太郎 「一緒に乗るか」
優 「えっ?」
太郎 「来いよ!」
優 「こっこわい・・・」
太郎 「大丈夫だから。」
優 「やっぱり怖い。 馬のこと信じられない・・・。 ごめんなさい」
太郎 「おれを信じろ。 おれを信じれば大丈夫だから。 ほら、優!!」
きゃっ
ついに名前で優を呼んだ~
『おい』でも、『お前』でもなく、『 優 』と呼び捨てだ。
別に私が呼ばれたわけじゃないのに、胸がキューンとなった。
いつもの軽口をたたいているアホ面の太郎じゃなく、力強く頼りになる太郎さん。
「ほらっ」と差し出された手を、私が思わず握りた~い
優が厩舎でアルバイトを始めてから、太郎と優の距離が近くなったのを感じる。
優の仕事ぶりを見て、太郎は優を認め、そして期待をし、その距離はより一層近くなった。
しかし、それはあくまで師匠と弟子としての距離である。
今回の落馬から優が馬恐怖症となり、そのケアを通して、
二人の関係(おもに太郎の気持ち)が、違った方向へと変わっていくのを期待してしまう。
「太郎さんのこと、好きになってもいいんじゃない?」という言葉が、
本当は私も好き・・・ という優の琴子さんに対しての後ろめたさを、
解き放ってくれるように思える。
二人で馬に乗って、優に笑顔が少し戻ったことに、ちょっとほっとした。
太郎さんが、自分を信じろと手を差し出してくれた
それが、優の 『はじめのいっぽ』 だった。