瀬戸内寂聴さんが2021年11月に99歳で亡くなられました。寂聴さんの源氏物語口語訳を読み通して以来、寂聴さんの本から遠ざかっていましたが、故人を偲び、図書館で借りた1冊がこの「場所」です。予備知識もまったくなく借りた本でしたが、まさに彼女の起伏にとんだ激しい女の一生をたどる旅路になりました。この本を執筆した当時、寂聴さんは77歳だったのですが、若いころから住んだ思い出の場所をたどりながら、当時の状況を語るという形式で、まざまざと出家までの彼女の道程をたどることができました。出家後の軽妙で温かな説法を聴く限り、想像できないような激しく苦しい日々があったことを知りました。51歳ですべての愛欲の絆をたち、出家した寂聴さん。彼女の出家をとめなかった最後の男とのやりとり。「出家とは、生きながら死ぬことよ。」と別れに際し、言ったという寂聴さん。黒染めの衣を着て、「彼らのいる場所へ、いつになったら私はたどり着けるのだろうと風に訊いていた。」とありましたが、「22年後でしたね」と言ってあげたくなりました。偉大な女性でした。
朝井まかてさんの「恋歌」を読みました。物語は、小説家であり、歌人でもあった三宅花圃が隆盛を極める歌塾「萩の舎」を主催している師匠にあたる歌人、中島歌子の手記を歌子の女中、澄と一緒に読むという形で語られる。手記を通じて語られる中島歌子の壮絶な一代記であり、恋愛小説の要素があるものの、水戸藩の天狗党の志士であった夫、林忠左衛門に嫁いだことから天狗党と諸生党という二派の争いに巻き込まれ、諸生党による徹底的な弾圧、根絶やしを目論む処置により、投獄されたことや、夫の戦死、義妹のてつと密かに水戸を離れ、江戸に出て加藤千浪門下に入り、歌で身をたてるべく修行に励み、明治の世に名声を得るまでのいきさつが描かれている、しかも女中の澄の出自が最後になって明かされるという結末まで、実にドラマチックな史実をふまえた歴史小説でもある。
中島歌子は、三宅花圃と樋口一葉の師匠としても知られている方だそうで、水戸藩御用達の池田屋の娘だった登世(のちの中島歌子)が水戸藩藩士、林忠左衛門に出会い、恋に落ちて結ばれ、江戸からまったく気風の異なる水戸の武家に嫁いだ後の苦労や、幕末の政治の動乱、さらに水戸藩の内紛を描きつつ、それらに翻弄された女性の一生を見事に描いてみせた朝井まかてさんの筆力には、感心しました。作品中に引用された歌子の「恋歌」も印象的です。第150回直木賞受賞作です。お薦め。
中島歌子は、三宅花圃と樋口一葉の師匠としても知られている方だそうで、水戸藩御用達の池田屋の娘だった登世(のちの中島歌子)が水戸藩藩士、林忠左衛門に出会い、恋に落ちて結ばれ、江戸からまったく気風の異なる水戸の武家に嫁いだ後の苦労や、幕末の政治の動乱、さらに水戸藩の内紛を描きつつ、それらに翻弄された女性の一生を見事に描いてみせた朝井まかてさんの筆力には、感心しました。作品中に引用された歌子の「恋歌」も印象的です。第150回直木賞受賞作です。お薦め。
朝井まかてさんの「輪舞曲ロンド」を読みました。大正期に新劇女優として活躍した伊澤蘭奢(本名三浦しげ)の生涯をたどる物語です。三浦しげは、島根県の津和野町の紙問屋に生まれた。日本女学校を卒業後、漢方胃腸薬「一等丸」で有名な津和野の老舗の薬屋「伊藤博石堂」に嫁いだ。20歳の時、息子、佐喜雄を出産する。姑に子供を預け、夫、治輔と事業を起こすべく上京したが失敗し、大正4年に津和野に帰る。しかし、婚家での暮らしは合わず、離婚を覚悟で、女優になるべく一人で上京した。松井須磨子の舞台「人形の家」を見た感動が忘れられなかった彼女は、上京後、新劇女優になり、紆余曲折を経て、亡くなる38歳まで10年間ほど舞台女優として活躍した。代表作は「マダムX」。朝井まかてさんの「輪舞曲」は、伊澤蘭奢の死後に見つかった大量の遺稿を編纂し、遺稿集を出そうとパトロンで愛人だった内藤民治が、昔から恋愛関係にあった徳川夢声、東京帝大の学生で、伊澤蘭奢に憧れていた福田清人、一人息子の伊藤佐喜雄を午餐に呼ぶところから始まる。実際に彼女の遺稿集は、「素裸の自画像」として、昭和4年に世界社から刊行され、1999年3月に伝記叢書319「素裸な自画像ー伊澤蘭奢」として復刊されたそうです。「短くも美しく燃え」という感じのドラマチックな伊澤蘭奢の生涯が徐々に明らかにされていきます。なお、息子の伊藤佐喜雄はのちに作家となり第二回芥川賞に小説「面影」「花の宴」がノミネートされ、戦後も作家として活躍したそうです。しかも、伊藤博石堂は伊澤蘭奢の夫、治輔が第六代「伊藤利兵衛」を継承し、現在は第九代が津和野で営業しているそうです。すごいですね~。お店も健在で良かったですね。お薦めです。
今日の午後、予約注文しておいた「もちまる日記」の写真集がアマゾンから届きました。偶然、You Tubeで見つけた「もちまる日記」のもち様の可愛さに嵌って数か月。もち様のファースト写真集を買うにいたりました。もち様の魅力がいっぱい詰まった111ページの写真集です。税込み1320円。物を増やしたくないので、よほどでないと本を買わないのですが、ついに買ってしまいました。時々、眺めて癒されたいと思います。現在、チャンネル登録者数は122万になっているようです。もち様の飼い主、下僕さんは、本当にもち様を大切にしています。ペットを飼うならあのように、深い愛情を注がないといけないなぁと思います。下僕さんともち様のほのぼのした生活の一端を見られる「もちまる日記」は毎日更新しています。今回、この写真集を買ったため、もち様の3種類のスマホ用の待ち受け画像をいただきました。さっそくスタート画面にか使っています。
表紙の写真だけアップしておきますね。中身はかわいいもち様がいっぱいですよ。
表紙の写真だけアップしておきますね。中身はかわいいもち様がいっぱいですよ。
森沢明夫さんの「水曜日の手紙」を読みました。水曜日郵便局宛てに自分の水曜日の物語を書き綴った手紙を送ると、水曜日郵便局から誰か見知らぬ人から届いた手紙を送っていただけるというサービスを利用した井村直美、今井洋輝、光井健二郎の物語。井村直美は夫、息子二人の四人家族の主婦。両親が創業した会社を引き継いだ夫は、常務とは名ばかりで、休日返上で働き、傾きかけた会社をなんとかささえている状態。直美はパートで家計を助けているが、高校時代の友人で玉の輿に乗った伊織が妬ましく、心にたまる毒を日記に吐き出す毎日で自己嫌悪に陥っている。そして伊織から聞いた水曜日郵便局へ、手紙を出そうと思い立つ。手紙には高校時代の夢だったパン職人になり、自分の店をもって繁盛しているという理想の自分を描いて送った。そしてその手紙は水曜日郵便局で働く光井健二郎によって、今井洋輝に送られた。片や今井洋輝は、結婚をまじかに控え、安定を求めて文房具の会社に勤めているが、フリーのイラストレーターになる夢を捨てきれない。同期で入った小沼が会社をやめてフリーのイラストレーターになり、6人展などを開き、輝いている様子を羨ましく思う。今井はそのもやもやした気持ちを手紙に綴り、水曜日郵便局に出したのだった。今井洋輝の手紙は直美に配達された。互いの手紙は2人の人生にどんな影響を与えるのか。2018年ごろは、実際に宮城県東松島市宮古島の今は使われていない旧鮫ケ浦漁港に水曜日郵便局が開局していたようです。今は閉局しています。ロマンチックなプロジェクトですね。