(本頁は大昔の山歩き記録、「2.北穂高岳登攀」の続きです。)
【三日目(7月26日)、恐怖の涸沢岳越え&高嶺の花】
北穂高小屋で迎えた三日目の朝も快晴だった。
富士山の方角を望む。富士の右に連なる山々は南アルプス。
北の方角は槍ヶ岳が圧倒的な存在感。昨日の夕方、見たものとは光線が反対から射している。
雲の平方面(北北西の方角)を望む。
奥のゆったりした山は薬師岳(2924m)。その手前、右端は鷲羽岳(2924m)か。他のピークは同定困難だった。
7月27日の行程は、北穂高岳(3106m)から涸沢岳(3110m)を越え、
穂高岳山荘(2983m)まで降り、そこに荷を降ろしたら、奥穂高岳(3190m)にも足を伸ばすという計画だ。
歩く距離は地図上では3キロ弱、高度差も200mあるかないかだから、
前日の強行軍に較べたら、屁のようなものと笑われるかもしれない。
ところが、実際に歩いてみたら、(`◇´)何が屁なものか!
特に北穂高から涸沢岳にかけては、地獄のような下痢の方がまだましだ!と言うくらい険悪な道のりだった。
何しろ凸凹が凄い。鋸の歯、いやゴジラの背びれを上り下りするようなもので、
歩くと言うよりほとんど這って進むしかないのだ。
目の前には次から次へとゴジラの顔のように邪悪な断崖絶壁が現れ、
登るのもしんどいが、下るのはもっとしんどかった。
だけどこれをひとつひとつクリアーしなければ、生きては帰れない。かあちゃんよ。どうか無事を祈ってくれ。
さいわい天候もよく、同行者や他のパーティーが居たからこそ、まだ何とか進み続けることが出来たが、
これが悪天で単独行だったら・・・。
ああ。思い出すだけでもげに恐ろしき一日だった。
槍ヶ岳の眺めに一旦さらば。 北穂高岳から涸沢岳に行く途中の岩壁。
つらい岩登り、下りに目を愉しませてくれたのは飛騨の名峰、笠ケ岳(2898m)。
笠ケ岳の左奥に見えるのは加賀白山(2702m)。
しかし・・・いっ( ̄π ̄;いったいいつになったら涸沢岳の山頂に着くものやら。
涸沢岳?の登り。
これくらいなら、まだ歩きやすい方だ。
涸沢岳?から、来し方を振り返る。
槍の左には剣、立山連峰、右には後立山連峰が連なっている。
涸沢岳?から涸沢カールを見下ろす。
ゴジラとキングギドラが決闘しそうな広場だ。
(写真は残雪に目がくらんだのか失敗していた。後でフォトショップで修正してみたがこの程度が限界だった。)
そうこうしていたら、真下に穂高岳山荘が見えた。今夜のお宿だ。嬉しい!!
涸沢岳の下りから穂高岳山荘を見下ろす。
向かいには大きく奥穂高岳。上に伸びる道は奥穂高岳への登山道。右に連なる岩峰はジャンダルム。
下に穂高岳山荘が見えた時は、正直ほっとした。
そして下りはあっという間だった。その余勢をかって奥穂高岳山頂には、一時間もかからず登れた。
初っ端にちょっとだけ鉄梯子や鎖場があったが、それ以外は楽々だった。
なんて言えるのも涸沢岳を越えてきたからこそ。
奥穂高岳の標高は3190m。富士山、北岳(南アルプス)に次いで日本第三位の頂きだ。
ところがこの時、山頂で撮った写真が無い。何故だろう。
既にご覧の通り、穂高の稜線は岩ばかりの世界だから、高山植物の種類はあまり多くない。
しかしその咲き様は感動的なものばかりだった。
ここは植物にとっては極限の環境
だが、人間様も壮絶な思いをしないと見られないので、余計そう感じるのだろう。
岩にしがみつくのに必死で、ホントは花の撮影どころではなかったが、高嶺の花を幾つか。
涸沢岳山頂付近から槍ヶ岳を望む。手前の岩場にびっしり生えているのはイワウメ。
近場のイワウメをアップで。
こんな岩にいったいどうやって根を下ろしてるんだろう。
キバナシャクナゲ チシマアマナ
キバナシャクナゲは中部山岳や北海道では一般的だが、東北には無いとされる高山植物のひとつだ。
チシマアマナは東北では早池峰山にしか無いと言われている。強風に揺れ、とても撮影しにくい花だった。
ミヤマタネツケバナ
ミヤマタネツケバナも中部山岳や北海道では一般的だが、東北ではお目にかかれない。
小さく地味な花だが、こんな環境下なのでとても美しく見えた。
イワベンケイも東北では少ない。
イワベンケイ
シナノキンバイとハクサンイチゲは量的にはかなり多かったが、本格的な開花はまだだった。
今年は寒かったのだろうか。
前日の北穂高岳斜面のハクサンイチゲ&シナノキンバイ群落。
背景の山は奥穂高岳。
ハクサンイチゲ
左からシナノキンバイ、ハクサンイチゲ、ショウジョウバカマ
雪が融けてまだ日が浅いのだろう。初々しい姿が印象的だった。
他にはシコタンソウ、クモマグサ、タカネツメクサ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、コイワカガミ、
クロユリなども見たが、写真は撮れなかった。
「四日目」に続く。
今年も宜しくお願い致します。ピエロ
今年もよろしくお願い申し上げます。