忘れな草の花籠

確かハンドメイドブログだったはず・・・

「縮み」志向の日本人

2007-05-30 17:47:11 | BOOK
結局、今日もさがしたけれど見つからないレシピ。
なんでかなー。
ただの思い違いなのかなぁ・・・。
あきらめるしかないのかなぁ。
ネットで検索してもないんですよね。orz


さてさてひさびさにおもしろい本を読みました。
講談社学術文庫からでている、
『「縮み」志向の日本人』(李御寧著)です。
一気には読めないので時間を見つけては
ちょこちょこ読んでました。

立ち寄った本屋に山積みされていて
表紙の扇にひかれてついつい手にとって中を見ると
なんだかおもしろそうな内容だったので
衝動買いしちゃいました。
20年も前の論文らしいのですが
とても新鮮でした。

裏表紙の説明を引用しておきますね。
「小さいものに美を認め、あらゆるものを「縮める」ところに
日本文化の特徴がある。世界中に送り出された扇子、
エレクトロニクスの先駆けとなったトランジスタラジオなどは
そうした「和魂」が作り出したオリジナル商品であった。
他に入れ子型・折詰め弁当型・能面型など
「縮み」の類型に拠って日本文化の特質を分析、
”日本人論中の最高傑作”と言われる名著。」

西洋文化と比較されることはあっても
東洋文化の中で比較されることはなかなかなかった日本。
李氏は韓国の方なのですが、
韓国人の目を通しての比較なのでおもしろかったです。
なぜ東洋の中で日本がいち早く先進国になったのかに
視点をおいていました。

国民性比較論の小咄が載っていたのですが、
これもおもしろかったです。
以下引用。
「宇宙人が地球人の各国民性をテストしてみるため、
地球人がこれまで見たこともない物体をひとつ、
道の真ん中に落とし、彼らは空飛ぶ円盤のなかに
隠れて、それを拾う地球人たちの反応を見守る、
と仮定してみましょう。
・・・・・日本人はそれを拾い上げるや、いち早く
それとそっくり同じものをつくってみるでしょう。
それもただ原寸大に作るのではなく、
トランジスタ化して、もっと精巧に縮小し、
手のひらに入るように作るはずです。」
思わず、「なるほど!」と頷いてしまいました。(笑)

文学作品もいろいろでてきました。
特に石川啄木の短歌は非常にわかりやすかったです。

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる

この歌が非常に日本的らしいのです。
それはこの歌の構文上の特性、
すなわち「の」の助詞法によるものが大きいとのことなのです。
「複雑さを避けて簡単にことばを縮めようとするのが、
好んで省略語を使う日本人の性向です。
世界でもっとも短い詩形式である俳句を生んだ民族が、
どうして他の民族がいちように避けたがる「の」を、
省略してもよさそうな、その「の」を盛んに使うのか。
・・・・・といいますのは、「の」はすなわち、
あらゆる考えや形象を縮小させる媒介語的な
役割を果たしているからなのです。」

東海→小島→磯→白砂
とどんどん縮まっていってますね。
そして最後には「蟹」そして「われ泣きぬれて」の涙一滴にまで
なるのです。
この「の」の役割、それは
「たんなる所有格をあらわす助詞ではなくて、
何かを収縮しようとする意識の動きをあらわす
助詞ということなのです。」
以上は入れ子型の「縮み志向」の型の説明です。

簡単に説明しようと思ったのに思った以上に長くなっちゃいました。
他にも興味深い文が多々ありました。
物に対する日本人の奇妙な愛着心が何か、というような説明。
「日本人は倹素で節約心に富んだ国民との定評はあり、
・・・・・しかし、「物」に対しては例外です。
物(道具)が揃っていなければだめなのです。
それこそ「物足りない」ものです。」
・・・日本人であることを痛感しちゃいました。(笑)

「日本人が西欧文明にいち早く適応して
近代化に強さを示したのは、
彼らに舶来の道具に対する強力な好奇心があったからこそだ、
ともいえるのです。」
日本人の観光客。
彼らは海外にきて何をするのか。
それは「買い物」なんですね。
「物が欲しくてというよりは、その国で
買物をすることによって、そのイメージ、
その風俗を買うのです。
日本人にとってお土産を買うということは、
その地方、その国を学んで理解する方法なのです。」
物欲甚だしい私には
本当に耳の痛い話ですね。

さてさて昨日は
「お客さまは神さまかよっ」という番組がありましたが、
この本を読んでいたので
ちょっと興味深く番組を見ちゃいました。
消費者のニーズにこたえる、
消費者に「親切」にする、というのは
日本の特色のようらしいです。
しかもメーカーばかりが親切なだけでなく、
消費者側も親切だ、と。
それは
「経営者と従業員との間の座、
生産者と消費者との間の座、官と民間企業との座
・・・主と客の対立があるところすべてに
「花道」がもうけられているのです。」
要するに
「日本を経済大国に押し上げたひとつの原因は、
「縮み文化」のファクターである一座建立のあの
「花道」式マネジメントであったともいえるのです。」
ということなんですね。

なんだか長たらしい文になってしまいましたが、
結局日本が先進国になりえたのは
ほかならぬ「縮み」志向の文化があったから、
ということなのですね。
どれだけ「縮み」志向なのか、考察されていた部分が
非常におもしろかったです。

そして特に最後の問題提起に心を奪われました。
マザー・テレサのことば。
「この地球上では二つの飢えの地帯がある。
ひとつはアフリカであり、いまひとつは日本である。
前者は物質的な飢えであり、後者の飢えは
精神的なそれであると・・・。」

これからの日本はどうすればいいのか。
筆者は『古事記』のなかに出てくる
「枯野の船の話」の神話が
日本文化の縮み志向に対する諸問題を解く黄金のカギと思っている、とのこと。

この文章は20年前のものですが、
現代の日本は精神的に豊かではない、と今も言われ続けていますよね。
私たちはいったいどうすればいいのか、
もう一度しっかりと考えたいと思います。

なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし。『枕草子』


長々と失礼いたしました。
読んでくださった方(いるのか!?)、
ありがとうございました。
ひさびさにおもしろい本を読んだので
ついつい書き込んじゃいました。
コメント (8)
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