前作『はまでうつくしい?(1)ヨツバシオガマとミヤマシオガマ』では
高山に咲くシオガマギクの仲間を紹介したが、山地帯や亜高山帯に咲くものもある。
うつくしさでは、高山種に劣るかもしれないが、ユニークなキャラが多い。
1993/08/24 焼石岳(南本内岳)にて。オニシオガマの群生。左奥の山は三界山。
シオガマギク Pedicularis resupinata subsp. oppositifolia は、
手持ち図鑑では、北海道南部から本州、四国、九州、更に韓国に分布し、
山地草原に生えるとあったが、東北では見かけた記憶がほとんどない。
2019/09/07 東根山にて。シオガマギク。 2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。トモエシオガマ。
東北の山で見かけるのは、トモエシオガマ Pediculasis resupinata var. caespitosa の方だろう。
焼石岳や和賀山塊、月山の偽高山帯(亜高山帯)草地に比較的多い。
2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。トモエシオガマの小群生。
2015/08/02 月山にて。トモエシオガマ。
トモエシオガマとシオガマギクはよく似ている。
上から見て、ねじれた花冠が巴形に並ぶのが、トモエシオガマだと思っていたが、
シオガマギクやエゾシオガマも上から見ると巴形に並んでいる。
よってこの特徴で識別することはできない。トモエシオガマの花は茎の上の方にだけ付き、
シオガマギクは茎の途中からも花を出すことに着目した方がよさそうだ。
今一度、シオガマギクを。
2019/09/07 東根山にて。シオガマギク。上から見ると巴形に見える。
エゾシオガマ Pedicularis yezoensis var. yezoensis は、本州中部以北、北海道、サハリンに分布し、
高山の草地に生えるとされるが、東北では低山でも見かける。
また高山では雪田の近くの湿った場所に群生することがある。
花は上から見ると巴形に並んでいるが、色は緑がかった白なので識別しやすい。
2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。エゾシオガマ。
2020/08/18 鳥海山の雪田付近で。エゾシオガマ。
2016/07/16 月山にて。エゾシオガマ。 2017/09/09 禿岳にて。エゾシオガマ。
ここで分布マップを。
トモエシオガマとエゾシオガマについては、かなりアバウトなので、
眼を細めてご覧頂きたい。
オニシオガマ Pedicularis nipponica は、日本固有種。
石川県から秋田県に至る本州の日本海側山地に分布するとされるが、
その後、青森県からも見つかっている。深山の湿った谷間に生えるが、
岩手の焼石岳には何故かとても多く、中腹の湿地から山頂近くまで進出している。
1993/08/24 焼石岳(南本内岳)にて。オニシオガマの小群生。
2019/09/01 女神山にて。オニシオガマの蕾。 2019/09/01 女神山にて。オニシオガマの全体像。
国内に生えるシオガマ類としては最大。草丈は40-80センチ、ときに1メートルを超える壮大なものも有る。
なのに半寄生植物とは驚きだ。
全体に毛が多く、大きな葉は羊歯のように細かく裂けて、迫力満点。
中生代の花園に紛れ込んだような気分になる。
2017/08/27 焼石岳にて。オニシオガマ。 2016/08/20 月山にて。オニシオガマの終わり頃の穂花。
イワテシオガマ Pedicularis iwatensis も日本固有種。
分布域は狭く、岩手秋田の県境稜線の標高1000m前後の笹原や樹林下に生える
(最近、秋田の太平山や宮城からも報告あり)。
その花はでかいだけで格別綺麗ではないが、草姿がとてもユニークだ。
羊歯を思わせるような根生葉の間から、横方向に50センチ以上も花茎を伸ばし、その先に上向きに穂花を咲かせる。
よって葉と花を一緒に写すことはなかなか難しい。
2019/08/26 平ヶ倉稜線にて。イワテシオガマ。
2019/08/26 イワテシオガマの根生葉。 2019/08/26 イワテシオガマの穂花。
2021/09/01 乳頭山にて。イワテシオガマ。
2021/09/01 上から花と葉を一緒に。 2021/09/01 イワテシオガマの穂花。
何故、これほどまでに変な咲き方をするのか、理由はわからない。
以上。
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