東京直下型大地震や南海トラフ地震が本当に来るのか!!
南海トラフ地震はいつ起こる?
発生のXデーが近づいているといわれる南海トラフ地震。震度7の激しい揺れと、30メートルを超える巨大津波が沿岸部を襲い、最悪の場合、死者は32万人を超えると想定されています。
また、東京や大阪・名古屋など広い範囲で都市機能がマヒし、経済的被害も最大でおよそ214兆円と見られています。これまでにない被害をもたらす南海トラフ地震とは何か、どう備えたらよいのかを考えていきます。
これだけは知っておきたい、南海トラフ巨大地震の脅威
▼南海トラフ地震では震源域が陸に近く、地震発生から津波到達までの時間が短い。
▼過去には震源域の東西で、巨大地震が時間差で2回続けて起こっている。
▼想定震源域で地震や異常な現象を観測したときに「南海トラフ地震臨時情報」が発表される。
南海トラフ地震で桁違いの被害が…
南海トラフ地震。それは東海から九州まで東西およそ700キロに及ぶ南海トラフに沿って発生する巨大地震です。
この地域ではこれまでおおむね100年から150年の周期で、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生しています。
国の最悪の想定によると、南海トラフ地震では広い範囲で震度6から7の強い揺れが、数分にわたって続きます。
建物の倒壊によって亡くなる人は、およそ8万2000人。
そして津波は、震源域に近い高知県の沿岸では最大34メートル(黒潮町)、名古屋や大阪などにも5メートルの津波が襲来します。
南海トラフ地震では震源域が陸に近いため、地震発生から津波到達までの時間が短いことも特徴です。地域によってはわずか2分で津波が押し寄せます。
津波による死者は最悪の場合、東日本大震災の10倍以上、およそ23万人と推定されています。
そして東京でも最大震度5強の揺れに襲われます。
高層ビルなどは長周期地震動によって、東日本大震災の時以上に大きく揺れると予想されています。
超高層ビルの上層階では、固定されていない家具の多くが転倒。キャスター付きの家具などは大きく移動し、凶器になります。
日本経済全体に及ぼす影響も計り知れません。
南海トラフ地震の被災地は「太平洋ベルト」と重なっています。
ここには日本の人口の半分が暮らし、工業製品の出荷額は国内のおよそ7割を占めます。
国が被る経済的被害は、最大でおよそ214兆円。
これは東日本大震災の被害の10倍以上、日本の国家予算の2倍にもなります。
名古屋大学名誉教授の福和伸夫さんは
「今回の想定死者の数は“直接死”だけ。東日本大震災でも地震のあとで亡くなった方が多かったですが、ここには含まれていません」と指摘します。
福和さんは、「被災者に行政の救援や支援が及ばなくなること」も心配しています。
日本に住む半分が被災するとなると、助ける人と助けられる人が同じ人数。
1人で1人を助けなければならず、結果として行政の支援の力も足りなくなります。
「自らの力で生き残っていくことが大切なのです」(福和さん)
巨大地震発生のメカニズムとは?
どうして関東から九州までの広範囲で地震が起きるのでしょうか。
日本列島の下では、海側の「フィリピン海プレート」が、陸の「ユーラシアプレート」の下に潜り込んでいます。
そのスピードは年間数センチほどで、人間の爪が伸びるくらいのスピードです。
プレートの潜り込みは100年で数メートルになり、次第に歪みがたまります。
その歪みを戻そうとプレートが跳ね上がり、大きな地震や津波を起こすのです。
過去には、「陸側のプレート全部が一度に持ち上がる地震」と「東と西に分かれて持ち上がる地震」がありました。
全体が動くものを「全割れ」、半分ずつを「半割れ」と呼んでいます。
南海トラフ地震の震源域のうち、東側半分で起きるマグニチュード8クラスの地震を「東海地震」や「東南海地震」と呼び、西側の地震を「南海地震」と呼んでいます。
南海トラフ地震を歴史から学ぶ
●時間差で起こる東西の地震
この東西の地震の発生の時間差が、いま研究者の間で問題になっています。
直近3回の南海トラフの地震を見てみると…
・3回前の「宝永地震」(1707年)ではほぼ同時に全部のプレートが動きました。
・2回前の江戸時代末期の「安政東海地震」(1854年12月23日)は、その32時間後に「安政南海地震」が起きました。
・前回は、戦争中の1944年12月7日に「昭和東南海地震」が起き、2年後に「昭和南海地震」が起きました。
●地震は約100年間隔で起きている
さらに古い歴史をさかのぼってみると、100年から150年の間隔で大きな地震が起きていることがわかります。
前回の地震からすでに78年がたっている現在、いつ起きてもおかしくない時期に入り始めているのです。
●体験者が語る昭和東南海地震
直近の地震のひとつは1944年の昭和東南海地震です。
和歌山県熊野灘を震源とし、マグニチュードは7.9。
東海地方を中心に大きな被害をもたらし、死者は1223人に上りました。
この地震は「隠された地震」ともいわれています。
当時は戦時下で、国民の戦意を鈍らせてはならないと、小さく報じられただけだったのです。
1944年、静岡県袋井市の国民学校。地震が起きたのは午後の授業中でした。
3棟あった校舎のうち平屋の2棟が倒壊し、多くの児童が下敷きとなりました。
被害を知った大人たちがすぐに集まり、崩れた校舎から児童を救出しましたが、自宅で亡くなった2人を含む20人が亡くなりました。
中には東京から学童疎開していた児童も2人含まれていました。
犠牲となった児童のことを忘れまいと、地震から50年目の1994年に慰霊碑が建立されました。
震災のあった12月7日には毎年、当時の児童で地震を体験した3人の卒業生が母校を訪れ、震災の語り部として特別授業を行っています。
徹底解説!南海トラフ地震臨時情報とは?
南海トラフ地震に対応するため、国は「南海トラフ地震臨時情報」という新たな仕組みを2019年に立ち上げました。
「南海トラフ地震臨時情報」とは、南海トラフ地震の想定震源域で大きな地震や異常な現象を観測したときに発表され、国民に注意あるいは警戒してもらうための情報です。
●いつ、どんなときに発表されるか?
具体的には、南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合や、プレート境界面で異常が観測された場合、「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が、発生後5分から30分で気象庁から発表されます。
情報発表後、検討会が開かれます。地震発生の可能性の大きさに応じて、
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」
可能性が小さい時には「調査終了」が発表されます。
これらの情報発表まで2時間ほどが想定されています。
●1週間の避難生活の過ごし方
「巨大地震注意」の情報が出された場合は、1週間、地震発生に備えた生活をすることが呼びかけられます。
その間に家具の固定や避難場所、避難経路の確認などを行いましょう。
「巨大地震警戒」の場合は、自治体が定めた事前避難対象地域の住民は1週間避難を続けることが呼びかけられます。
津波が来ない安全な場所、避難所や親戚、友人宅へ避難することになります。
事前避難対象地域以外の場所では学校や企業などは、地震発生に注意しながらも通常どおり活動します。
巨大地震発生を恐れるあまり社会の活動を止めてしまうと、経済などへの影響が大きくなりすぎてしまうからです。
事前避難は1週間で解除されますが、「1週間たったからもう安全」という意味ではありません。自宅に戻っても引き続き地震に注意することが大切です。
「避難によって体調を崩すこともあり、避難している時間の限界だろうということで1週間と決められました。
1週間すぎても安心せず、注意深い生活を始めようということです」(名古屋大学 福和伸夫名誉教授)
事前避難対象地域の詳細はお住まい・勤め先のある自治体に確認してください。
南海トラフ地震 自治体の備えは?
広範囲にわたって被害をもたらす南海トラフ地震。
中でも和歌山県は、「半割れ」の地震が起きた場合、東西の地震で2回被災する可能性があるといわれています。
想定される死者は最悪の場合およそ8万人。
被災建物は19万棟にも及びます。
●那智勝浦町の取り組み
海に面した那智勝浦町は地震が起きた場合、およそ3分で最初の津波が到達。高さは最大で18メートルにもなると予想されています。
町ではこれまで、津波タワーの設置や屋上に上る避難階段の設置、さらに自主防災組織が整備する避難路に補助金を出して支援するなど、積極的に対策を行っています。また地面を2メートルかさ上げし、一時避難場所を整備しました。
住民もいざという時に備え、対策を行っています。海に近い北浜区では、近くの海抜19メートルの小さな山が避難場所になっています。
ここにはおよそ320人が避難する予定です。
防災倉庫には、水や食料のほかテントや寝袋も準備されています。
それでも自主防災組織のリーダーを務める前地俊秀さんは、避難への不安を感じているといいます。
「いま各地区の自主防災組織で困っているのが、高齢化。逃げるのが大変だから家にいるという人がかなりいる。
避難所の入り口まで来てくれたらどうにか抱え上げてあげられるかなと思うんやけどね」(前地さん)
私たちはどう備える?今から準備できること
南海トラフ地震に備えるために、事前にできる対策を確認しましょう。
「臨時情報」を生かしていくためには、家の耐震化など事前の対策が肝心です。
「臨時情報」が出たときに大変です。
日ごろから家具を固定していなければ、「臨時情報」が出て、あわてて家具の転倒防止金具を買いに行っても間に合いません。
十分な備蓄もしておく必要があります。
避難先を確保するためには、避難先の人たちと日頃から親しくしておくことも大切です。
「この地震の問題を考えることをきっかけに、さまざまな取り組みを先駆けてやっておきましょう」
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