、お金稼ぎという言葉は使いなさんな。」
いつもこの調子で、私を此處に縛り付ける。
「あの原田さんの事はどうですか?」
女将に私は聞いてみる。
「あの女性は信用していません。」
女将の冷たい表情は変わらなかった。
つい先日横濱から、女将の甥っ子の婚約者である朝倉夏美という女性が
「加賀美屋の女将になります」
とかいって、数ヶ月やってきたけれども、旅館を引っかき回したあげく、追放という
事件があった。
また、其れの二ノ舞になると女将は言いたいのだろうか。
「あのー,原田は先日の朝倉夏美な奴だと女将は言いたいのですか?」
私の質問に女将は頷いた。
「まあ、やってみないと分かりませんぜ。私のような野卑な女よりは
加賀美屋の為になると私は思っていますが。」
私は黙っている女将にそう答えた。
「そのことは、跡で分かるはずです。」
といって、
「佳奈ちゃんも客室の仕事があるんじゃないの。」
と同僚に合流することを勧めた。
つづく