物欲王

思い付くまま、気の向くまま、物欲を満そう

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『課長島耕作』の第1巻を読む

2023-01-14 16:59:11 | 

島耕作と言えば誰しも一度は耳にしたことのあるキャラクターではないでしょうか。僕も何回か読んだことがあったとは思うのですが、最初から通して読んだ経験はなく、何となく「周りの人に好かれ恵まれて、どんどん出世して行く主人公」といったイメージを持っているだけでした。

正月休みに「『課長 島耕作』第1巻を読むと昭和の文化がエグいほどダイレクトに伝わって逆に面白い」という記事を目にしました。考えてみれば島耕作シリーズの第1巻を手にしたことはないので、果たして本当はどんな話なのだろうと興味を持ち、実際に読んでみました。

確かに記事に紹介されているように、第1巻に描かれている内容は僕の予想とはかなり異なるものでびっくりしました。固定電話で連絡したり、ビデオを見るためのビデオデッキが欲しいといった当時の生活と今の日常生活とのギャップもさることながら、島耕作が予想外に小者なんですよね。僕の中で島耕作は器の大きな、何でもスマートに解決してしまうヒーロー的な主人公像が出来上がっていたのですが、第1巻の島耕作は大分様子が異なりました。何かよく分からないけれど女の人に好かれて、ちゃっかり肉体関係も持って、でも結構自己中心的で。一昔前の男性からしたら「もしそんなことがあったら良いな」という感じのファンタジーの世界とも例えられるでしょうか。朝学校に向かって急いで走っていたら、曲がり角でパンを咥えた転校生の美少女と衝突するくらいのバラ色の妄想です。司馬遼太郎や本宮ひろ志作品みたいな世界ではありませんでした。

あまりに有名過ぎる作品だと、案外勝手なイメージが自分の中で出来上がっているものなのだと、驚きとともに気付くきっかけとなりました。

 

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まぬかれるか、まぬがれるか

2022-11-23 13:29:29 | 

例えば「既存」という単語を普段どのように読んでいるでしょうか? 僕は「きそん」と濁音なしで発音していますが、時折この発音に違和感を感じたような顔をされる方がいらっしゃいます。「既存」以外にも清音か濁音かで意見が分かれる単語がありますね。清音と濁音のどちらが正しいかと言うことはさておき、今回は「免れる」を題材として、どちらの発音を主としているか、手持ちの辞書で確認してみたいと思います。

まずは三省堂が誇る中型国語辞典『大辞林』。僕が使っているのは紙媒体のものではなくmacOSにバンドルされている「辞書」アプリ内の『スーパー大辞林』ですが、コンテンツは恐らく同じでしょう。OSに中型事典がバンドルされているなんて、本当に親切ですよね。これだけでもMacを買って良かったと思ってしまうくらいです。

閑話休題。早速「免れる」を検索すると、『スーパー大辞林』は「まぬかれる」が見出し語になっており、解説の中で「『まぬがれる』とも」と補足されています。『スーパー大辞林』は清音派でした。

名前が似ているので僕の中では『大辞林』と双璧をなすのが『大辞泉』です。こちらは小学館が誇る同じく中型国語辞典ですね。『大辞泉』を引いてみると、こちらは「まぬがれる」が見出し語で、『スーパー大辞林』とは逆に「『まぬがれる』とも」と語釈の中で補足していました。『大辞泉』は濁音派だったので、清音と濁音は今のところ1対1です。

三省堂が清音派である可能性もありますよね。そこで『三省堂国語辞典』で「免れる」を引いてみました。が、同社の社名を冠した『三省堂国語辞典』では「まぬがれる」が見出し語になっていました。解説の中で

古くは「まぬかる」と清音で、今でも「まぬかれる」と言う。一方、江戸時代の版本に「まぬがる」とあり、濁音形も長く使われている。

と書いてありました。『三省堂国語辞典』は見出し語は濁音派ですが、清音も認めているようです。その語がいつ頃どのように使われていたかといった情報が豊富なところは、僕が『三省堂国語辞典』を好きになった理由の一つでもあります。清音と濁音はこれで1対2になりました。

三省堂と言えば忘れてはならないもう一つの辞書、『新明解国語辞典』があります。こちらで「免れる」を引くと、見出し語は「まぬかれる」とあり、語釈の中に「『まぬがれる』とも」と書かれていました。同じ出版社にも拘わらず『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』で正反対なあたりは、面白いですよね。

4冊の辞書にあたり、清音と濁音は2対2の引き分けとなりました。結果として出版社が三省堂の辞書ばかりになっても拮抗する結果となったことからも、清音なのか濁音なのかはなかなか白黒つかない問題なのだと感じました。皆さんはどちら派ですか?

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新明解国語辞典

2022-11-05 17:38:02 | 

新明解国語辞典の第8版を一刷のうちに買おうと決めていたのですが、如何せん持ち帰るには重い商品なのでずるずると先延ばしにしていました。たまたま神保町の近くまで行く機会があったので、意を決して三省堂の仮店舗に向かいました。

しかし、いざ売り場に着いてみると、いつもの三省堂の陳列とは様子が異なります。以前ならこれでもかとばかりに辞書が平積みされていたと思うのですが、仮店舗の売り場面積の制約なのか、辞書の露出があまりありません。ようやく辞書がならんでいるあたりに行ったものの、新明解国語辞典はわずかに赤と青が一山ずつあるだけです。しかも、辞書についている帯がそのうちの何冊かだけ違うのです。何でだろうと思って異なる帯の辞書(しかし中身は同じ新明解国語辞典第8版)をそれぞれ手に取ってみると、過半を占める帯の方はすべて新明解国語辞典第8版の二刷ではありませんか! 僕が購入をのんびり先延ばしにしているうちに、重版されていたのですね。流石に日本で一番売れている辞書なだけあります。

本当は赤、白、青の三色のうち何色にするかを選んで買いたかったのですが、赤は二刷しかなく、青は一刷が1冊残されているのみで、白に至っては姿形すら見えませんでした。しかし、青も珍しい色ですし、何と言っても目的の一刷が買えて満足です。

 

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三省堂国語辞典を初めて買う

2022-06-05 18:41:17 | 

自分自身ではわりと辞書好きのつもりでしたが、『三省堂国語辞典』を今まで手にしたことがありませんでした。単なる食わず嫌いというのか、出版社名が書名に名前に入っている辞書があまり好きではなかったからです。

しかし、神保町のランドマークであった三省堂書店神保町本店が一時閉店すると聞き、一時閉店前の残された期間に同店に足を運び、何か記念になるものをと考えて「三省堂」の名が入った『三省堂国語辞典』を買うことにしました。

『三省堂国語辞典』は初めて手にした辞書だったのですが、流石に版を重ねている定番辞書とあって非常に良くできています。僕の第一印象としては「言葉の資料集」を読んでいるような感じです。パラパラめくって読み物としても楽しめてしまいそうなくらいです。

少し使ってみて良いなと思った点をいくつかご紹介すると、まず見出し語の表記です。『三省堂国語辞典』の見出しは、和語はすべてひらがな表記、外来語はカタカナ表記と徹底しています。例えば文字面だけだと外国語のイメージすらわく和語の「パチンコ」はひらがなで見出しが書かれている一方、勝手に日本語だと思っていた「襦袢」はポルトガル語由来の言葉なので「ジュバン」とカタカナで見出しが書かれています。襦袢なんて完全に日本語だと思っていましたが、ポルトガル語とは知りませんでした。考えてみたら「天ぷら」や「いくら」なども日本語としてかなり馴染んでいますが、どちらも外国語由来ですよね。すでに和語っぽく日本語の中で馴染みきっている外国語は他にもたくさんあるのでしょう。『三省堂国語辞典』の見出しがひらがな表記かカタカナ表記かを眺めているだけでも思わぬ発見があります。

また「言葉の鏡」を標榜する『三省堂国語辞典』だけあって、恐らく他の辞書であれば載せないような見出しや語釈が見られるのも驚きました。「鯖」の語釈には俗用として「サーバー」と解説されていたり、「草」の関連見出しとして「草生える」が2010年代からの言葉として紹介されていたり、実社会で用いられている日本語を積極的に取り込もうという姿勢には頭が下がります。加えて言えば、「草生える」に限らないのですが、その語義や用法がどの時代から用いられているのかが書かれているのも『三省堂国語辞典』を読んでいて面白い点ですね。

第八版から新設されたという言葉の由来区別といった豆知識が得られたり、アクセント表記があるのも、「言葉の資料集」といった印象を強めますね。辞書としても便利ですが、読み物としても、語釈以外のことを調べたいことにも活用できるので、普段使いの辞書として最適です。あるいは外国語として日本語を学ぶ人にもお薦めできる辞書ですね。

神保町本店の一時閉店をきっかけに良書と出会うことが出来ました。

 

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辞書になった男 ケンボー先生と山田先生

2022-04-03 12:54:52 | 

子供の頃は近所の書店で売っていた岩波国語辞典を使っていた気がしますし、大人になってからは学生時代に使っていたジーニアス英和辞典の印象が良すぎて、国語辞典も同じ大修館書店刊行の明鏡国語辞典を主に使っていました。僕はかなり辞書が好きで、日本語以外の辞書もたくさん買ってきた自負はあるのですが、そもそも辞書がどのように作られているのかに思いを馳せたことがありませんでした。

『新解さんの謎』を読んで何となく新明解国語辞典に興味を持ち、この『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』にたどり着きました。辞書は「高名な各分野の専門家が本業の傍らに書いた語釈を集めて作るのだろう」と無根拠に捉えていたのですが、そんな簡単に作れるものではないのですよね。本書に出てくる人物たちは、世間一般に知れ渡っている有名人でないかも知れませんが、生涯を掛けて自分の信じる辞書のあり方を貫き通した人たちでした。

 

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新解さんの謎

2021-12-11 23:13:55 | 

つい最近になって新明解国語辞典明鏡国語辞典のいずれもちょうど1年ほど前に改訂版が出ていると知り、僕に1年遅れの辞書ブームが到来しました。

どちらも定評のある国語辞典です。新明解国語辞典は相変わらず攻めの語釈に引き込まれます。その独特な語釈を世に知らしめる嚆矢となったのは、赤瀬川原平さんと鈴木マキコさんのやり取りを綴った『新解さんの謎』でしょう。以前からこの作のことは聞き知っていたのですが、実は今まで読んだことがなかったので、僕の個人的な辞書ブームをきっかけに読んでみることにしました。

新明解国語辞典の特徴的な語釈を並べながら、新明解国語辞典を「新解さん」と名付けてそのペルソナを分析としていく取り組みはとても斬新です。そもそも、人格を設定できる「辞書」なんて、今までどこにあったことでしょうか。

ちなみに文庫の『新解さんの謎』は前半が新明解国語辞典の話題で、後半は別のエッセイが収録されています。個人的にはもっと「新解さん」の深海にもっともっと潜っていきたい心持ちでした。

 

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ピノキオのクジラ

2020-06-21 18:27:07 | 
ピノキオの回のテレビ放送がかなり楽しかったので、初めてテキストを購入してみました。テレビの放送内容がすべて網羅されているのかと思いきや、そうではないのですね。番組を思い返しながら読みふけってみたいと思います。

しかし、ずっとクジラだと思っていたのにクジラではなかったとは驚きです...

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日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦

2012-01-05 23:58:27 | 
評判が良さそうだったので、『日中国交正常化』を読んでみました。

日本はサンフランシスコ講和条約で多くの国々と戦争状態を終えることが出来ましたが、その埒外にあったので中国との関係です。悩ましいのが当初交戦状態にあった中華民国とは日華平和条約を結んだものの、中華民国は台湾に逃れてしまい、我々が普段中国と認識している部分は中華人民共和国が支配しており、こちらとは交流(国交と言って良いのでしょうかね?)がない状態だった訳です。当初は台湾側の政府を正統な中国政府ととらえたものの、世界情勢の変化もあり北京側の政府と国交を樹立していかなければならなくなりました。

本書は、図らずも二股交際になってしまった当時の田中角栄首相、大平正芳外相、二人を支える官邸・外務省のスタッフが、何を考え、どのような問題に直面し、どうやって解決していったかがある程度の臨場感を伴って書かれているドキュメンタリーです。テレビのドキュメンタリー番組であればもう少し当時の状況を補足したり、掘り下げるだろうなと物足りなく感じるところはありました。ただ、新書というフォーマットであることを考えれば充実した内容ですし、1発の銃弾ではじめることの出来る戦争も、いざ終わらせようとするには非常に労力を伴うのだという当然のことをあらためて気付かせてくれた良書でした。


日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書)
服部 龍二
中央公論新社
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特攻 空母バンカーヒルと二人のカミカゼ-米軍兵士が見た沖縄特攻戦の真実

2011-03-11 02:36:50 | 
東京大空襲から66年経った今年になって、旧日本軍の「特攻」によって多くのアメリカ人が亡くなっていることに気付きました。

「特攻」というと、軍の力によって、あるいは当時の社会情勢によって、追い詰められ、究極の選択を迫られた若者たちが、成功する可能性の低い文字通り「命懸け」の攻撃を仕掛けたという認識しかありませんでした。特攻隊員の多くはその悲しい目的を果たすことなく散り、少数の成功者しかいなかったということは知っていたつもりだったのですが、裏を返すとその少数の成功者によって命を絶たれたアメリカ兵がいるという至極当たり前のことに気付かないでいました。

出撃するまでの特攻隊員がどのような心持ちだったのか考えるだけで悲痛な思いに満たされます。一方で、決して生きて帰ることのない攻撃を仕掛けてくる異文化の民族を目の当たりにしたアメリカ兵の恐怖たるや、現代に生きる我々ですら想像に絶します。

文化圏の違い、人種差別、特攻に命を捧げた日本兵、特攻の恐怖のうちに命を落としたアメリカ兵、広島以上の命が失われた東京大空襲。私の知らなかったことはあまりに多く、無知を恥じつつ『特攻 空母バンカーヒルと二人のカミカゼ-米軍兵士が見た沖縄特攻戦の真実』という1冊に出会えて本当に良かったと思います。


特攻 空母バンカーヒルと二人のカミカゼ-米軍兵士が見た沖縄特攻戦の真実
マクスウェル・テイラー・ケネディ
ハート出版
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告白

2010-06-03 01:38:20 | 
電車の中で大学生風の男女がファーストキスについて語り合っていました。先輩らしき男性は相手の女性に好意を持っているようで、付き合い始めるための糸口を探しているような会話の運びが、傍目にも痛々しく甘酸っぱい感じがしてなりません。彼らが告白する日が来るのかを想像しつつ途中の駅で電車を降りました。

そんな若々しい告白がある一方で、愛娘を亡くした悲しみにくれる母親の告白もあります。最近読み終わった『告白』は女性教員の衝撃的な告白で幕を開けます。3組の母子愛とそれを取り囲む自己愛と異性愛が入り交じり、物語はぐるぐると螺旋階段を下りて行くかのように深みにはまっていきます。果たしてどこまでが事実なのか、果たしてどこまでが本心なのか。終わることのないスパイラルこそ母性愛の本質なのでしょうか?

すっきりとした解は提示されないながら、何故か心地良い1冊でした。


告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
湊 かなえ
双葉社

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