ありがとうＨさん…

二十歳過ぎの頃、演出助手をやっていた。


「演出助手」というと 聞こえはイイが 実際は演出家の言われるがまま動くパシリだった。

だが 演出家と一緒に行動し、食事し、徹夜することで いろいろな事を学んだ。
若い以外は何もなかった僕にとっては貴重な貴重な時間、体験だったと思う。


…そんな お世話になった演出家Ｈさんが先日 この世をさった。


知人によると末期がんだったらしい。煙草をこよなく愛す人だったので もしかしたら肺がんだったのかもなと思う。


演出家には珍しく、誰からも慕われる人望の持ち主だったが…お葬式は行わず身内だけの密葬ですませたとの事。
最後に別れの挨拶をと思っていたので少し残念だが……きっとＨさんは元気な頃の姿を皆の記憶に残してもらうよう 最後の最後まで自分の人生をも「演出」したのだろう。


Ｈさん らしいなと思う…


演出の深い話なんて ちっともしてくれなかったが また 一緒に酒でも飲みながら話したかったな。


「Ｈさん どうもありがとうございました」