世田谷美術館で開催中の「平泉」展、東京国立博物館で開催中の「阿修羅展」を続けて観覧しました。
ここのところ有名寺院の展覧会が度々開催されています。どれも盛況で多くの入場者を集めています。
人々が集まるのは、空前の仏像ブームも一因だと思いますが、団塊世代の時間のゆとりに大きな原因があるのではないでしょうか。
みなさん余暇を文化的にかつ健康的に過ごそうとエネルギッシュに活動されています。
「
平泉 みちのくの浄土」 4月11日
中尊寺金色堂の仏像の三分の一が公開されるということが話題となりました。実際に中尊寺には行ったことがありますが、金色堂自体が大きな展示ケースに入れられている状態なので、展覧会でもあまり違和感を感じませんでした。間近で観られたのがよかったと思う一方、やはりすべての像が揃ってこそ金色堂の仏像だという思いがしたのも確かです。
仏像では、東北地方各地の素朴な仏像が多数展示されていて興味をそそられました。
また、切手のデザインに使われた国宝・金銅迦陵頻伽文華鬘(けまん)も興味深かったです。
特にすばらしかったのは、国宝・紺地金銀字一切経でした。現在は高野山にありますが、もともと奥州藤原氏の発願で写経されたもので、紺と金銀のコントラストの鮮やかさ、文字の美しさ、初めて認識しましたが、同時代の平家納経にも匹敵する美しい巻物を拝見することが出来ました。
「国宝
阿修羅展」 4月14日
会期もまだ一ヶ月以上あるのに、平日でも入場するのに待ち時間が必要になるときがあるほどの盛況ぶりです。五十年ぶりの東京来訪に加え、八部衆・十大弟子の全14体が揃って拝見できるのも魅力的です。
平日の午後、天候もぐずついていたねで、待たずに入場できましたが、中は凄い混雑でした。
興福寺中金堂基壇から発掘された遺物、国宝・伝橘夫人持念仏の展示の後、いよいよ八部衆・十大弟子の部屋に進みます。広い部屋の右に十大弟子六体、左に阿修羅と五部浄以外の八部衆六体、突き当たりに欠損した五部浄が展示されていました。
五部浄以外は露出展示でケースには入っていません。多くの仏像との一体感がすばらしくて、しばし人ごみの中にいるのを忘れさせてくれました。非常に充実して、癒された時間を過ごすことが出来ました。
次は長いアプローチを経て、阿修羅の部屋へ進みます。昨年の「薬師寺展」同様最初は正面少し高い位置からの鑑賞になります。その後、間近まで進んで360°いろいろな角度から鑑賞できます。ここも露出展示なので、阿修羅と同じ空気を吸っている感覚になれます。何度観ても美しい姿にしばし見とれてしまいました。
阿修羅の後は平家焼き討ちの後に復興された諸仏が展示されています。作者は運慶とその父、康慶。ここも展示に工夫が見られ四天王像の迫力はすばらしいものがありました。また、薬王・薬上の両菩薩も迫力のあるものでした。
最後に再建予定の中金堂の説明とバーチャル画像が見られるコーナーがありました。
二つの展覧会を観て、ふと思いついたことがあります。江戸時代に地方の有名寺院が、江戸で本尊を開帳したという「出開帳」というものがありました。寺院は出開帳で何がしかの儲けを得て、庶民はわざわざ遠くまで出向かなくてもご利益に預かれるという便利なものです。
東京で開かれる有名寺院の展覧会はまさに現代の出開帳ではありませんか。特に「阿修羅展」は中金堂再建という勧進開帳の面もみせているのが興味深いことです。
昔も今も同じようなことをやっているんですね。