◆切り絵「平野ひな負傷でも銅メダル」 A3 8月3日に行われたパリ五輪、卓球・女子シングルス。銅メダルを懸けて早田ひなが挑んだ3位決定戦の相手は、韓国の申裕斌(シン・ユビン)。準々決勝で死闘の末に平野美宇に勝利した今大会の“キーマン”ともいえる存在だ。 前日の準決勝と同様に、左腕にテーピングを施して登場した早田。そのケガの影響は、前日からプレー全体に感じさせていた。 前日の準決勝。中国の孫穎莎との大一番。いつものように、チキータからの展開をつくれない早田の姿があった。 レシーブに回った際に早田が最も得意とするのは、チキータからの展開だ。
相手がサーブから攻め込んでくるところを、逆にチキータで先手を取り、そこから4球目で攻撃してしまう。
この日はネットミスが多い。ボールがネット以上に持ち上がらない様子が見受けられた。
さて第1ゲーム。昨日より、バックハンド全般が冴え渡る早田ひなの姿がそこにあった。
本来の動きとは違うかもしれない。それでも「早田らしさ」は垣間見られる。
バックハンドも調子は戻っているように見えるが、それでも痛みが出にくいほうの打ち方、フォアハンドを選択したのだろう。
また、ユルく、柔らかく返球するブロックも多用していく。腕に負担が少ない技術だ。
デュースに入ると、11-11からレシーブで回り込んでフォアドライブ一発抜きも披露。フォア、フォア、フォア。
徹底したフォアでこのゲームを取った。
そんな中で、卓球の神様は、早田ひなに最後の試練を与えたのだろうか。
テーピングを巻き、痛み止めの注射まで打った早田ひなの左腕は、あまりにも残酷な現実として、早田を苦しめる。
それでも、この左腕でやるしかない。
負傷した腕でとったメダルは世界3位の銅メダルではなく「世界最高の銅メダル」だった。