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インテリアコーディネーターのブログ。
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3月4日 リ・ストックレディース VOl.7

2008-03-04 | インテリア/建築

リ・ストックレディース第7弾として候補に挙がった北区紫野の住宅。こちらはもともと美容室だったものを居住用に改装することになりました。(上は改装前の写真。)
2007年11月の京都。
営業担当者からの依頼は「プロバンス風」の住宅。

「本当に?」

現場(工事)担当者からその話を聞いた時には、とにかく一度確かめなければなりませんでした。新築住宅の流行から京都の流行を図るとすれば、「シンプルモダン」や「ナチュラルモダン」が主流となっており、シンプルなものがたくさん生み出されていました。
(あえて・・・今、プロバンス?!・・・)
正直、最初は「うん?」と否定的な考えを持たないこともありませんでしたが、「あえて・・・今・・・」そんな風に考えると、なんだかそれも面白くなってきて、そして女性をターゲットにするならば、こじんまりと思いっきりキュートに仕上げてしまうのも良いのではないか?!と思い始めました。
(それなら徹底的にプロバンスを追及するゾ!)
工事着工前の戦略会議(この物件には、社長、営業のリーダー、営業担当者、工務部のリーダー、現場担当者、私の計6人で行われました)に向けて、プロバンスのイメージに沿った部材の資料を揃えます。

フラワーボックス

上げ下げ窓にも設置可能な雨戸 スライディングパネル「コルティナ」

それから、「オーニング」
など・・・。

会議では、イメージの確認が終わった後、具体的に間取りをどのように取るのか?という点に時間が取られました。ようやくおおよその形が決まった時のこと・・・

「ところで、ここって景観法、大丈夫やったっけ?」
「建造物修景地区 山ろく型です」
「・・・・・・・」

6人も揃って、なんともとぼけた話ですが、景観法のことをすっかり忘れてしまっていました。9月に施行された京都の景観法に対応するためには、指定された区域の場合、「和風の住宅でなければならない」という大原則があります。その他細かな規定はいろいろありますが、建造物修景築に建つこの住宅を「プロバンス風」にするだなんてもっての他!

そんなこんなで、フラワーボックスも、スライド雨戸も、それからオーニングも・・・全て忘れて「和風モダン」の立面図が出来上がりました。立面図は、現場担当のFによるもの。ハチセの社員なら、図面を見ただけで担当が彼だとわかる住宅に仕上りました。

仕上がった途端から、社内でも評判の高い住宅でした。
予算を抑え、必要最低限を検討した住宅。それが良い方に機能し、派手な演出はないものの全体的にまとまった仕上りとなりました。その雰囲気がたくさんの人に受け入れて頂けたのかも知れません。

今回この住宅のポイントとなったのが、書斎を意識して計画した一室。改装前はこんな感じでした。

ミニキッチンが置かれた、ほんの少し出っ張ったスペース。改装前にここを訪れた時から、この空間が気になって仕方ありませんでした。会社に戻り、平面図を眺めると、頭の中に描かれる空間・・・。それは、絶好の作業スペースでした。
(ここにコンセントを設置して、手元灯を計画して・・・パソコンが置ける、事務作業ができる・・・)
購入者像に自分を重ねた私は、書斎としてのイメージがどんどん膨らんでいました。
そんな時に、脳裏に甦ったのが同じ女性である営業担当者の言葉。

「ここに鏡があれば、化粧スペースとして利用できるのに。」

「レディース」として物件を計画する時に、そこに女性としての本来の女性らしいライフスタイルを組み込むことが抜けてしまっていたのです。「自宅でも仕事ができる『SOHO』的空間」「遅い帰宅でも安心の部屋干しスペース」「日に日にたまる物たちをスッキリ片付けられる収納スペース」それから「表面的な女性らしさの演出」・・・。そんなことばかりに目がいってしまっていたのです。
(『鏡』という発想・・・。これはなんとかうまく利用できないだろうか?)

そうして出来上がったのがこんな空間です。
私が毎朝向き合っている化粧台からヒントを得て、テーブル面に脱着できるガラスをセットしました。好きなポストカードや写真を並べて自由に簡単に模様替えが楽しめるアイテムです。今回予めセットさせて頂いたのは、「2月27日 京からかみ」でも取り上げた唐長さんのポストカードを2枚。(せっかくなので、唐紙にまつわる説明書も一緒にセットしておきました。)
スツールには、「2月5日 メンテナンスフリーがもたらした弊害」で取り上げたG.WORKSさんのスギのふんわりスツール。その名の通り、本当に柔らかくて気持ちが良いのです。

それから、「2月25日 京都の手ぬぐい屋さん」でご紹介した手ぬぐい。こちらは、玄関の扉を開けた瞬間に目に入るよう、階段部分の壁に設置しました。
 
これは、先日のブログでもお話しした通り、いつかどこかで利用したい。と思っていたアイテムでした。やっと似合う物件にめぐり逢えた☆ので、ついにそのイメージをかたちにすることができました。

そして、この住宅にはもう一つのポイントがあります。
それは、2月5日のブログには矛盾しますが、「メンテナンスフリー」をテーマにしたところ。何がメンテナンスフリーなのか?その答えは照明です。
この住宅を計画する少し前に松下電工から発売された高輝度タイプのLEDダウンライト。

4万時間、つまり8~10年の長寿命。現在、器具寿命の目安が「10年」とされていることからも、「ランプ交換不要」という考え方が可能です。

現在の女性は何でもしてしまいます。何でも出来てしまいます。それなのに、「女性の一人暮らしだと電球交換が大変!」といった発想は、現在の女性には当てはまらないような気もしていました。ですから、本当のところは「新しい照明計画を試してみたい」という気持ちの方が強かったかも知れません。
計画をしてみたものの、不安は消えません。何しろ、実際に取り入れられた照明空間を見たことがないのですから。配光図やカタログの写真で見る光の出具合だけを頼りに計画しました。
(これが、成功すれば、今後の計画に拡がりが出る!)
その無理矢理前向きな考え方、(たぶん・・・大丈夫なような気がする・・・)といった感覚的なものと、(失敗したら「ごめんなさい」ってことで、取り替えてもらおう♪)という安易で大雑把で、どこか無責任な計画が完成しました。

後輩はもちろんのこと、実際に販売されている松下電工の営業さんも、それから、照明計画について相談に乗って頂くことの多いコイズミ照明の営業さんからも安心できる言葉をもらえることはありませんでした。

「やってみたいけれど、施工事例を見たことがないから・・・。誰かがやってくれて、大丈夫そうなら真似したいのだけれど。」

私達の間で、そんな会話が繰り返されていました。でも、その施工事例を見られるタイミングで、その計画に当てはまる物件にめぐり逢えるかどうかは、わからないのです。
「じゃぁ、私が事例を作っちゃいますね(笑)。」
なんて・・・、本当にやってしまいました。こんな計画がなされていたなんて、全く知らないこの物件に携わる私以外の担当者は、迷惑な話です。

結果は、成功でした。もちろん、成功したからこそ、こうしてその種明かしができるわけですが・・・。地球環境を意識した新シリーズ「リ・ストックLOHAS」などには、この計画を活かしていけるのではないだろうか?と考えています。

ところでこの住宅、初披露した2月16日に契約が決まりました。実際の購入者様を含む3組の方に「欲しい」という意思表示をして頂けたそうで、計画した側にとってはこれほど嬉しいことはありません。「リ・ストックレディース」は今回でシリーズ第7弾になりました。おおよそ想定する女性の方にご購入頂き、本当に嬉しい限りです。
でも、今回のお客様はご夫婦でした。
想定とは違いましたが、ご購入者さまに喜んで頂ければ、それが何より一番嬉しいです。

・・・と、第7弾の写真を交えた「計画から完成、契約までのお話し」はざっとこんなところなのですが、この住宅にはもう一つ私のコダワリが隠れているのです。
但し、あまりに細かすぎて、一番近くに居る後輩を含め、誰にも気付いてもらえませんでした。ですから、サーバーの社内共有データに保管された現場の写真のどこにもそれは写っていません。
照明計画の確認の為に、現場を見に行ってくれた後輩に、次の日に聞いてみました。
私:「気付いた?いつもの襖と何かが違ったってこと。」
後輩:「・・・・・・」
私:「実は・・・」
後輩:「え~?!先に言っておいて下さいよぉ(怒)。全く気付きませんでした。っていうか細かすぎます。ただの自己満足じゃないですか!(笑)」

建具の中でも「襖」好きな私は、たとえそれが洋室であったとしても、「和」のテイストに仕上げる場合には、好んで仕様に盛り込みます。実際に工事をされる工務店さんから、「本当に襖で良いのか?」と確認のお電話を頂くことも少なくはありません。
今回の住宅も「和モダン」をテーマにした住宅だったため、「襖」を利用しました。しかし、今回はレディースシリーズ。細かなところまで気を抜きたくなかったのです。
そこで、いつものような「白木(スプルース)」や「黒カシュウ」の引き手ではなく、美しい取っ手のバリエーションを数多く持つメーカーユニオンから次の2点を選びました。
入口の引戸には、ATH322-012

押入れには、ATH308-012

建具において、取っ手の存在は大きいハズなのですけどね・・・。
ホント、ジコマンゾクに終わってしまいました(苦笑)。

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