モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

キオンとトウゲブキ

2022年02月21日 | 高山植物

キオンは東北地方では海岸や低山でもときおり見かけるが、
一部の山では山頂や稜線の草地に群生している。

その咲きっぷりがみごとなので、今回、高山植物のひとつとして取り上げてみた。

2015/08/02 月山山頂部にて。キオンやハクサンフウロ、ハクサンシャジンなどが咲き乱れる。



2015/08/02 月山山頂部にて。キオンとハクサンフウロ。        2019/07/26 和賀山塊薬師岳にて。
 


2016/08/11 笊森山のキオン群生地。



2016/08/11 笊森山のキオン群生地から荷葉岳を望む。



キオン、トウゲブキなどの分布マップ


▶キオンについては、高山で生育するケースのみ記載し、低山や海岸での生育地は割愛した。

▶マルバダケブキ、オタカラコウについては北部の生育個所のみ記載し、山形、宮城、福島での生育地の多くは割愛した。


真夏に北東北の高山を歩くと、海岸植物ツワブキのようなキク科植物をよく見かける。
トウゲブキだ。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
『トウゲブキ(エゾオタカラコウ、オニタカラコウ) Ligularia hodgsonii var. hodgsonii
山地~高山草原あるいは海岸草原に生える高さ30-80cmの多年草。茎は・・・(略)
頭花の基部に二個の小苞がある。(略)北海道、本州(東北地方)に分布する。
なおサハリン、千島列島、北海道には、
総苞に暗褐色の毛があるカラフトトウゲブキ var. sachalinensis が分布する。』

とあった。 
トウゲブキは東北地方では、山形県の月山以北の高山や青森では海岸近くにも分布するようだ。
鳥海山や焼石岳ではすこぶる多く、独特のお花畑を形成することから、
その二山での生育状況を報告してみる。

まずは鳥海山。

2018/07/20 鳥海山長坂道(標高約1650m)にて。
ここではミヤマトウキ、ニッコウキスゲ、ハクサンシャジンなども混生。




2021/07/31 鳥海山南面八丁坂(標高約1400m)にて。



2021/07/31 鳥海山南面八丁坂にて。
ここではシラネニンジン、エゾノヨロイグサ、クルマユリなども混生。




2020/07/30 トウゲブキ                         2020/07/30 クルマユリと一緒。
 



次いで、焼石岳では、
標高900m程度の中沼湖畔から咲き出していた。
この植物は草原だけではなく、湿原や水辺も好むようだ。

2021/08/05 中沼湖畔のトウゲブキ群生。



その後も登山道沿いの湿地にはトウゲブキの行列が延々と続く。

標高1400~1500mの姥石平、東焼石岳ではトウゲブキが主役のお花畑が展開する。

2017/08/06 東焼石岳のトウゲブキ群生。バックは焼石岳。






ここは初夏にハクサンイチゲやミヤマシオガマが群生していた場所だ。

真夏にはトウゲブキの他にコバギボウシ、クルマユリ、シラネニンジン、
ハクサンシャジン、ハクサンフウロ、二度咲きのハクサンイチゲなどが咲き乱れる。

焼石岳山頂ではキオンやウスユキソウを交えて咲いていた。
山頂を北に下りたら、南本内岳にも多かった。
ここではハクサンフウロやクガイソウ、後述のマルバダケブキと混生していた。

2018/07/27 南本内岳のトウゲブキ群生。



2018/07/27 頭花の基部の苞に着目。                  2020/10/09 トウケブキの秋姿
 



南本内岳ではやや大型の種類も混生していた。
こちらはマルバダケブキだ。

2017/08/06 マルバダケブキ                      2018/07/27 マルバダケブキ
 



マルバダケブキ Ligularia dentata はトウゲブキによく似ているが、やや大柄で花色はオレンジっぽい。
確実に識別するためには頭花の基部を確認する。

マルバダケブキは頭花の基部に苞が無い
マルバダケブキの分布域は、本州(東北~中部)、四国、海外では中国、ベトナム、ミャンマーと聞く。
焼石岳が北限かなと思ったが、その後、盛岡市郊外の低山でも見かけた。
トウケブキより少し低所に生育する印象だ。

トウゲブキ、マルバダケブキはともに、キク科メタカラコウ属 Ligularia に分類される。
同じ属のメタカラコウオタカラコウは東北の高山ではほとんど見かけないが、
折角なので自分が偶々見かけたものを紹介してみる。

2016/08/20 オタカラコウの群生。月山石跳川の湧水地にて。
 



2016/08/20 オタカラコウ                         2014/07/08 メタカラコウ。由利本荘市にて。
 


改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、オタカラコウの分布は少し変わっていた。
海外では、中国、シベリア東部、サハリンなのに、国内では、本州(山形県以南)、九州とのこと。
北海道や東北北部に無いのは何故だろう。
メタカラコウを初めて見たのは、昔、栂池自然園から白馬岳に登った時。
そのせいか、亜高山帯のイメージがあるが、

秋田県内では低所の出羽丘陵のあちこちで見かける。これもまた不思議な分布パターンだと感じた。


以上。


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