どつぼちゃん(プレイステーション)
2006年8月30日掲載
----------------------------------------------------------------
「どつぼちゃん」のタイトル画面には、ヨーロッパ貴族のような髪型で微笑むどつぼちゃんと、「世界一ツイてない女 どつぼちゃん」のタイトル文字が並びます。これらに目を奪われて(ひるんで)いるとオープニングムービーが始まりますが、親子3代がどつぼちゃんの不運を切々と歌う恨み節で、プレイの前にやる気が爆縮です。
風水的に最悪の家を建てたばかりに次々と不運に見舞われる綾小路一家。普段からどつぼにハマってる一人娘のどつぼちゃんですが、今日はどつぼちゃんの結婚式です。あらゆる災難に襲われる中、無事に結婚式を挙げるのがゲームの目的です。
内容は、1)どつぼちゃんに災難が降りかかる、2)風水の知識を試すクイズ、3)ミニゲーム(クイズの結果が悪いと難易度アップ)という繰り返しで、合計20のミニゲームが収録されています。結構斬新なアイデアのミニゲームもあり、なかなか面白いものとなっています。
結婚式の朝、どつぼちゃんが目を覚ますと、急な腹痛に襲われます。トイレに行こうとすると、町内中で断水とのこと。そこで断水の起こっていない公園の公衆トイレまで便意に耐えながら誰よりも速く走るという、いきなり最低のシチュエーションのミニゲームをプレイすることになります。
腹痛指数が低いときはボタン連打で速く走り、腹痛指数が高いときはスピードを抑えて便意をやり過ごすという変態ゲームです。失敗するとうずくまり、「も、もれた~」と表示される非道の演出。美少女と言えなくもない主人公(23歳)に対し、容赦の無い扱いです!
この後もゴミの分別をさせられたり、ストーカーに付きまとわれたり、フェリーが座礁し沈没寸前になったり、邪教の儀式のいけにえにされそうになったりします。さらに、風水クイズの結果によっては、大変な難易度になったりもします。
そんな中どつぼちゃんは、襲い来る便意を「第一波」「第二波」と表現したり、おじいさんに「『光年』は時間ではなくて距離の単位」と突っ込んだりと、余裕のあるところを見せ付けます。もはや不運が堂に入っています、どつぼちゃん。
そしてついに披露宴も終盤の最終ステージ! そこではなんと宇宙から真っ赤に燃える巨大な隕石が地球へ迫ってきます。もはや風水による一家の災難という範疇を10光年も飛び越えた天変地異です! 隕石の接近がどつぼちゃんのせいかどうかは判りませんが、このままでは披露宴どころではないことは確実です。
地球が滅亡するだけでなく、披露宴の邪魔をされるのは許せない!
どつぼちゃんは隕石の破壊に向かいます! どうやって? それは、隕石に向かって石つぶてを投げつけるという、何もしないよりは1オングストロームほどマシというシューティングゲームでした!
隕石の破片をかいくぐり、打消し、たまに岩など投げながら、ついに隕石を破壊!! 無事に披露宴も終えることができ、私の肩の荷も降りたというものです! 本当に良かった!!
こうしてどつぼちゃんは只野一朗(ただのいちろう)氏という顔の比率が大きい以外に何の特徴も無いが優しい男性と結婚し、今後は幸せに暮らすでしょう。けれども、どつぼちゃんが幸せになったはずなのに、さびしく感じるのはなぜ? これが娘を嫁に出す父親の気持ち? いや、それだけではないような気がします。
そういえば結婚式の朝、ストーカーは「不運な君は輝いていた」と言っていました。今になってはこのストーカーの気持ちが少し理解できるのです。少なくとも、この日、どつぼちゃんは不運ではあっても不幸ではなかった。そして、そんなどつぼちゃんは確かに美しかった!
どつぼちゃんの魅力は、幸せを求めるひたむきさと、信じられない不運さえ笑い飛ばす明るさです! 不運に正面から立ち向かう姿こそ、見る人の心を打つものなのです!
だから、どつぼちゃんに真に必要なものは「風水」という象徴的なパワーではなく、自らの手で幸福をつかむという気迫です! あらゆる困難を克服する力と技です! そして最も原始的な、飢えと、野性と、闘争本能です!
そんなわけで、オマケモードにて難易度レベルを3にして全てのミニゲームをクリアするという目標が掲げられました。
レベル1と3では桁違いの難易度です。風水パワーは侮れませんでした。あまたのパンツを失い、あまたのおじいさんを行方不明にし、あまたの地球を環境破壊に至らしめながらも、それでもどつぼちゃんは次々とクリアしていきました。風水に頼るのをやめたどつぼちゃんに障害となるものはありません!
……というわけにはいかず、20のミニゲームのうち4つはまだ未クリアです。特に邪教徒を倒す横スクロールアクションは難しい! 飛び蹴りが比較的効きそうかな、と考えています。他には、ルーレットで適切な誓いの言葉を当てるものと、発電機で会場に電力供給するものと、落下物からケーキを守るものが厳しいです。
只野一朗氏には申し訳ないですが、もう少しどつぼちゃんを私が預かることになりそうです。
全体的に熱いミニゲームが多く、やりごたえは十分です。また、人物たちの会話も笑えます。特に「ソルボンヌの○○」には笑ってしまいました! お母さん、ヤバくない?
音楽はほとんどがクラシックのアレンジで、優雅な綾小路一家のビジュアルにマッチしています。ワーグナーの「ワルキューレの騎行」が流れる時には、どつぼちゃんがそれこそ北欧神話のワルキューレ(バルキリー)のように思えて、戦意も増すというものです。へんてこなゲームではありますが、元気が欲しい人にはオススメです!
ところで、結婚した後のどつぼちゃんのフルネームは「只野どつぼ」になるようです。
……ただのどつぼ……。乗り越えるべき試練とかそういう前向きなものではない、ただのどつぼ。理由も因縁も何も無い、純粋などつぼ。これに最もタチの悪いものを感じるのは私だけでしょうか? もはや風水も効きそうにありません。
でも今のどつぼちゃんなら、「何言ってるの! こんなの、ただのどつぼよ!」と言って軽くこなしてくれると信じつつ、続編希望!