(本頁は「・・・花図鑑(4)盛夏2」の続きです。)
本頁では概ねお盆(八月中旬)以降、初秋にかけて咲く花を扱ってみる。
この季節になると、他の山では花の数がめっきり減るものだが、
秋田駒と(後で述べる)焼石岳は例外のようだ。
タカネスミレやコマクサが多かった大焼砂では新顔の花が咲いていた。
それはオヤマソバだった。
オヤマソバ Aconogonon nakaii 。廻りの花はタカネスミレ。 2023/08/23
オヤマソバ 。廻りの花はコマクサ。 1980年代、撮影月日は不明。
このお花、大焼砂のような裸地の他、阿弥陀池周辺では風衝草原にも進出している。
岩手山や早池峰山でも見かけるが、東北の他の山では見たことが無い(蔵王不忘山に少し有ると聞く)。
大焼砂の下部では意外な花が咲いていた。
マルバキンレイカ Patrinia gibossa 1980年代、撮影月日は不明。
コキンレイカ(ハクサンオミナエシ)は北東北には無いようだ。
近似種のマルバキンレイカは低山の急傾斜地などでよく見かけるが、こんな高い場所で見たのは初めてだ。
コマクサは七月の花のイメージだが、八月にもけっこう咲き残っていた。
年によっては九月にも咲き残りが見られる。
コマクサ Dicentra peregrina 2015/08/16
秋田駒ヶ岳では限られた場所でハナイカリを見かける。
この花、岩手県ではあちこちで見かけるが、秋田県では極めて少なく、私はこの山でしか見たことが無い。
ハナイカリ Halenia corniculata 2023/08/23
(右上)コケモモ(丸葉で赤い実)とガンコウラン Empetrum nigrum var. japonicum (黒っぽい実) 2015/08/16
ハナイカリの近くでコケモモとガンコウランが混生していた。
どちらも秋田駒には多く、後で(6)でも個別に報告するが、混生シーンを先に報告しておく。
タテヤマウツボグサは秋田駒ではあまり多くない。私は男岳の山頂付近で見かけた。
タテヤマウツボグサ Prunella prunelliformis 2023/08/23
コミヤマハンショウヅル(果実) 2015/08/16
(右上)チングルマ(果実) 2015/08/16
晩夏以降の秋田駒にはウメバチソウが多い。
花の径は鳥海山や焼石のものに較べると大きい感じだ。
自分はこの花をずっとウメバチソウだと思っていたが、
最近になって、植物に詳しい友人から、コウメバチソウではないかと指摘された。
両種の識別は仮雄蕊の先に付く腺体の数で行う。
コウメバチソウは仮雄蕊1本につき、腺体は7~11個なのに対し、ウメバチソウは12~22個とのこと。
いずれにしろルーペ無しでは識別できないレベルの話だ。
コウメバチソウ Parnassia palustris var. tenuis 2023/08/23
シロバナトウウチソウ Sanguisorba albiflora 2023/08/23
(右上)ダイモンジソウ Saxifraga fortunei var. alpina 2023/08/23
晩夏以降の秋田駒ではセリ科の花が多くなる。
ムーミン谷のエゾニュウ群生。 2015/08/16
エゾニュウは北海道の草原で壮大な姿を見かけるが、秋田駒ムーミン谷のそれもみごとだ。
このエリアに生息するツキノワグマの餌にもなっているようだ。
散形(傘形)花序をアップで。
エゾニュウ Angelica ursina 2023/08/23
他のセリ科。
シラネニンジン Tilingia ajanensis 2023/08/23
(右上)イブキゼリモドキ Tilingia holopetala 2023/08/23
ミヤマセンキュウ Conioselinum filicinum 2023/08/23
(右上)サラシナショウマ Cimicifuga simplex 2017/09/05
こちらはセリ科ではなく、キンポウゲ科。
晩夏以降の秋田駒では同じキンポウゲ科のトリカブトも多く目に付く。
オクトリカブト Aconitum japonicum ssp. subcuneatum 2023/08/23
大焼砂上部のノコンギクとオクトリカブトの混生。2021/09/01
トリカブトは他の山では中腹より下の林の中や沢筋に多いものだが、
秋田駒ではこんな高所でしかも極めて強い風の吹く稜線にも咲いていた。
「・・・花図鑑(6)晩夏~初秋2」へ続く。
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