金鉱脈探査シミュレーション インゴット79(プレイステーション2)
2006年5月12日掲載、現在は地下に関する仕事はしておりません。
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私は大学で地質学や岩石学などの地球科学を専攻し、現在でも地下に関する仕事をしております。そんな私がこの「金鉱脈探査シミュレーション インゴット79」を購入したのは当然のことです。
地球科学とは状況証拠を積み重ねる学問だと言われています。例えば、人類は38万キロ離れた月に降り立つことはできましたが、たった10キロ地下に潜ることはできません。そこは高温・高圧の世界だからです。それなのに、地球の内部がどうなっているかはよく知られています。様々な観測や実験から、まず間違いないだろうという状況証拠がそろっているのです。
本作は掘削シミュレーションではなく、探査シミュレーションです。まさに、さまざまな状況証拠から地下の金鉱脈を探し当てるのが目的です。ゲーム中の解説では、岩石を溶かし込んだ熱水(高温高圧の水)から石英という鉱物とともに金が沈殿するとあります。ただし、岩石内の石英の成分はほとんど無尽蔵にあるのに対し、金は微量しか存在しないため、石英があるからといって金が必ず含まれるとは限りません。とは言え、探査結果から地下の石英脈を探し出すことがとりあえずの目標です。探査隊を率い、金鉱脈を求めて地球に挑むのです!
ゴキゲンな音楽にのって探査開始です。探査は簡略化されているものの、なかなか本格的です。ですが、覚えなければならないことも少なく、ゲームを進めているうちに自然と理解できるようになります。解説映像も科学的で、無理なく知識が得られます。本格的な作りに納得です。
一方、探査隊の方はと言えば、まるで高校生がノリでキャンプをしているようです。ある時は川でパンニング(砂金さらい)をしていると、食糧が川に流されてしまいます。急げ! アメリカン・カウボーイ! またある時は、探査中に野生の熊が襲ってきます。戦え! モンゴル相撲の使い手よ! 負けてしまうと気力が萎え萎えになりますが、そんな夜はテントで筋トレして気力充実だ! 地球に挑むのも大変です。
しかしながら、そのようなストーリーもキャラクター達もステージを進行させるための狂言回しに過ぎません。やはり最も面白いのは、自分の判断で金のありかを見いだすことです。多くの探査結果をマップ上にずらりと並べると、いかにもありそうな地点が浮かんできます。地球に山ほど状況証拠を突きつけてやれ!
それでも、どんなに状況証拠を積み上げても、金が含まれている「かも知れない」岩脈を追うことしかできないのです。最後は運任せのギャンブルです。金があるかどうかはボーリング(細い穴を掘って地下深くの岩石を採取すること)しないと分かりません。このボーリングに大変な費用がかかるのです。ステージごとの費用と探査期間は限られているので無駄なことはできませんが、最初のボーリングはハズレなのが普通です。そして一番悩むのが、ハズレた時に近くを再び掘るのか、あきらめて別の場所を探すのかを決断する時です。神経の細い私にはなかなかキビシイ!
そんな感じでゲームを進め、ついに金鉱脈を掘り当てる時が来ました! ボーリングのビット(ドリル)の先端に黄金のムカデがぴゅるぴゅると吸い込まれて行きます! 轟音とともに黄金のムカデは雲を割って上昇します! 天空を悠然と泳ぎながら、大量の紙幣をふりまく黄金のムカデ!! ……なんなんだ、この表現は?
このようにちょっとバカゲーっぽいところもありますが、プレイし終えた後に「金鉱脈探査とはファンタジーではなく現実にあることだ」と再認識すると、何やら愉快な気分になってくるゲームです。そして私は、あながち冗談でもなく転職を考えてしまうのです。