社会保障を全廃し、その代り生活できる収入を国が支給する~社会保障ではないベーシックインカムを考えるべきではないか
青山)本当は、ベーシックインカムをやるのかやらないのか。AI全盛ですけれども、最近はBIと言ったりもしますが、ブラジルの町で独自通貨を出したら、他の街に買いに行かない、ネットでも買わない、街のなかで消費されるからお金がぐるぐる回って、ものすごく失業率が減ったのです。これは小さな街の範囲だからできることです。日本の1億数千万人もいるところでやれるのか、という話になりますが、社会保障のお金が膨らんで行くと、消費税も上げなくてはいけないという話になりかねません。1度、そういう話になってしまっていますから。
飯田)経済団体によっては、20数%まで上げるべきだということを言っています。
青山)「北欧がやっているから」と言うのですが、北欧でいちばん大きな国であるスウェーデンでも800万人くらいですから、比較にならないですよね。社会保障を全廃して、その代わり必ず生活できる収入を、仕事をしていてもしていなくても国が支給するという、ベーシックインカムを考えるべきではないか。10万円給付も、そのいちばん最初の試みと言えなくもないのです。そういうことを語ることができる総裁選でなくてはいけないし、かつてと違って、そういう話を経済学者だけでなく為政者、行政府がする時代になっているのです。
飯田)具体的に、どう設計すれば可能なのか。どこに問題があるのか、ということを徹底的に詰める。
青山)問題は必ずあるのですけれども、いまのように社会保障という名目であれば、いくらでも予算が膨らむということでいいのかと。
飯田)消費税などもそうですが、例えばサラリーマンなどが天引きされている社会保険料なども、実はかなり上がって来ていて、国民にとってはダブルで辛く、こんなに手元に残らないのかと思っていたりするのです。
青山)そうですね。それを根本的に解決するものとして、社会保障を積み上げて行くという考え方をやめて、その代わりにドカンと。ドカンと言っても、裕福になれるわけではないけれども、「生活はできるようにする」というのがベーシックインカムです。残念ながらカタカナですけれども。
飯田)「所得保障」という言い方をしたりもしますね。
青山)所得保障、その通りなのですが、もう少し夢のある言い方が欲しいところです。文字通り、政は政治の責任なので。
特別定額給付金~効果について総裁選で議論すべき
飯田)確かに、いまは困った人への手当てという形になっていますが、どうしても、こぼれ落ちる人が出て来てしまう。特に氷河期世代の人たちは、正社員になれず、非正規雇用のままでスキルアップができない状態の人が多くいます。いま年金をギリギリ払えるか、払えないかということをやっていますが、この人たちがそのまま、あるいはこれから先にもっと経済が苦境に陥った場合、みんな生活保護になってしまうと、そちらの方で財政が持たなくなる可能性もある。それを考えると、ベーシックインカムは1つの解決策になるかも知れないですね。
青山)あえて全面導入という話をしたのですけれども、部分導入も不可能ではないと思うのです。ドカンと切り替えると言っても無理ですから。特に日本のように歴史があると、ゆっくりとしか変わらないのです。敗戦のショックも100年経たないと薄れません。だから憲法も変わらない。困っている人に手当てをして、資本主義の困った部分をそこで補うというのは、西洋から来た話です。例えば、仁徳天皇の「民のかまど」はベーシックインカムです。
飯田)確かにそうですね。
青山)仁徳天皇が私たちの暮らしをご覧になって、「ここは裕福だから放っておく」、「ここは困っているから手当てをする」ということではなく、一律なのです。
飯田)税金を取らないと決めて。
青山)だから定額給付金も、一部の人に30万円を給付するのではなく、一律10万円というのは、実は画期的な考え方の変化です。すぐに行われたことだから、当然いまの総裁選でその議論をするべきなのです。
飯田)確かに、6月は少し消費が上がって、効果が出ていた可能性があるのですね。
青山)そうです。何でも前向きに捉えた方がいいので、これはテストケースだったと考えるべきだと思っています。