資産デフレ(保有している株式や不動産の価格が下落して、そこから企業や家庭の投資や消費が抑制されるようになったことから発生するデフレーション)の勢いが潜在的(隠れた政府補償による借換え=金利負担維持による政府の形式的資産増=党による収奪合戦)に止まらない。
中国の総金融資産は約 300 兆元あるが、少なくともその約 20%、 約 60 兆元分は、 債務者が自力では償還できない不良債務になっている という見方が有力だ 6*。津上俊哉
6*
IMF の「世界金融安定性報告書」(2016 年 4 月)である。この調査では、「企業は、利息、税金、減価 償却前利益(EBITDA)が報告された利払費を下回る場合、「リスクあり」と定義される」(すなわち、 インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)< 1)と定義されている。この結果、商業銀行による中国 の法人向け融資のうち、15.1% が「リスクあり」と判定された。 それだけでなく、同調査は次のようにも指摘している。
(1)「リスク融資」の閾値については、ICR < 1 では低すぎ、ICR < 2、少なくとも ICR < 1.5 とすべ きだという意見もある。この場合、「リスクあり」と分類される法人向け貸出の比率(≒ NPL 比率)は、 それぞれ 27%、22% に上昇する。
さらに、より重要なこととして
(2)国有政策銀行の融資(国家開発銀行など)や地方政府が保証する地方政府の融資平台(LGFV)向 けの商業銀行融資は、この調査の対象外とされている。
筆者は、LGFV 向け融資について、深刻な債務不履行を心配する必要がほとんどないことには同意す るが、不良債権の利息を払い続けることで不当な富の移転が生じるという筆者の観点からは、なお深 刻な問題があると考えている。
なお、直近のデータによると、2018 年末時点で LGFV の債務残高は 30 兆元(GDP の約 33%)を突破 しているが、その ICR は平均 0.4 にとどまっている。これを IMF が調査した不良債権比率と合わせて 考えると、不当な富の移転を引き起こす不良債権の比率は 20% をはるかに超える可能性がある。
マカオ:サンシティ(太陽城集団)タクチュングループ(徳晋集団:レボ・チャン(陳榮煉)は逮捕)ばかりでなく、対応する共産党幹部の資産基盤=権力の源泉=資産移転も揺らいでいる。