▲ 2024年1月1日能登半島地震、テレビ中継画像より
2024年の元旦は、午後から事務所で仕事をしていたのですが、
揺れを感じたのでWEBで地震速報を確認しました。
地震速報で、震度6強と表示されたので「被害が出ているな」と感じ
さらに地震が続き震度7と表示された時には、大変な大地震だと確信しました。
被災された人々が早く救済されますように。
久々の元旦ブログをアップしてから帰宅しテレビで状況を確認していました。
南海地震がいつくるのか、また大津波がきてしまった場合の被害を避けるのは難しいですが
地震でご自身の家の強度が心配な方もいらっしゃると思います。
震度5であれば、ほぼ被害はありません。
1980年以前の旧耐震の建物(正確には1981年4月以前に完成した建物)でも
震度5で倒れることなど、まずありません。
自治体の耐震診断で、0.2という判断された家でも、
当時の建築基準法の趣旨と横浜市からの依頼で
旧耐震の家には「耐震診断」やその結果説明の「訪問相談」を
長年行ってきた経験からも倒壊はしないはずです。
東日本大地震の時には、「耐震診断」で0.2の結果が出たお宅に
横浜市からの指示で、「訪問相談」といってその結果説明にお伺いしていた時でした。
耐震診断で0.2の結果が出たお宅では
「震度4でも倒れるのではないか?」と心配されていしたが
「0.7であろうと0.2であろうと、震度5までは大丈夫です。
震度6以降になると、揺れは体感で2倍になる感じですので
どうなるかはわかりませんが。」
という説明をしていました。
ちょうどその時に東北大震災による震度5の揺れが長く生じ
お客様が揺れが大きくて心配になりだしたので
外へふたりで出たのです。
電柱や電線が大きく揺れていたのを覚えています。
やはり、大きく揺れただけでその家自体は何ともなかったのです。
事務所へ戻るとその時事務所にいたスタッフ4人全員がビルの外へ飛び出して待機していて
鉄筋コンクリート造のビルですが事務所内の本棚からたくさん本が落ちていました。
その他の住宅でも、0.2またはそれ以下の耐震強度でも横浜市の依頼で
たくさんお伺いしています。
横浜市青葉区では東日本大震災で震度5になりましたが、
0.15の家も含めて1軒も大きな被害は受けていませんでした。
阪神大震災では、馴染みのあるビルや阪神高速道路までが
完全倒壊しているという生涯忘れられない衝撃的な映像、
小千谷地震(中越地震)では関越自動車道の小千谷ICの建物や施設の建設に
携わったので、小千谷の街を含めてひとりで被害がどうかを確認に行きました。
東北大地震(東日本大震災)では、津波の衝撃に建築家としての無力さを感じ
建築士仲間と現場を見に行った時は、
辺り一面流されて何もない場所にとどまっていた時に
気分が悪くなってしまいました。
大きな地震が起きない地域だったはずの熊本では、震度7を2回記録し、
新しく建てられた長期優良住宅が大きな被害を受けるという事態も起きました。
今回の能登半島地震のテレビ映像を見ていて、
驚いたのがテレビから拝借してしまいましたが、最初の写真です。
既存の旧耐震の構造の住宅に耐震補強を行う方法はいくつもあります。
コンピューターを使って計算するのですが、
同じ家に対しても1.0にする方法は何千通りもの組み合わせが考えられます。
基礎を強くする方法は費用がかかる割に効果が薄いので、
同じ費用を使うなら、私は効果の高い建物を強くする方法をお勧めしています。
「基礎がもし折れても、建物がしっかりしていれば傾いても倒壊しない。
コンピューターを駆使して建物をしっかり補強した方が基礎を強くするより
費用も安くできる場合が多く有効です。
基礎をしっかりさせても、旧耐震の構造の場合は熊本地震で起きた
長期優良住宅が倒壊したケースになってしまうこともあります。」
とお話しています。
最初の上の写真は、
新耐震の建物でしかも最近建てられてしっかり造ったので建物は倒壊しなかった、
傾いても建物の耐震的な構造体がしっかりしていたためです。
私の考えていたような建物だったのです。
しかし基礎というよりも地盤が軟弱で(多分、液状化した)で
家がひっくり返ってしまったのでしょう。
これでは、いくら基礎と建物だけを補強しても無駄です。
地盤を変えないといけません。
新築時ならともかく、既存の耐震補強では費用や工事方法を考えても
実質的に無理があります。
そこまでするなら、費用的にも建て替えた方が良い
という結論になるでしょう。
お住まいになっていた人が無事かどうかは不明です。
ただ、家屋が壊れて人の上に載ってくることはなかったので
人が投げ出されての衝撃と家財道具がぶつかって来なかったかどうかです。
しかし、下記のように1階がつぶれて2階が載ってきた、
またはその後、2階も衝撃で壊れたという方が、はるかに危険です。
これだと圧死してしまうか、全く動けなくなってしまいます。
▲いずれも私が撮った中越地震(小千谷地震)の写真から
お伝えしたいことは、次の事項です。
1)旧耐震のお宅は、全国の自治体で無料で耐震診断を受け付けています。
まだの人は申し込みをして、どの程度の耐震強度か知ってください。
2)横浜市の場合は、さらにその結果に対しての説明や、どのような工事をするか
耐震強度1.0にするにはどの程度の工事費用が掛かるかなどを教えてくれる
「訪問相談」があります。
耐震診断をしただけで、まだ受けていない人は無料ですので
横浜市建築局(下記に連絡先記載)に申し込んで受けて下さい。
3)耐震強度1.0以上にするために旧耐震の人には補助金制度はあるのですが、
自己負担額が多く期間も長いので断念される方も多いです。
その場合、寝室だけとか、2階が載っている1階部分だけとか、
その状況と予算に応じて耐震補強をすることも可能です。
予算100万円で、1階だけを補強したこともあります。
(診断結果にもよりますが、1階がまず潰れて2階は衝撃がなければ
そのままのケースが多い)
4)それも難しい場合、 下記の耐震ベッド
(そこで寝るか、中にいると家が崩れても守ってくれる)があります。
この費用が工事費含めて65万円程度のようです。補助金は10万円だけですが、
お年寄りがいる人、脚の不自由な人、
または居間のコーナーや近くに設置すれば、小さなお子さんの遊びスペース、
読書やテレビを見ている間なども守ってくれます。
何もしないよりも良いので、検討してください。
▲耐震ベッドの例です
横浜市の場合の、耐震診断、訪問相談(耐震診断を受けた方のみ)、防災ベッドの問合せ先は
横浜市建築局企画部建築防災課で
TEL 045-671-2943 FAX 045-663-3255
となっています。
5)耐震補強工事を行う場合、
横浜市の補助金を使う場合は設計チェック、工事中チェックもしてくれるので安心です。
但し、家全体を耐震強度1.0にしないといけないため自己負担額が多いのです。
断念して部分的に行う場合は、耐震補強を専用のコンピューターソフトで行うだけでなく
本当に既存耐震工事をしっかり知っている建築士かどうか確認してください。
横浜市でコンピューターソフトを使って耐震診断を行う新しい判断基準の採用のため
建築士を募集し、希望者に試験したところ一級建築士でも半分が不合格となり、
耐震診断と補強を専門に行っていた建築士事務所の人さえも不合格になった例がありました。
これは、新築の考え方を既存住宅に適用するには実質的に工事が無理なため、
既存耐震補強の場合は、新しい考え方や判断で行うためです。
新たに自分で勉強しないと建築士も知らない内容なのです。
リフォーム工事会社が耐震をうたってのリフォーム詐欺がありますが
当然、それには注意して下さい。
床下や小屋裏に器具を付けまくることで、高額な金額を請求しますが
この工事に耐震の効果はありません。
さらに、外壁を補強することなく外壁から柱と基礎に金具を
付けることも効果はありません。
6)新耐震の方は、手抜きや耐震性を無視した1、2階のバランスでなければ
あまり心配はしなくて良いのですが
(阪神大震災でも、大きな被害、全壊などは少なかった)
家具転倒防止(突っ張り棒だけだと、天井が壊れて意味がない場合がある)は考えること。
また2000年~2002年頃に家を建てて、中間検査が無かった地域は、
建築基準法の内容が大きく変わったのですが、職人が慣れておらず、
筋交いを切ってホールダウン金物を付けたりなど、本末転倒、
とんでもない工事も頻発したので、安心はできません。
不安な人は、リフォーム工事の時に、確認すれば良いでしょう。
(その確認のために壁を剥がすのは不経済過ぎるからです)
▲2002年に私が月刊ハウジングに寄稿した記事と写真の一部
さらに、建築確認申請で筋交い計算が不要となったため、
新築の瑕疵担保保険が付かない時期で中間検査も不要の地域では
構造計算違反で建築士の処分が出たりしました。発覚しただけで一部だと思います。
(書類チェックも検査もなかったので、間取り優先で建築士がしっかり検討をしていなかった)
不安な方は筋交いがどこに入っているか、
それを示している図面をご自身が受け取っているか
確認すると良いでしょう。
以上、建築士として旧耐震の方が最低限行って頂きたいこと
新耐震でも不安な方に対しての考え方を段階的に述べてみました。
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ご意見があれば、お気軽にどうぞ!
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