
そろそろ雌鶏たちに新しい雄鶏をあてがってやらねばなるまい、と年老いた農
夫は思った。
そこで市場に行き、新しい雄鶏を買って帰った。
さて、年老いた雄鶏の方はといえば、新しい雄鶏が気取った調子で歩くのを見て、
「新しく入ってきたプレイボーイというのはお前のことか?
自分のことを精力モリモリだと思っているだろうが、俺だってまだ肉にされ
ちまうには早すぎる。お前なんかにまだまだ負けない自信があるんだ。
そこでどうだ、このニワトリ小屋を走り回るレースで勝負しないか?
ここを10周して勝った方が、雌鶏たちを全部自分のものにするってのはどうだ」
「いいだろう」、と若い方の雄鶏は答えた。
彼のプライドが高かったし、こんな老いぼれに負けるわけがないと思ったからだ。
そして更にこう付け加えた。
「あんたじゃ相手にならないから、半周のハンディをやろう。
もっともそれでも簡単に俺が勝つだろうけどね」
2羽の雄鶏はニワトリ小屋へ向かった。
レースがスタートすると、雌鶏たちは雄鶏にぎゃーぎゃー声援を送り始めた。
1周まわった段階では、年老いた方の雄鶏がまだリードしていた。2周目では
ちょっと差を詰められたけどまだ頑張っていた。
ここに来て、農夫の爺さんがこの騒ぎに気が付いた。
ショットガンを持ってすぐさま飛び出して来た。
庭に出てみると、2羽の雄鶏がニワトリ小屋の周りを走っているのが見えた。
この時、若い方の雄鶏が年老いた雄鶏の後ろにピタリと迫っていた。
ズドーン!
撃たれたのは若い方の雄鶏だった。
農夫は死骸にゆっくり近づきながらこうつぶやく。
「ちくしょうめ、オカマの雄鶏を買っちまったのは今月これで3度目だ」