みなさま、ごきげんよう。
先週も今週も、ジュリエット通りに行った日は雨が降っていました。
舞台の中でも印象的な雨のシーンがありました。
続きで。
太一はいつも不機嫌そうな口調。
そういう性格なのか、それとも色んな葛藤を抱えているからなのか。
そう思って見ていると、いつもと雰囲気の違う太一に出会えるシーンがありました。
スズさんとのお別れの雨のシーンです。
眉間にシワを寄せていた太一が、いつも声を荒げていた太一が、穏やかな表情で柔らかい口調でスズさんと向き合っていました。
ああ、太一は本当はこういう子なんだな。いつもの太一は武装してたんだな、父親や世間に対して。そんな風に感じました。
舞台上で雨が降ってからは目が離せないのです。
私は双眼鏡で章大さんを追いました。
オールバックで登場した彼の髪は雨に濡れて次第に乱れて来ます。
動きに合わせて動く毛先からは雨の雫がポタリと落ちるのです。
雨が上がったからのバルコニーのシーンも印象深いですね。
バルコニーによじ登る太一。
「あぁ・・。落ちないで、どうかお怪我をなさいませんように。」
と、心の中で思いながらドキドキしていました。
ドキドキは、もしかしてバルコニーで太一とスイレンのラブなシーンが!!と期待していたのです。
直接的な表現はしない岩松演出なので、期待のシーンは無かったです。
でも、ここでのセリフで太一とスイレンが思いあっていたのかな、とそんな風に思える場面でもあります。
「太一、スイレンの手を掴み、
強く引き寄せる。
引き寄せた瞬間に二人は口づける。
これまでの思いの全てを唇にぶつけるように
激しく何度も」
こういうの欲しかったーーーーー!!
見たかったーーーーーーーーーー!!
このバルコニーでのスイレンは幻なのかな。
このシーンの前に太一はバルコニーにスイレンの幻を見るって戯曲に書いてあるから。幻設定は続いていると思います。
これまで舞台上で物理的にも距離を置いていた二人。
縁側と茶の間でも、二人はなかなか距離を詰めなかったけど。ここで初めてぶつかり合うんです。「好きだ」というセリフなんて無いけれど、幻としてでも太一の近くに来たスイレン。幻でもいいから会いたかった太一。
切ない。
ここでは本当に泣いていました、章大さん。
瞳をうるうるさせていました。零れ落ちるしずくは雨なのか涙なのか。
ラストの「蟻」の所。
本当は「蟻」なんだけど、お札を蟻の代わりとしているのか。それとも本当はお札なんだけど太一が「蟻」に見ているのか。でもバルコニーのスイレンが幻だとすると、これは「蟻」
蟻を見つめて無邪気な子供の様な表情をしたそのすぐ後で、虚ろな顔をして遠く見ている太一。
ここで舞台は終わる。
でも、ここは冒頭の田崎とスズのシーンにも繋がって行く。終わらない物語のようでもありました。
太一の登場シーンのセリフにも「蟻」が出てくるし。
蟻が何かの象徴なのかもしれません。