ブルーシャムロック

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青天井の牢獄_また

2015-05-11 12:27:48 | 信・どんど晴れ
「徳川家康・秀忠父子、エノケン・・・。下町をつくってそこで活躍した人間が
世を去って、時代が変わる。そしてかつての臭いはなくなっていく。」
松本佳奈が、下町に一人で旅行した後彼女のルームメイトである歴女として
知られる高槻久留実がそうつぶやいた。
ここは松本佳奈他学の学生とルームシェアをしている神奈川縣釜利谷の下宿である。
「浅草に地元に関するposterの隣に、東北のposterが結構貼られていて吃驚した?」
同じくルームメイトの横手淡雪も皮肉っぽく横で言う。
「まあね・・・。横手のかまくらと焼きそばに関するポスターが貼られているのには
どん引きしたけれどもね。」
佳奈は、思ったことを口にした。
「ソレが現実。関東に来ない人には席は設けられていないし、沢山居る人の感情に負けて
しまう上に、
その人たちの都合の為だけにある。」
他の人間は又始ったかという顏で横手淡雪を見る。
「まあ、関東は何處でも関東だけれどもねぇ。佳奈ちゃんは、田口涼平プロデューサーが
演出した
{蒲田Rhapsody}という映画を見たことがある。」
淡雪が熱り立っているのをみて、高槻久留実は、佳奈に質問した。
普段映画やドラマの脚本家やプロデューサーなんて気にならないのに田口涼平という名前

やたら印象的だった。
「ああ、それ大学の補欠合格が決まって、上京する前の晩、友人から借りたビデオで見た
よ。」
と佳奈は言う。
「あの映画は私も見た。私も同じビデオだ。」
高槻久留実は言う。
「私も以下同文。近所のレンタルビデオ屋に足を運んだとき雪が降っていた。」
と横手淡雪も思い出す。
「でも、その映画がなんで気になるのさ。」
佳奈は久留実を見る。
「あの映画が大ヒットをしたのは、関東の事情があると私は思う。
舞台になった蒲田やそこと同じ沿線の川崎や濱の人間が
あんたが憬れた下町に対する違和感に対するアンチテーゼとして
担ぎ上げられたと私は分析している。」
久留実はまるで評論家みたいだった。
この映画1960/70年代頃の蒲田が舞台の作品であり、
かつてはいわゆる浅草・深川・上野あたりを舞台にしたドラマや映画と
同じ構造だったが、蒲田という所がそこに馴染みのある人々に支持された
格好だった。
「たしか大井川以西出身の作家のc氏やd氏もほど近い大森や三多摩に居を構えたと
聞く。」
横手淡雪は口を開く。
「そうだね。他に漫画家の水木しげる氏も調布にに居を構えたって聞く。」
高槻久留実は言う。
「じゃあ、蒲田とか神奈川縣の人は大井川以西や沖縄の人と対峙するケースが多いという
ことなんだ。」
ルームメイト二人の言葉を総合しながら、佳奈は二人に答える。
「みんな上京してから間もないから、佳奈ちゃんも関東の事をじっくり見ることだ。」
高槻久留実は言う。
「そういえば、私のclassmate一人が鹿児島本土で、もう一人が沖縄の人だったな。」
横手淡雪が言う。
佳奈は、二人を冷静な顏で見ていた。
「鹿児島本土と沖縄の人というのが、関東の事情を体現しているね。」
とつづけた。
釜利谷の夜は更ける。
おわり
コメント
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