ジャチント・シェルシ:
・キヤ
・イクゾル
・コー・ロー
・マクノンガン
・魔法の河
・虹
・プウィル
・プラナムII
・4つの歌
・アイツィ
・ピアノのためのポエム第2番 ”声が頭を貫くように”
指揮:ポール・メファノ
アンサンブル2E2M(ドゥーズー・ドゥーゼム)
ADDA: 581189
シェルシと言えば微分音(半音程より細かく音高を区切る)を使った音楽だと思っていました。でもそれが全てではありませんでした。
ライナーノーツによると、なんでも十二音技法での作曲で精神を病んだシェルシは、鍵盤楽器を演奏して録音し、気に入るまで何度も録音し直し、納得できた録音テープを他の作曲家に渡して楽譜にしてもらったとのことです。これだけ読むと、ポップスなんかでもよくありそうな話ですが、実際シェルシの音楽ったらメロディもリズムもない軟体動物のようなものばかりで、こんなテープを渡された人も困ってしまうのではないでしょうか。
でも、そもそも五線譜を使って音楽を表記するなんて西洋音楽の勝手なローカルルールです。時間的にも音響的にも伸び縮みし蠕動するようなシェルシの音楽は、東洋思想に影響を受けたものだそうです。そう思って聴いているうちに、特にソロ曲でですが、何だか時代劇のシーンみたいなのがイメージされてきて、これは日本の音楽ではないかという気もしてきます。
また、楽器編成の大きなプラナムIIでは、夜の東京湾にぶよぶよした謎の巨大生命体が流れてきているようなイメージが浮かんできます。その巨大なものは有機体ではあるのでしょうが、どこがどういう器官なのかさっぱりわかりません。暴れて周りに被害を与えるわけではありませんが、とにかく異様です。人々があっけにとられて見守っています。…とかそんなイメージ。
ピアノソロによるアイツィも凄い曲です。数秒~15秒ごとに音が一つの鳴るだけのものですが、その和音だか何だかわからない音の重なり方が凄いです。ドレミで言えばどれもファ?の音が中心となっているのでしょうが、背筋に響くような「ファー」から、地盤沈下に巻き込まれたような「ファー」まで、なんだかファの壮絶な歴史を見ているようです。よく楽譜にできたもんだ。
現代音楽なんて日本で最も聴かれない音楽だと思いますが、このイタリア人であるシェルシの音楽はもっと日本人に聴かれるべきです!
「プラナムII」の動画。それにしても東洋的にもイスラム的にも聴こえる不思議な音楽です。瞑想がはかどりますね。
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