もう一つの窓 木澤 豊
ガラスの向こうのもう一つの窓から
さざ波の音がきこえる
ドアを押すと
坂下の街燈(がいとう)の光がようやくここまでとどい
て
地面の石や枯葉を波立たせる
匂う木々
わが骨につまずく晩や渚道(なぎさみち)か
ここはどこの渚か
さびしくて そこにいない獣の背をなでる
と
露にぬれている
森がにおう さあ 行くか
と言う わたしは消えて
ゆるやかに息を蒸発させている だれか
もう一つの窓が青白い信号を発している
また 戻ってきた海辺
だれも わからないことに囲まれている
「いまでも まだ
さがしているんです」
「あなたが待っている人がいますよ」
風が行くところ わたしが行くところ
ガラスの向こうのもう一つの窓から
さざ波の音がきこえる
ドアを押すと
坂下の街燈(がいとう)の光がようやくここまでとどい
て
地面の石や枯葉を波立たせる
匂う木々
わが骨につまずく晩や渚道(なぎさみち)か
ここはどこの渚か
さびしくて そこにいない獣の背をなでる
と
露にぬれている
森がにおう さあ 行くか
と言う わたしは消えて
ゆるやかに息を蒸発させている だれか
もう一つの窓が青白い信号を発している
また 戻ってきた海辺
だれも わからないことに囲まれている
「いまでも まだ
さがしているんです」
「あなたが待っている人がいますよ」
風が行くところ わたしが行くところ