尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

キューブリック・ハウス

2009年01月09日 22時08分00秒 | 詩の習作
  キューブリック・ハウス


恋人たちが去ったあと
冬の公園の日だまりを
見知らぬ鳩が埋めていた
彼等はノアの放った鳩の末裔に
違いない
その証拠に噴水が高くなると水を怖れ
噴水の形で飛び去った

キューブリック・ハウス
その夜 見知らぬ一行目が降りてきた
嘴に音符のように咥えられている
オリーブの葉を探したが
見出し得ないまま
終わりの行が着地した

キューブリック・ハウス
灯りを消すと
思い出の日だまりに
うつむきかげんで首をすくめ
二拍子のリズムをとって
昼間の鳩が歩いている
そうさ 糧を求める
一日の彷徨のはてに
キューブリック・ハウス
彼等と同じ大きさに縮んでしまった男
その男の物語を
僕は今日も生きた

羽ばたきもせず
寝返りをうってデジャビュを追い払い
彼の一行を明日へと改行すると
キューブリック・ハウス
ここは箱船の底
お前こそノアの末裔
とばかりに闇が揺れたのだ

朝が来れば
自分をまぶしい空へ
放とう

おおい 
鳩よ

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